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PENTAX17の先祖・・・じゃなかった!?
PENTAX17のレンズはPENTAX ESPIOが基になっていると聞いて喜んでいたら手元のカメラは微妙に違っていた・・・きつねうどん頼んだのにきしめん出てきた。みたいなお話です。
新製品のフィルムカメラ
PENTAXは6月18日にフィルムカメラ「PENTAX 17」の発売を発表しました。その後一時受注中止になるほどの大反響であったようで紆余曲折あったPENTAXのフィルムカメラプロジェクトはまずは上々のスタートを切ったと言ってよいのではないでしょうか。
スペックにかかわる部分では17×25mmのハーフサイズフォーマットだったり、ピント合わせがAFなしのゾーンフォーカスだったりという所が賛否両論だったりするようですが、まずは今敢えてフィルムカメラを使おうという若い人向けの手軽に使えるものを目指したという事のようで、かつての一眼レフの再来のようなものは第二弾以降となりそうです。
このフィルムカメラ新製品と丁度対比できそうなフィルムカメラ。PENTAX ESPIO 115Mが手元にあって丁度良い機会なのでフィルムをセットして使ってみました。
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レンズは38~115mmズームでPENTAX17の単焦点とは異なります。
この個体。デジタル一眼を本格的に使い始めた10年以上前。まだ中古カメラ屋さんが割とあちこちにあった時代にジャンク棚コーナーから何気なく手に取ってきた物で一応動くのですがフィルムの巻き戻し機構がうまく動いてくれず(そのためにジャンク扱いとなったのでしょう)今回使用した際もうまく巻き戻してくれず、常用するには難のある機体ではあります。
レンズについて勝手に勘違いしていたのが、今回のPENTAX ESPIO 115MとPENTAX 17と同じだと思っていたのですが、115Mのレンズは名前の通り38~115mmのズームレンズ。一方PENTAX 17のレンズは25mm F3.5の単焦点レンズでPENTAX ESPIO miniのレンズがベースになっているそうです。
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PENTAX ESPIO 115M
PENTAX ESPIO 115Mは1996年に発売されたコンパクトフィルムカメラです。ちなみにPENTAX ESPIO miniは1994年発売でレンズが単焦点である分、115Mより小型であったようです。
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奇抜さはないものの、なかなかのメカっぽさ。
115M(そして恐らくminiも)フルサイズフォーマットでAFが効き、フィルムはモーターで自動で巻き上げられ、巻き戻しも自動(手元の個体はイマイチうまく巻き戻してくれませんが)スペックだけ見れば最新鋭PENTAX 17を上回る機能を有しています。
そのAFは焦合するまでややもたつく感じで「一瞬で合う」という感覚ではないのですが、十分実用的な範囲内で動作してくれるので気軽にどこでも取り出して記念に一枚とっていくという使い方が出来ます。
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ファインダーの視度調整ダイヤルに注目。
結構真面目に作りこんであります。
驚くのがシャッターを切った時で直後にフィルム巻き上げのモーター音がかなり耳障りな音を発する事もあり、シャッター音がほとんど聞こえません。最初はシャッターが切れてないのかと心配になったほどです。
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液晶ディスプレイにはSSやF値は表示されず、実質シャッターカウンターとしてだけ機能するもの
日付を設定しておけばここに表示され、フィルムにも焼き付けることが出来ます。
年の設定は2桁だけなので2024年なら"24"と表示されます。
ちなみに年の設定は96~30まで、つまり2030年まで設定可能。
まだまだ使えます!
一方でPENTAX 17が優れている部分もあります。ハーフサイズフォーマットの採用によって同じフィルムで倍の枚数が撮れる点。最短撮影距離が0.25mと短い点です。115Mの(そして恐らくminiも)最短は0.65mなのでカフェでのコーヒーなどを撮るといったテーブルフォトの撮影は難しそうですがPENTAX 17だったら問題ないでしょう。こういった点もPENTAX 17は現代の使い方に適応できるようになっているように思います。
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当時というか、今でも一般的なDXフィルム対応でISO感度は自動設定。
というか手動設定は出来ない模様。
また、ゾーンフォーカスでフィルムも手動巻きというのも一見スペックダウンのように見えて一枚一枚丁寧に撮影していくための手続きだと思えば理にかなった機構なのかも知れません。まだ実物を見ていないので何とも言えませんがシャッター音もちゃんと手ごたえが感じられるものになっているのではないでしょうか。
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ここだけはPENTAX17と共通
昔と同じ使い方は出来ない。主に環境的な意味で。
今回フィルムで写真を撮ってみて感じたのはPENTAX ESPIO 115Mが現役だった1990年代と2020年代の今ではフィルムを使う環境が全く異なっていてそれぞれ同じフィルムのコンパクトカメラでありながら、それぞれの時代に最適化されているコンパクトカメラになっているのだなと思ったことです。
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ジャスピンなのはど真ん中のやつだけで、他はなだらかなボケていってくれるのはやはりフルサイズだからでしょうか。
PENTAX ESPIO 115Mの時代。フィルムは24枚撮りなら1本100円ぐらいのものがあったりしました。現像代だけなら現在とそれほど変わらないものの、プリントはゼロ円プリントが普通に存在していた記憶があり、フィルムカメラでの撮影は極めて手軽な手段でした。
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観光地で記念に一枚。という撮り方に最適な機体です。
今回撮影に使った36枚撮りフィルムは1本1200円にもなります。ゼロ円プリントはもはやどこにも存在せず、同じ金額でどの程度のメモリーカードが手に入るかを考えると到底手軽な手段とは言えなくなっています。
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その当時はこの車両も大勢の家族を乗せていたはず。
そして当時は現役だった115Mもこの車両の前に並んだ家族写真を撮るパパさんママさんが大勢いたはず。
こういった環境の変化を考えるとどうしても昔のように気軽にシャッターを切るとはいかず、自分の手で丁寧にピントを合わせ、フィルムを巻き上げて撮影したことを意識させる点でPENTAX 17とPENTAX ESPIOシリーズが似て非なる存在となっていると思います。
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フィルムの巻き戻しが怪しかったりはしますが、先ほどの屋根のある屋内のケーブルカーから、こんな野外のものまで適正露出でちゃんとした写真が撮れるのはお見事です。
また、PENTAX ESPIO 115Mで撮ってみた写真は当時存在したであろうコンパクトデジカメ(1996年当時のコンパクトデジカメは30万画素クラス)を明らかに上回る画質であると感じます。そう考えると当時のコンパクトデジカメは非常に強力なライバルと戦っていたようです。
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自分的には写真撮るならフジフィルムという事で、勝手知ったるフジカラー100で全て撮影してみました。
当時と同じ事は出来なくなっていても生き残っているという事自体に意味がある。と思いたい。