はだかのおおさま あの日の王様は何を着たかったのかと銃弾の雨の中に思う
昔々、大変新しい服が好きで、自分のお金を全部服につぎ込んでしまう王様がいましたーーそして、
「そっちにタマはあるか?」
「あるもんか。補給が果ててどれくらいだとおもっていやがる」
「だったらどうすりゃいいってんだ。あちら側から撃ち放題されっぱなしってことか? 黙って見守るなんて反乱軍はいつからそんなお優しくなったんだい?」
「はっ! 気概でタマはトバねぇよ。そんなにタマがほしけりゃうけとめりゃいい。お優しい国軍サマが喜んでタマをドテッパラに届けてくれるさ」
そんなやりとりをしている二人。
とある少年がいった
「王様が裸だ」
と。
この世界は御伽噺ではない。王様は指摘されて、素直に受け止めはしなかった。
王は激怒した。
裸の王様は子供を処刑しようとした。
「子供の戯言に反応するなど恥ずかしい」などの羞恥心をもっていたならばそもそも裸で外に出ようとは思わないだろう。
さらに辱めを受けたと取り乱した王さまは、自らをみていた観衆もろとも処刑を執行しようとした。
それにはさすがに国民は反発した。
それは一つのきっかけだった。自らの贅に尽くし、蔑ろにされてきた国民の不満は溜まりに溜まっており、王のわがままに疲れ果てていた。
贅の限りをつくすに飽き足らず、「裸の服」に大量の国費が投入されていた、とあっては黙ってはいられない。
税金を払い、あげくに裸を褒めそやさなければいけないなど、業(ごう)に等しい。
国王に傍若無人ぶりに見切りをつけた人たちは、反旗を翻した。
そこから反乱軍と国の戦いは泥沼に引き摺り込まれた。
「王様は裸だ!! 裸の王様になど仕えられるものか!」
「着ぐるみなど王権とは関係ない! 王に楯突く愚集どもよ!」
「裸だといわなければ、血を流すこともなかったのに・・・」
「真実に口を閉ざす国に未来などない・・・」
「本当に王は裸だったのか? 子供の戯言だったのではないか?」
「裸にさせたのは、王の贅沢をやめさせる直近の方便だったというではないか」
「税金全てを服に費やされるよりも、カラの織り機にいくばくかかけるほうがマシだ」
「王様はいい王様だった。裸だったこと以外は」
もはや真実はわからない。正しさはわからない。決まるのは、どちらかが勝ったあとの未来でだけだ。
真実も虚構も。正しさも間違いも。間近すぎると見えなくなる。
「それにしてもさ。王様ーー」
瓦礫に身を縮めながら男がいう。
「あんたはどんな服が着たかったのさ」
ーーーー戦いに明け暮れる国の隣の国。
「裸だーーーーーー王様が裸だぞーーーーーー!!」
そう子供に指摘される、隣国の王。
「ぼうや、これは」
隣国の王は、雄々しく言う。
「トレンドだ」