マガジンのカバー画像

不純情小説

11
決して純情ではない男女の悲しい物語
運営しているクリエイター

#不倫

【掌編・不純情小説】母の好きな人

【掌編・不純情小説】母の好きな人

概して息子にとって、父親とは大きな存在である。それは、必ずしも何か偉業を成し遂げた父親とはかぎらない。無名で地味な生き方をしている父親でも、息子にしかわからない大きさというものがある。

真希斗にしてもそうだった。しかし、はじめからというわけではない。むしろ、思春期の頃は、父の無欲でおとなしい性格に物足りなさを感じ、少し軽蔑するような気持ちもあった。
真希斗がその存在の大きさを感じるようになったの

もっとみる
【掌編・不純情小説】舐めた野郎だ

【掌編・不純情小説】舐めた野郎だ

女は男の浮気を見抜く鋭い嗅覚を持ち、男は鈍感で簡単に女に騙される。確かにそれはあたっているだろう。
だが、女だってボロを出す時はある。

俺はカズの店で飲んでいた。カズとは古いつき合いだ。彼はベテランのバーテンダーで、うまいカクテルを飲ませてくれるだけでなく、長年の経験からか人の本性を見抜くことにたけている。そんなカズに俺は一目を置いていた。

「こんばんは」

安美が店に入ってきた。そろそろ来る

もっとみる