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化け物の正体 / 引き金は嫌悪を抱く相手ほど軽くなる
俺は兵士。そして相手はバケモノだ。
バケモノってのはどんなものかって? 文字通り化け物さ。
一見して動物とも違うカテゴリの生物だとわかる。
モンスター映画でも見ているような気分になる。
それに一役買うのが俺の視界は肉眼ではなく、モニター越しだということだろう。
いま俺は確かに戦場にいる。
しかし、このカラダは分厚い装甲に包まれている。
いわゆる装甲歩兵だ。
視界は全てデジタル化され、夜間でも問題なくクリアな視界を得ることができる。
どこかゲームじみた中で、俺は重厚を化け物に向ける。
炸裂した銃砲は、化け物をひしゃげさせる。
襲い来る化け物どもはどこから湧いてくるのか、次々と襲いかかってくる。
中には逃げるものもいるが、的確にモニターはそれらも捉え、半自動で銃口が向く。
俺は引き金を引く動作をすると連動した重火器が火を吹いた。
いつごろからか、戦争は対人間ではなく、対化け物になっていた。
それが日常となり、人間は生存権を守るために化け物と戦うようになった。
化け物どもは身もけもよだつような姿をしている。モニター越しでなかったら、何度見ても身震いするだろう。
奴らは声を出す。それは言葉ではなく、叫び声だ。
こちらを威嚇するように吠える。が、自動的に音量が低減されて耳に届く。
その声もおぞましい。
もし、装甲歩兵のシステムが確立していなかったとしたら生身で戦うことになっていたのだろう。
そういう意味では戦うことになったのが、現代でよかったとしみじみ思う。
いままでこんな化け物がどこに潜んでいたのか、外宇宙からの侵略者という説もあるがハッキリとはしない。
しかし、出どころはどうでもいい。こんな見もけもよだつ相手と共存などできるはずがない。
俺はただ、半自動で引き金を引き続けた。
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「どうですか? 戦果は?」
「上々だよ」
「それはよかったですね。ほぅ、これはすごい数字だ」
「だろう? 相手が人ではない場合のほうが、そして、嫌悪感を覚える相手であるほどに攻撃性が増している」
「しかし、だいじょうぶですか? 気づきませんか?」
「だいじょうぶ。全部モニター越しだ。映像も音声も、すべて加工して自分が嫌悪を抱くものに自動的に置き換わる」
男は嘯く。
「本当はヒトだなんて、思わないさ」