猫とねずみとスズメバチ。命を考える。
読みに来てくれてありがとうね。
ブィーーンって鳴ってるよ。窓の外。
肥料を撒く機械の音だよ。この辺農家だらけなんだ。ウチもだよ。
今日は天気がいいな。五月晴れ。
窓開けてるよ。気持ち良い。
蜂が入って来ないか心配してるよ。
まあいいか。音ですぐ分かるしね。ブーン。
キンチョールってさ、蚊用とハチ用があるんだよ。知ってた?
スズメバチが網戸の間に引っ掛かっててね、去年。
危ないからキンチョール掛けたよ。
そしたら全然死ななくてさ。
さすが、スズメバチ、生命力が強い。
と思ってさ。結構掛けた。でもなかなか死なない。
10分ぐらいしたら死んだよ。
それからしばらく経ったある日。婿に行った弟がたまたま家に来てて、ハチ用のキンチョールの話をしてさ。
良く見たらウチのやつに「蚊・ハエ用」って書いてるんだよね。
37年生きてきて、初めて読んだよ。
でっかく書いてるのにね。全ての虫に効くと思ってるから目に留まらないんだろうね。
あ、だからあの時スズメバチに効かなかったんだと思ったと同時にね、
めちゃめちゃ苦しませてしまったと思ってね。
まあ俺はあまり気にしないけど。人間様の世の中だよ。
蚊をパンって叩く時、なんで心が痛まないのかね。
ハエ叩きでハエ叩いたりね。
こっちはゴキブリ余り居ない地域なんだけど、
ゴキブリとカブトムシって何が違うのかね。
害獣のハクビシンなんかと猫ちゃんって何が違うんだろうね。
ウチの猫がね、たまにネズミを咥えて来て家の中にポトっと落とすよ。
その日は玄関先に落とした。
父さんそれ見てね、すぐ靴履いて踏み潰したよ。
即死だね。
「可哀想っ!」って咄嗟に思ったんだよね。
で、猫がネズミを家の中に持ってきた時用に、火バサミを玄関に置いてるんだけどね。ゴミ拾いとかするアレね。
その火バサミでネズミの死骸を挟んで、用水路に捨てに行ったよ。
いつもは、生きてるネズミを火バサミで挟んで、生きてるまま用水路に捨ててたよ。
でさ、踏み潰して即死にさせるのと、生きたまま用水路に捨てるのって、後者の方がむごい事してるよね。
それをいつもやってる俺が、父さんがネズミを踏み潰す所を見て「可哀想っ」って思ったんだよね。
その理屈を頭に入れて、即死の方が苦しまないって分かっててもね、
やっぱり踏み潰す気にならない。どうしても可哀想って思ってしまう。
じゃあ生きたまま用水路に捨てる事をどう思ってるかというと、
なんとか上手いこと泳いで、どこかで生きてるんじゃないかって気持ちになる。
自分では、自分は偏りの無い考え、倫理観を持ってるって思ってるけど。
実はめちゃめちゃ偏ってる。
だから、こうです、って話をまとめようと思ったけどね。結局まとまらなかったよ。
そんな大いなる矛盾の中で俺は生きてるよ。きみもそうなんじゃないかな。
夕方になってきた。窓閉めるね、少し肌寒い。
じゃまたあしたね🌱