見出し画像

消えた本

 書庫の中からいつの間にかなくなっている本が数冊。さもありなん。小学校からとしても60年以上の子供の頃から積もり積もったものなのだもの。引越しだって何回かしている。人に貸してあげてそのまま忘れたものもあるようだ。

子供の本でなくなっているのはキングスレー「水の子」。小学校4、5年の頃に親と心斎橋の本屋に行って「好きなのを選びなさい」と言われて買ってもらったのは覚えている。どんなストーリーだったか今は忘れてしまった。ただ水の中を泳いでいる子供の挿絵が印象に残っている。

村山リウ「源氏物語」の中と下がない。上はある。村山リウさんという人は昭和中期に数少ない女性の政治評論家として名を成した方であるが、当時「ときがたり源氏物語」という講演をされていて、その源氏物語のわかりやすい解説が本になったものだった。お若い頃母の女学校の先生だった関係で母がその本を持っていたところ、中学生でも面白く読めて、古典の参考書ともなるので、以後私が持っていたのだが。

ヴァージニア・ウルフ「オーランドー」の原書。ノートだけあるのが不思議だ。一緒においてあったのだが本だけがない。「オーランドー」は映画にもなったりしたが、それよりずっと昔、あまり人々が着目していないころ、私はこの本を「これだ」と密かに愛読していた。それでノートに少しずつ和訳をしていたのだが、途中で頓挫していた。本に逃げられたのかもしれない。

今でこそ美容体操の本はたくさん出ているが、昔はそれほどなかったと思う。私が持っていたのは1970年ごろの「和田式」というものだった。和田さんという人はミス・ユニヴァース日本代表を続出させていたトレーナーというような人だった。だからと言って私がその方面を目指していた訳では当然ないです。当時の一般的な若い娘として、痩せようと目論んでいた。三日坊主ではあったが、はっきりしたタイトルも忘れたその本はずっと持っていたはずだが、いつしか消失。

本以外になくなっているものはあり、外国旅行で余った貨幣を国別にクリアファイルに入れていたものも見当たらない。だいたい、モズの早贄のように、大事に何処かへ置いて忘れていることが多い。しかし、もう一つ言えるのは、年齢的にあれがないこれがないと言い出したら、なんでしたかな、あの老齢の人がかかる病気、それも言葉が出てこない。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?