
[52]木犀 三句
時忘れ今に佇む桂花の香
木犀の香り眩しく笑みこぼれ
木犀や探さずにおくその在処
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なんとも言えない芳香に足を止める。
半眼でその香りを全身に吸い込み陶酔する。
そして深いため息をつき我に返る。
一呼吸がこんなにながかっただろうか。
金木犀だ。
私の記憶の中の金木犀が、
それにまつわる思い出がよみがえる。
小学生の頃の秋の遠足。
金木犀の生垣は満開で、
その一帯が光を集めたように輝いていた。
この香りを持ち帰りたくて
手のひらいっぱいに花を集めた。
その光景を見ているように
眩しさに目を細め、
唇から笑みがこぼれる。
無意識にその香りの在処を探して
ぐるりと辺りを見回すが、見当たらない。
首を傾げ木の陰をのぞき込むが、やはりない。
そしてふと、なんだかどうでもよくなった。
これ以上何を探すというのだろう。
この香り、
この笑みはここにある。
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