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[63]電車旅行 三首

街も樹も空もクッキリ高精細こうせいさい
700系ななひゃくけいの窓は8Kハチケー


羅針盤らしんばん片手に人の波に乗る
改札を出て宝探しへ


ベル鳴ってSuicaスイカで馬車に滑り込む
551ゴーゴーイチと右足のマメと


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早朝の駅に満ちる空気を味わう。
ガラスのように透明で硬質で輝きを含んでいる。
寄り添うとヒヤリとして、
そして徐々に人肌に馴染んでくる。

滑らかに空気を分けて
700系の愛嬌のある白い車体がホームに滑り込む。
まだ乗客もまばらな車内は、
旅への期待に静かにざわめく。
見慣れているはずの街や空が、
車窓から見るとはっとするほど鮮やかなのはなぜだろうか。
この丸みを帯びた小さな窓には、
特別に景色が印象的に美しく見える特殊な素材が
使われているのではないかと、
そんな妄想さえしたくなる。


駅を通り過ぎるにつれて、
徐々に車両の座席も埋まり始めた。
天気のよい週末のこと、
車内の華やぎも増していく。
私も改札を出てからの道のりを確認した。

とはいえ、
まずは改札出口を確認する程度でよい。
スマートフォンが道案内をしてくれる。
さしずめ航海の羅針盤だ。
地図には宝の在処が記してある。
これがあれば、
慣れない航海も難破の心配なく
宝探しを楽しめるというもの。
ありがたいことだ。
同じように、
羅針盤を片手に改札を出ていく旅人たちを見送りながら、
勝手に親近感を抱く。
彼らの航海が幸多からんことを祈る。


そして夢のような冒険は終わりを迎える。
ベルが鳴り、かぼちゃの馬車は走り出す。
Suicaで乗ることができるこの馬車は、
非日常の舞踏会から日常の自宅へと進んでいく。

座席に座って一息つき、
ここ数日浸っていた高揚感からふと我に返る。
この座席に着くまでの数日は、
本当にあったことなのだろうか。
もし仮に夢だったとして、
今も余韻が残る数々の感動が瞬時に消えるだろうか。
本当にあったのかどうか、
そんなことは些末なことだ。
それは結局のところ、私の中にしかない。

とりあえず、
温かいうちに551の豚まんを食べよう。
くつろいで、
右足の小指にできたマメをねぎらおう。
これが夢なら、
こんなに鮮やかで感動的な夢をみられたことに心から感謝しよう。

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なごみ
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