いつだって、どこだって、誰とだって、美味しい。
おやつをこよなく愛している。なぜなら美味しくて元気になれるから。そのことに改めて気づいた話を、書いて残しておこうと思う。
甘いものを求めて
この秋、珍しく土曜日の代休で月曜休みが取れたのをいいことに、よく食べる人に会いに行きがてら憧れのパティスリーをめぐる旅に出た。社会情勢が少し落ち着いたことと、フルワクチン装備が完了したことが大きかった。
短い二日間だったが、「私はやっぱりおやつが大好きなのだな」と実感する小さな旅となった。
海辺のパティスリーへ
まず向かったのは神奈川県茅ヶ崎市。サザンの故郷で有名なとこだ。よく食べる人曰く、神奈川県の中でも湘南地区は治安が悪いらしい。知らんけど。でも来る途中にあった「安全都市ひらつか」というキャッチコピーの看板がかなり不安を煽ったのは確かである。
まあでも湘南つったら桜木花道の縄張りだかんな。治安も悪くなるし学ランも短くなるわな(湘南地区の方々すみません)。この日はバイクで海に行く途中、とある憧れのパティスリーへ寄ってもらった。
憧れのメゾンボングゥへ
そんな茅ヶ崎になぜ来たかって、理由はただひとつ。メゾンボングゥがあるからだろう。
雑誌やレシピ本でここ数年追っかけてるせいで、完全に『推し』という概念になってしまった。しかも店ではなく、オーナーご夫妻を。もはや推しCPかもしれない。
小さくひっそりと佇む店舗、オープンと書かれた看板を見て興奮する(昔来た時に涙の臨時休業だったことがある)。当たり前のように人数制限があったのでお店の外で待つ。正直ドキドキし過ぎていたので、待ち時間のおかげで心を落ち着かせられて良かった。アイドルの握手会ってこんな気持ちでみんな並んでるのかな???
つ、次だ、、、!!!
扉の前で緊張する。なんかいい匂いする。数分後、前のお客さんが幸せそうな顔で退店したのを見送りいざ入店。
まずお出迎えしてくれたのは、壁一面に並ぶコンフィチュールたち。ひとつひとつに手書きの説明文もついていて、果物の産地や品種まで細かく書かれてるのに愛を感じてジーンとする。何を隠そうと、この春から夏にかけてコンフィチュール活動(略して婚活)にハマってしまったのは、メゾンボングゥのレシピ本の影響なのだ。なのでコンフィチュールは絶対買うと決めていたのだけど。
決まらねえ。
決まるはずがない。いちごはもちろん、さくらんぼにキウイに桃、季節のいちじくにマロン、柑橘系もレモンから清見オレンジ、金柑まで。しかもそれぞれ数種類ずつ。宝石箱どころじゃねえぞ、これは宝の山だ。海賊王になるルフィもびっくりだわ。
よく食べる人に相談しながらと言いつつ結局は自分で決めるのだが、清見オレンジ、君に決めた。
このあとお土産用の焼き菓子も思う存分選び倒した。
いつかホールケーキも食べたい
ショーケースには生菓子、奥にはパンも置いてある。お目当てのスコーンももちろん購入。また機会があればケーキも食べたいなあ。
ショーケースの中からは、これならすぐ食べられるなと思ったものを、ふたつ選んだ。
海辺のパティスリーっていいね
メゾンボングゥからラチエン通りという一本道を抜けると、海岸に着いた。すぐに海に来れるっていいな。山寄りの平野育ちだから海ってなんだか特別感ある。
理想のシューと出会う
すぐ食べたいと思って、ショーケースの中から選んだのがこの子。シュークリームだ。
持って帰ってゆっくり食べようかとも思ったんだけど、どうしてもすぐに食べたくて、ふたりして釣り場のコンクリに座って、海を眺めながらシュークリームにかぶりついた。外で食べるおやつって何でこんな美味いんだろ。
シュー生地はアーモンドが効いてパリパリで焼き具合もちょうど良く、中のクレームパティシエールのなめらかさとドンピシャな甘さ加減。食べてる後半「この理想のシュークリームが今後簡単に買いに行けないという事実が辛すぎて悲しい」という感情に包まれ、惜しみながら完食した。
ちなみによく食べる人は何でもよく食べるので、おそらくコンビニのシュークリームでも同じテンションで食べてくれたと思う。その上で私の食の趣味やこだわりを理解してくれてるのでありがたい。まあでもなんやかんやで連れて行ったお店や食べたもののことはよ〜く覚えてるので、今後もたびたび付き合ってもらおう。
月曜日、東京へ
都会から外れた海辺でシュークリームを頬張っていた18時間後、私はひとり東京にいた。実に2年ぶりの首都だ。
パティスリー パリ・セヴェイユ
10時半の開店に合わせて到着したらすでに10名ほど並んでいた。有名なお店なので覚悟はしていたが、平日オープン時でもこれとは……!!
