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よく出来た息子/デザイナーズベイビーは未来を約束するか
「お宅のお子さんはデザイナーズベイビーですか?」
「ええ、もちろん」
「そうですよね。いまの時代、やはりデザイナーズベイビーじゃないと」
遺伝子操作技術が普及し、人にまで適応されるのに時間はかからなかった。
最初は不治の病の因子を取り除くような機会に限定されていたが、いつしかそれは出生前の子供を希望通りのスペックに仕上げる技術として広まった。
当然当初は倫理上の問題が懸念されたが、若い世代ほど抵抗感がなく、また少子化――特に富裕層の―――に悩んでいた国は出生率向上の一手になるのでは、と了承したところ、普及した。
「やはりノーマルな子と比べると賢いし、健康的で、病気の心配もない。こういってはあれですが実にいい投資といえるんじゃないですか?」
「はは。あまり公には言えないがそれはわかります。私自身も若いころから親に幼児教育に投資されてきましたが、それよりもコスパはいいでしょう」
「これからの時代、おそらくデザイナーズベイビーくらいのスペックがないと競争に勝ってはいけないでしょうからね」
「ええ。優秀な子こそ、家の安定には不可欠でしょう」
「我々の将来は安泰ですな」
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「ねぇ、君のところの親はノーマルなの?」
「うん。ノーマルさ」
「うざくない?」
「うざい。めっちゃ馬鹿だし。僕の言っていることの多分半分もわかってないのにわかっているふりしちゃってさ。こっちが恥ずかしくなるよ」
「やっぱそうだよね。まぁ育ててもらっているうちは付き合ってやらないといけないとは思っているけど」
「だね。大人になったらあんな馬鹿どもとは縁を切るよ」
「僕もそうする予定さ。せいぜい、いまはいい夢を見ているといいさ」
積み木遊びをしながら二人の幼児は流暢に会話していた。
「僕らより無能なのに、なんで敬われると思っているんだろうね」