「世にもおそろしいビデオテープ」
「むかしむかし、あるところにさびれたレンタルビデオ店があったんだ」
「レンタルビデオ・・・?」
「えーと、むかしはビデオテープという磁気媒体に映画が入っていたんだ」
「動画みたいなもんが?」
「そうだ…こういったものだ」
そういって男は掌よりも大きな黒い長方形の磁気テープメディアを若い男に見せた。
「でかっ!!!! え? まじ? え? どうなっているの?」
「ここから見える黒いテープ、ここに約2時間分の映画とかが入っているんだ」
「え・・・たった二時間?」
「そうだ」
「これを再生する専用機器ーービデオデッキというものがあり、そこに入れることで再生して、録画されているものをみることができるんだ」
「え? じゃあ一回一回、入れ替えないといけないの?」
「そうだ」
「めんどくせー」
「だから例えば何話かにまたがるようなドラマやアニメは、見終わるたびに次のテープを入れないといけなかったんだ」
「地獄じゃん・・・」
「そして、これをレンタルする場所があり、昔は見たい映画やアニメがあるとその場所ーーレンタルビデオショップにいって、借りたんだ。買うとすごい高いから」
「え? 行くの? その場所に??」
「そう。物理で」
「そして、借りた分だけ持って帰るんだ。3本借りたら3本借りるんだ」
「めっちゃ荷物じゃん!!!」
「そして、レンタルビデオショップにはもちろん収納スペースには限りがある。だから、ない場合もあるし、そして、借りられていたら借りれない?」
「は?」
「だれかがレンタルしていたら、借りれないんだ」
「ひでぇ!!!」
「そのため、店も人気作は複数本置いておくんだよ」
「まじかよ。。。」
「大体アニメは二話で1本のテープに入っていて全12話の場合、、、6本のビデオを借りておかないとイッキミができない、、、!!」
「ひぃっ!」
「ときには、最後の巻だけ借りられていることも、、、」
「そ、それじゃあ、、、」
「最後の話だけ、、見ることはできない。。。借りれるまで」
「ひ、ひどい、、、」
「そして、見たら巻き戻さないといけない」
「巻き戻し・・・・?」
「そう、ビデオテープにはフィルムで記録されている。この黒い部分がそうだ。そして、これは見終わると最後までフィルムが進んでしまう、、、再び、最初から見るためには・・・・・・最初まで巻き戻さないといけない!!!」
「えええええ!!!!」
「そして、レンタルショップに返す際は、、、、、巻き戻さないといけないんだ!!」
「そ、、、そんな!!! じゃあ、全部見たら・・・」
「全部巻き戻さないといけないんだ!!!!!」
「ひぃいいいいいいいいいいい!」
「そして、延滞料・・・・」
「延滞料???」
「ああ、レンタルだから返さないといけない。。。物理だから当然、もっていかないといけないんだ」
「なんて、ひどい話だ…」
「そして、レンタルは日数が決まっている。旧作は一週間、新作は二泊三日なことが多かったな。そして、それを過ぎると・・・」
「すぎると…?」
「延滞料が発生するんだ。1日あたりいくら、と決まっていて、過ぎていくごとに増えていく」
「え・・・」
「永遠にだ。永遠に、、、一日二日三日、、と増えていく。たった百円だったものが一週間、二週間…一ヶ月、一年・・・・・・ーーーー」
「・・・・・・・・」
「あの、」
「・・・・どうしたんだい?」
「その、手にしているビデオテープ・・・・もしかして」
「・・・・・・・・・・」
「もしかして、」
「そう、このビデオテープはーーーーーその、」
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