義母へのやさしい復讐/美味しい料理の秘密
「お義母さん、しっかり食べてくださいね」
「ありがとう、〇〇さん」
そういって今日も料理を料理を運ぶ。
寝たきりになった義母。
以前の威張りようはなりをひそめ、嫁に感謝すら抱いているようだ。
「すまないな。母親がこんなことになって」
「いいのよ。それに私、食事を作るのは好きだし」
そういったのは嘘ではない。
元々料理は好きだった。以前はその料理も義母には事あるごとに悪態をつかれ、凝った料理を作れば無駄だと怒鳴られた。
しかし最近はめっきり、静かになり美味しい、ありがとう、とお礼を述べてさえくれている。
そう言われて笑みを返す。
心底笑えるからだ。
別に毒を持ったりはしていない。
なにか汚らしいことをしていることもない。
私はちゃんと懇切丁寧に義母に料理を振る舞っている。
そして、義母はそれを美味しいと食べている。
しかし、義母は日に日に衰えていった。
そして、骨と皮だけになって程なく亡くなった。
最後まで甲斐甲斐しくお礼を述べてくれている義母が、滑稽で満足だった。
あの料理は美味しく、丹精込めて作っていた。
けれども秘密がある。
ほとんどカロリーや栄養がなかったのだ。
いまではゼロカロリーで美味しい食材がたんまりある。
まったくのゼロではなくとも限りなく摂取カロリーはないに等しい。
自分が追い詰められているとも知らずに感謝を向けてくるのは滑稽だった。
「楽しい時間をありがとう。お義母さん」