第23回: ハラールエキスポジャパン2017
2017年12月26日掲載
11月21日から23日の3日間に渡りHalal Expo Japan 2017が開催されました。4年目の開催となったイベントは外務省、国土交通省観光庁、日本政府観光局(JNTO)、独立行政法人日本貿易振興機構(JETRO)、東京都など全44機関の後援の下、出展企業131社、入場者数述べ7,869人と過去最大の規模になりました。今回はこのイベントを通じて日本のハラール市場の今に注目してみましょう。
動き出した大手企業
まずご紹介するデータは「エキスポ出展企業数と業種別内訳の推移」です。これは過去4回におけるエキスポへの出展企業の数とその業種の内訳を示したものです。2014年から15年にかけては5%の増加にとどまった出展企業数は16年に67%増、17年にはさらに25%増と大きく増加したことが確認できます。それでは詳しく見てみましょう。
最大シェアの食品関連では、今年は大手企業の出展が多く見受けられました。ハラール認証を受けたカレー店を9月に秋葉原にオープンさせたばかりの壱番屋、動物性原材料不使用の「18種類の野菜カレー」を紹介したエスビー食品、畜肉由来原料とアルコール不使用で、ピクトグラム(絵文字)と英語表記による「フレンドリーダイニング」シリーズを展開するニチレイフーズ、作りたての食品を急速冷凍させることで高品質なケータリングを実現させているロイヤルなどです。
また小売店としては、昨年の出展が全国28店舗でのハラールビーフ取扱いのきっかけとなった神戸物産(業務スーパー)や、ハラールフードセレクションの展開を加速させている三越伊勢丹ホールディングスが参加。消費者の生の声を聞く機会として、来場者に熱心にアプローチしていました。こうした国内のメーカー、流通、小売業者に台湾、韓国、フィリピン、マレーシア、インドネシア、サウジアラビアからの出展者も加わって、出展社同士のビジネスマッチングも積極的に展開されていました。
モディストファッションが多様化
昨年開催されたモディストファッションショーは日本を含め東アジアでは初開催とあって、世界に強烈なインパクトを与えました。その様子を伝えるユーチューブのビデオは510万回も再生され、ファッションにおいても日本がイスラム市場への関心を高めていることが賞賛されたのです。その舞台となったTokyo Modest Fashion Show は今年もエキスポ会場で併催されました。マレーシア、インドネシア、日本からのデザイナーと共に今年はスペインの有名ブランドSybillaのコレクションとしてItokin Sybillaが出展し、南欧をイメージさせるカラフルでエレガントなドレスが注目されました。
また今年は新たな試みとして2つのイベントが併催されました。1つはロリータとムスリム(イスラム教徒)ファッションが融合したKawaii Hijabi Collection、もう1つはファッションスクールの学生コンペGeneration M Fashion Awardです。いずれも世界ではまだ例がない、日本発を強く意識したイベントとなりました。
原宿系ロリータブランドによる独創的なドレスが話題となったKawaii Hijabi Collectionは、もともと肌を覆う部分が多い上に帽子やスカーフを多用する点で、意外にムスリムも楽しめるファッションであることに観客の多くが驚いていました。Generation M Fashion Awardは日本とASEAN(東南アジア諸国連合)諸国からの応募者173人の中から選抜され、各国での準決勝を勝ち残った6人が決勝戦に臨みました。マレーシア学生4人とインドネシア学生2人の作品は完成度が高く、審査員の日本人プロデザイナーに「作品はどれも細かい点まで作り込まれている上、プレゼンテーション能力が高い。」と言わせしめたほどでした。
ハラールMICEが定着
昨年に続いて東京・浅草で開催されたエキスポの入場者数は、3日間で述べ7,869名を記録しました。そのうち約20%が海外からの訪日客で、エキスポ会期の前後約1週間に渡って周辺に滞在した人も少なくなかったようです。そのかいあってか、エリア内のムスリム対応店舗は大いに賑わい、昨年と同じく浅草の街はさながらハラールMICE(会議、視察、国際会議、展示会・見本市)の様相を呈していました。
4年目の開催となった今年のエキスポは、日本のハラール市場が新たなフェーズ(段階)に入ったことを強く感じさせるものとなりました。ムスリム客へのホスピタリティー(おもてなし)にハラール認証が必須だという誤解はなくなり、製品成分、製造過程、調理方法といったムスリム客が求める情報を開示提供することで選択肢に加わろうというプレイヤーが大幅に増えたのです。前述のように大手企業、上場企業の参入が相次ぎ、食のみならずファッションやライフスタイルにおいても大きな進展が見られました。
日本は今後数年間で世界的なスポーツイベントが連続して開催される唯一の国です。来る18年は19年9月のラグビー・ワールドカップまで1年、20年7月のオリンピック・パラリンピック東京大会まで2年になります。食はホスピタリティーの基本であることはいうまでもありません。ハラールはじめ、ベジタリアン、コーシャ(ユダヤ教の戒律で食べることが許された食品)、グルテンフリーといった食の多様性対応について、来年も最新の状況について知見を提示してまいります。
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