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直接光と反射光

今ではすっかりディスプレイで見るものとなっている写真ですが、歴史的には写真とはプリントして紙の上に焼き付けられたものでした。今回は特に色に関する部分でディスプレイの写真とプリントした写真での違いについて考えてみました。



プリントしないと写真じゃない!?

写真を撮ることがフィルムカメラで撮影するものであった時代。写真とはプリントしたもの。つまり印画紙に焼き付けたものでした。以前にも写真が時と光の結晶体なら紙の上に焼き付けたものの方がより写真の本質に近いのかも知れない。見た目は同じでも実は全く異なる存在かも知れないと書いていました。

フィルムの写真が出来上がるプロセスを細かく見ていくと、光が直接的に関わっているのはレンズとシャッターを通してフィルムに焼き付けられるところまでで、その後は感光剤とこれに対しての化学変化を起こさせる工程で最終成果物になるプリントまで光とは直接的に関係はしません。プリントした写真を「見る」段階になってモノを見るための照明の下で見る。つまり反射光に頼って写真を肉眼で見ることが出来るようになっているわけです。

製作工程で見ると余分な光は徹底的に排除して一枚の写真が出来上がるという事を考えると工程の一番最初の光が実に重要になってくると思いますし、だからこそ一番最初の光をフィルムに焼き付ける際に必要となるレンズやカメラの重要度も高まる訳だと思います。

プリントした写真の色は原則として印刷物としての色。色の三原色と言われるMCY(マゼンタ・シアン・イエロー)として表現されます。

プリントした写真をディスプレイで見ても実体とはかけ離れていますが(笑)

直接光で「再構成」される光

写真に限った話ではないですが、デジタルの実態(と呼んでいいのかどうか分かりませんが他の言い方が思いつかないので)はデータ - 情報で、しかもそのデータは元となった実体をキャプチャというか、コピーしたというべきもので、そのデータが写真のデータだと言ってもこれを処理するシステム側が写真データとして扱わないと写真にはなりません。

当然この仕組みによるメリットは多々あって、例えば日付データやらGPSデータやらを埋め込んで写真撮影に関する関連データを全て一つのJPEGファイルに収められるのは便利なことこの上ないのですが、「光の結晶体」という観点で見た場合、デジタルは余計な部分が多すぎると言えるかも知れません。

最終的にデジタル写真を見るには何らかの表示デバイスが必要になる訳ですが、これらの装置は全て自らが発光して写真を表示する仕組みになっています。つまり外部の光に頼らなくても装置自らが発する光で写真を表示する。最初に光をデータに変換した後で光とは関係なく処理されていたものが、最後の過程で再び光が必要になるのです。それもフィルム写真のプリントで必要だった反射光ではなく、デバイスが発生させる直接光が。です。

デジタルの色は光の三原色。RGB(レッド・グリーン・ブルー)として表現されます。

要は同じ写真でもJPEGとプリントは違う。という事を言っています。
ディスプレイで見るならJPEGの方が見栄えがいいのはある意味当然ではあります。

再構成された光は実体とどこまで関係あるのか

この仕組みのせいでデジタルならフィルムより優れているはず・・・と思っていたら実際には問題がある。という事もおきます。表示デバイスによって同じ色が微妙に違ってしまうことがあるのです。例えばRGBの純粋な赤(#FF0000)はデータとしてはどのデバイスでも純粋な赤として表示されているはずなのに、表示するディスプレイよって微妙に明るかったり暗かったりすることがあります。つまり同じ写真を見たとしてもスマホで見た場合と、PCのディスプレイで見た場合と、TVをディスプレイ代わりに使って表示した場合で見た時の印象が違ってしまうかも知れないのです。

対してプリントした写真は実体があるだけに基本的に一枚だけでそれを見た人は全て同じ色を見ることになります。実際にはフィルムの写真も焼き増しが出来て、その焼き増しの際に色が微妙に変わることはあり得ますが、デジタル写真のデバイスごとの発色の違い程問題なることは少ないでしょう。

こういった問題を突き詰めていくと、実はフィルムだって、普通は「ディライト」のフィルムを使うけど、それ以外のフィルムを使って意図的に色を変えることが出来るとか、フィルムの現像や印画紙に焼き付ける工程によって色を変えることが出来る - 場合によっては実際の色とは全く違った色にすることも出来るとか、昔の写真家などは気に入った発色になるまで何度でもプリントをやり直したりした(だから自分専用の暗室を持っていた)とか、必ずしもフィルムが絶対的な正解でデジタルが代替物ゆえのデメリットがある。なんて単純な話ではなくなってしまう所があります。

写真が光の結晶体ならば、最終的にRGBの光で表現するデジタルの方がより実体に近いものを表現できるのか?とも思いますが、表示デバイスによって異なってしまうようだと実体に近いものとは言えないし、MCYで表現された色は実は染料の色で光ではない。と言えるのかも知れないし・・・。

絵を写真に撮ったとしても、必ずしもその絵をコピーしたことにはならないと思っています。
コピーする撮り方もある訳ですが、当然著作権的な問題は発生しますし。

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