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いなくなった会社員/そして誰もがいなくなった会社のコワい真相
「なぁ、知っているか? あの話だよ、あの」
「なんだよ。今度の人事の話か?」
「もうそんな季節か。だがそうじゃない、その話じゃない」
「なんだよ」
「いや、これはあるカイシャの話なんだが・・・」
「なんだよ・・・」
そういって同僚は語ってきた。
「とある会社では業績不振でリストラがひそかにおこなわれたんだ・・・・」
「リストラか・・・景気の悪い話だな」
「しかし、明日は我が身さ。それがこの話の怖いところさ」
確かに。まるで荒唐無稽すぎると逆に怖さは感じられない。
「最初は一人だった。だからほとんどの社員は気づかなかった。窓際族が一人、普段関わりのない小さな部署の社員が一人いなくなっても気づかないだろう?」
「まぁ、たしかに」
「だが、そのうちにひとり、また一人・・・と人が減っていった。そして、いつのまにか、会社の人数が半分ほどになってしまったんだ」
「そんな事になったらわかるだろう?」
「そう・・・わかるし、わかった。
ある部署で働いていた男はリストラが行われていることに気づいていた。
空席となったデスクを見つつ、業務をしていて、ふと、恐ろしいことに気づいたんだ・・・“あれ? おかしいな? いや、どういうことだ” と最初は信じられなかったらしい・・・が、」
「なんだよ?」
「いなくなった同僚、いなくなった上司、なくなった部署・・・それなのに誰も何も言いださない」
「誰がいなくなっても・・・なにがなくなっても・・・」
「しかし自分でも言い出すことができない。そのまま一日、また一日とすぎていって、目の前の出来事を信じるしかなくなった」
「・・・・」
「何気ない日常・・・・変わらない仕事・・・・続く日常、つまり――」
滑稽事でも、わが身に触れれば寒気がする。
「――人が減っても、仕事に支障がなかったんだ」