(APS-C)撮り方が難しい50mm
フルサイズでは基本とされている50mmもAPS-Cでは75mmに相当する中望遠クラスのレンズになります。この50mmを撮るのが楽な28mm(フルサイズ42mm相当)と同じ撮り方をしていたらどうなるか。実はとても難しいレンズだと感じてしまいます。
何故そう思うのか、自分なりに考えてみました。
ウデが上がった!?と勘違いするレンズ
フィルムカメラの時代も含めてフルサイズフォーマットでは50mmという画角は基本になっていると前回の投稿でも書きました。
フィルム時代から基本的な画角のレンズとしてどのメーカーも技術を蓄積してきた過去があるため、画質的にはほぼ外れはないと思っていいレンズなので安価でありながら優秀なレンズであることが多く、単焦点レンズで何か一本手に入れてみようかと思った時に最初に購入対象として選ぶ人も多いのではないでしょうか。
これらの50mm単焦点レンズは解放F値が2.0を切る明るいレンズ多いので花などをフレーム一杯に入るようにして絞り解放にして撮ると、いかにも一眼で撮りました的な背景ボケあふれる写真が撮れて何もしてないのに自分の腕が上がったように錯覚したりして、満足度の高い買い物になることが多いです。
そして、この勘違いから最初からセットでついてくるキットレンズである標準ズームレンズを過小評価したり、次に買ってくるレンズも素晴らしいものに違いないと次々と新しいレンズを手に入れるいわゆるレンズ沼にはまったりしていったりする訳です。
考えて撮らないとまともな写真にならない
この50mmという画角のレンズをAPS-Cフォーマットで使うとフルサイズ75mmに相当する画角になり、いわゆる中望遠レンズの範疇になります。前回も少し書きましたが撮るのが楽な28mmと同じ撮り方をすると予想よりかなり大きく撮れてしまい、撮りたいもののかなりの部分がフレーム外にはみ出してしまいます。
ズームレンズなら広角側にズームリングを回して調整して・・・となる訳ですが、50mmの単焦点レンズだけで撮影しようと思ったら被写体の全体がフレームに収まるように後ろに下がるなどして、いわゆる「足で撮る」という行動をしないといけなくなります。
解放で撮るとボケが良い。という事は被写体と背景の関係とハッキリ意識して撮らなければならないという事でもあります。背景をボケさせて被写体だけを主役として浮き立たせるのか、背景も何が写っているのか分かるように絞りを絞って主役の「周辺」を説明する文字通り「主役の背景」として活用するか。撮影者の個性が現れてくるのも50mmのレンズの特徴だと思います。
フルサイズの時と同じく、撮り手の腕が試される
全体としてAPS-Cで50mmのレンズを使うときは事前にどんな撮れ方をするか予想しながら自分の狙った通りの撮れ方をするように絞りを調整し、撮影位置を吟味する必要があり、そういった意味で撮影の難しいレンズだと言えるでしょう。
ものぐさな撮り方が出来なくて、撮るのに苦労する50mmですが、結果的に狙った通りの良い写真が撮れていることが多いのも50mmだと思います。
人が見て印象的な写真にするには主役と脇役を明確に分けてそれを上手に配置するとよいと言われますが、絞りでぼけ加減を調整することで主役と脇役の距離感を、撮影位置を考える過程で主役と脇役の位置関係を考えることになって、自然と主役/脇役の関係を考えることになっています。これが28mmだと、かなり意識しておかないと同じことが出来ないことが多いのです。
そういった特徴に気が付いてからは、単焦点レンズだけで撮影する場合でも通常は28mmで省エネモードで撮影しながらイザというときのために50mmもバッグの底に忍ばせておく。という撮り方をしているようになっています。