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『マイダイアリー』やさしく傷つきやすい世代のドラマ

画像:朝日放送テレビ

『マイダイアリー』は、日常の細部を丁寧に掬い上げるドラマとして好感を持って見ている。

小道具の使い方が上手い。「映画館でのポップコーン」「ばんそうこう」「あくび」(小道具ではないが)、そして「左右が違う靴下」。日常にあるモノたちを使いながら、「へんな奴」と言われたり、人と違うことの不安や人を巻き込むことの恐怖、人に嫌な思いをさせるかもしれないという気遣いなどのやさしさが描かれる。私の世代からすると、そんなに他人に気を遣わないとダメなのか?孤立することがそんなに怖いのか?と疑問に思ったりする。だが、それが現代の感覚なのだろう。人と違うことを恐れる、やさしい気遣いの時代である。

居場所をめぐる話という意味では、『私のいちばん好きな花』にも似ている。生きづらさを抱えている者たちが、避難所のように集まってくる居場所。あのドラマではそれがあの松下洸平の家だった。このドラマではかつて天才少年だった佐野と、同性である清原果耶のことを好きな見上愛が特に生きづらさを抱えている。吉川愛もまた、かつて誘拐されそうになったトラウマを第3回で告白した。清原果耶もまた次回で、まだ友に言えていない亡くなった母のことが明らかにされるだろう。

靴下の左右バラバラでも良いと思っていたかつての自分はいない。それでもお互いの片方の靴下を交換することで、お互いの存在を認め合えるという清原果耶の提案は、自分の存在を分かってくれる人がいること、透明人間ではないということを実感できる。

『若草物語』(日本テレビ・日曜夜10時30分から10月期放送)のなかで、堀田真由が一ノ瀬颯と名前入りのペンを取り違えたまま、お互いが相手の名前のペンを使っているエピソードがあった。あれもまた、自分のモノを別の人間が持っているという確証が、自分を支えている。他者がいて自分が存在する。自分だけで完結して存在できるわけではないことを、ドラマは伝えてくれる。

佐野勇斗が「なんか巻き込んでゴメン」と友(望月歩)に言うことが、友を傷つける。靴下は2つで一つ。佐野勇斗が清原果耶を巻き込むことで、「2人は一緒に変なやつ」と見られてしまうと懸念する。でも「変かどうかは自分で決めること、人が決めることではない」と清原果耶は言う。

他者とともにいてこそ存在できるし、他者に存在を否定されて抹殺されることもある。孤独であることの強さと覚悟が必要だし、他者を信用することの覚悟もまた必要なのだ。
なぜ過去の日記を振り返るようになったのか、今後も楽しみなドラマだ。

出演:清原果耶、佐野勇斗、吉川愛、見上愛、望月歩、坪倉由幸、中村ゆり、勝村政信
脚本:兵藤るり
音楽:小山絵里奈
主題歌:Saucy Dog「くせげ」(A-Sketch)
挿入歌:森大翔「群青日記」(A-Sketch)
企画・プロデュース:清水一幸
プロデューサー:川村未来、藤田洋平、栗生一馬、森田大児
演出:穐山茉由、瑠東東一郎、髙橋浩、田口仁
制作プロダクション:東映東京撮影所
制作著作:ABCテレビ


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