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再就職の結末/寝る食う生きるだけの難しさ

「母さん、俺――なんとか頑張っているよ」
「そう。よかったわ」

 何気ない会話だが、母はそれだけで十分に満足しているようだった。
 息子が一人立ちして一年ほど。

 たった一年だが、それでも十分だ。
 親にとって子供はいつまでもたっても子供、とも言われるが、大人になれない子供はかわいそうだ。
 そして現代において大人になる難易度は思った以上に高い。

 息子は社会に出て挫折した。
 新社会人になり、いわゆるブラック会社に就職し、身体を壊した。
 そして実家に戻ってきて反ひきこもりのような状態になってしまった。

 それが数年。
 しかし出口の見えない数年は長い。結果的には数年で済んだとしてもその時はそれが一生続くかもしれないという心境なのだ。

 そこで社会復帰支援のサービスの力を借り、息子を改めて一人立ちさせた。
 実家にいればなんとか生きていける。苦労せずに衣食住を得られる。
 それが悪い。
 
 そう諭され、息子も了承し、その社会復帰支援団体の下でリワークトレーニングを経て、そこの紹介で就職し、収入を得られるようになったようだ。

 その社会復帰支援サービスの団体の人は
「人一倍苦労している人ほど、がんばってくれます」
 と前向きな言葉をかけてくれたのが印象的だった。

「じゃあ、またね」
「うん。お仕事がんばってね」

 一年ぶりに帰ってきて、食事をして息子は帰っていった。

 連絡なく一年が過ぎて心配だったが、安心できた。
 急に家に来た時はびっくりしたが、頑張っているようだ。

 あの時、あの人たちに頼ってよかった。
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「すみません」
「おや。どうしたんだい? 落とし物ですか?」
「いえ。自首します。昨日、会社の上司、殺しちゃったんで」

就職支援という蜜/人は信じたいものに縋る――底辺への就職支援|ななしの23区外@ざらりとした話



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