妻のハグ
今日は四件の会議や打ち合わせがあって、昼食も取れず、ぐったりして帰宅。
シャワーを浴びて、いつものように飲み始めた。
そして、つい
「ふぅ」
と息を吐いた。
「何か、あたしに言いたいことある?」
テーブルを挟んだ席でテレビを観ていた妻が聞いてきた。
「いや。別に…。今日はひと息入れる暇がなかったから、ため息が出ちゃった」
「ハグしよう」
そう言って妻が立ち上がり、こちら側まで歩み寄ってきて両腕を広げた。
俺も立ち上がり、妻のハグを受け入れた。
妻が俺の背中をポンポンと、手のひらで軽くたたく。
「最近よくそうするけど、それって、小さい子にするみたいじゃん。おかしいよ」
俺は笑って言った。
「若い頃、あなたがあたしに、こうやってくれたの。とても嬉しかったの。あたし、こんなことされたことがなかったから。
だから今度は、あたしがこうしてあげる」
妻の方が泣き出した。
あと数年で還暦を迎えようとしている二人が…
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