関東お住まいのnoteご近所さまがたがこぞって美味しそうに食べているものだから、私の中でいつの間にか「東京で行きたいお店」ナンバーワンとなっていた、それがパリ・セヴェイユである。
いつも素敵な朝食を綴られているみずのさんや、
いつも食べ物に対する愛に満ち溢れている肉村さんも、それぞれこちらのケーキで素敵な美味しい時間を過ごされていた。
公道にはみ出さぬよう、ピンク色のタイルの上でお待ちくださいというお店からの貼り紙を見て大人しくタイルの上へ。かばんの色とお揃いでなんか嬉しくなった。
ひとりでケーキをふたつ食べる罪
テーブルに案内され、店内の焼き菓子やジャム瓶を眺められる席に着くとしばらくして、先程迷いに迷って選んだふたつが紅茶と共に運ばれてくる。このために朝ごはんはごはんと豚汁だけにしといたのだ。
ケーキ屋さんのイートインで二つケーキを食べるのは大人の特権だと思ってる。ちなみに店員さんに「コムニューヨーカー……と。」と続けた時に目が合ってめっちゃにっこり笑ってくれたのすごい良かった。好き。ちなみに私の隣のお兄さんもひとりでケーキ二つ食べてた。勝手に同志と思うことにした。
見てくださいこのみっちり詰まったクレームパティシエールを。シューはアーモンドダイスと、細目のグラニュー糖がかかっててその食感がなんとも最高。ナイフでこんなにさっくり綺麗に切れたことにも地味に感動した。
中のクレームパティシエールはバニラの香りを楽しみながら、飲んだ。なんかもはや飲み物だった。ほんのり洋酒の香りが効いてて、キルシュかラム酒かなあ、それもまた良かった。
コムニューヨーカーの方もひとくち。
ボトムはジェノワーズ、その上にレモンピールがのっててクリームチーズとのハーモニーがたまらない。そして上のクランブル、スノーボールみたいにほろほろと口の中で溶けていく繊細さが新鮮だった。これはチーズケーキ作る時に真似してみたいけどできん気がする。
もちろんお土産も購入
お察しいただきたいのですが……
めっちゃ我慢しました。
クッキー好きとしてサブレはもちろん、マドレーヌも絶対食べておきたいし、アーモンドたっぷりのオレンジケークも捨てがたい。しかし昨日メゾンボングゥでも焼き菓子をたんまり買ったので。ケーキ屋さんの焼き菓子はわりと足が短いし、美味しいうちに美味しく食べられるぶんだけに留めた。大人だぞわたし。えらいぞわたし。
と言いつつ、限定品のフォンダンショコラだけはどうしても我慢できず、私と母のぶんだけ買って、大事に抱えて愛知まで持って帰った。父と弟が見てないスキにこっそり食べた。添えてあった美味しい食べ方に則って温めたら最高に美味しかった。
おやつよ、これからもどうぞよろしく
この秋、特別に想いを馳せていたパティスリーに行けて、本当に本当に素敵な二日間だった。
対照的なふたつのパティスリーを、違ったシチュエーションで味わうことができて、やっぱりわたしはおやつが大好きなのだなと思った。ひとりでもふたりでも、外でも素敵なお店の中でも、甘いものは私を幸せにしてくれるのだ。