第37回: 「日本のコンビニで買いたいも物は何ですか?」
2019年2月12日掲載
訪日客にとって、日本のコンビニは今やなくてはならない存在です。ちょっとした買いものはもちろん、道を聞いたり、現金を下ろしたり、トイレを借りるのにも重宝しています。海外には少ない店内のイートインスペースは、ちょっと一息つくのに便利だと好評です。
そんなコンビニでも訪日客は困っています。パン、お惣菜、サンドウィッチーー。日本のコンビニで売っているものはどれもおいしそう。しかし、ここでも「何が入っているのかわからない」のです。そこで今月はコンビニエンスストアについて考察します。
一番はお弁当、でも全部食べたい?
まずご紹介するのは「日本のコンビニで買いたいも物は何ですか?」のアンケート結果です。これは日本在住または訪日経験があるムスリム(イスラム教徒)を対象に実施しました。自由回答にしたところ、なんと38もの品目が挙がりました。日本人である私が同じ質問をされて、果たしてこれほど多くを挙げられるだろうかと考えてしまうほどです。それほど彼らにとっては重要な関心事で、「あれもこれも食べてみたい!」と思っているのが分かります。
首位はお弁当です。2位の「パン」の2倍以上の得票で、全回答数の約13%を占めました。コンビニのお弁当は種類が豊富で安く、おいしそうなのですから当然かもしれません。ご飯とおかずが一緒に入っているお弁当は海外では珍しいらしく、朝ごはん用に前日の夜に買っておくという人もいるほどです。
別のアンケートでは、ムスリムには揚げ物やカレーが、ベジタリアンにはラッピングサラダや野菜を使ったお寿司(かっぱ巻やいなり寿司)が人気という結果が出ました。「中食」用のこうしたお弁当やお惣菜は、調理済みですぐ食べられる食品として普及しています。英語では「Grab and go(素早く入手できる)と呼ばれるスタイルは、忙しい現代人に適しているのです。
情報開示を開始も、まだ不十分
問題は、こうした食品に多くの添加物が使われていることと、その表示が訪日客にとっては不十分であることです。海外の食品表示は日本よりも詳しく、消費者は十分な情報を基に品質を判断しています。彼らにとって、日本の食品表示だけでは自分が望む商品かどうかは判断できません。さらに難解な日本語表記がさらに壁となり、コンビニの人気商品に手を出せないでいたりするのです。
こうした状況の中、食品メーカーも対応を始めています。おにぎりの商品ラベルに具材の写真を使ったり、品名を英語表記にしたり、ピクトグラム(絵文字)を表示したりといったものです。最近では、パッケージの開け方をイラスト入りで説明した英語表記も登場しました。こうした対応はもちろん訪日客に好評ですが、調味料や添加物の詳細までは分かりませんので、まだ第一歩といったところでしょう。
先述のアンケート結果でおにぎりが3位であったのは、おにぎりは具材の写真で「中身がわかるようになった」のも一因だと思われます。しかしながら、成分表示は日本語のままです。翻訳サービスを始めたコンビニもありますが、店員に一つ一つ聞いて確認するのは現実的ではありません。
情報開示を進化させるフードテック
そうした中で注目されているのがフードテックです。食品関連サービスの問題を解決するICT(情報通信技術)のことを指しますが、生産、流通、食材といった幅広い分野に及んでいます。配車アプリから派生した料理宅配サービス「UberEats(ウーバーイーツ)」や本連載の第36回でご紹介した「ビヨンドミート(植物由来の人工肉)」なども、フードテックの一種と見なされます。
訪日客に便利なフードテックをご紹介しましょう。モバイルのカメラを使って商品の成分を調べられるNTTドコモの「商品判定システム」です。このシステムが便利なのは、商品棚の中から自分に適した商品を見つけられることです。例えばムスリムであれば、商品棚を撮影するだけで、どの商品がムスリムフレンドリーなのかを判別できます。
まずムスリム・ベジタリアン向けレストラン検索アプリ「Halal Gourmet Japan」を立ち上げ、商品棚を撮影します。ピンクの枠が表示された商品の写真をタップすると、その商品の成分が英語で表示されます。ムスリムはそれを確認して、口にするのか否かを判断できるのです。現在このサービスはムスリム向けだけに展開されていますが、今後はベジタリアン、ヴィーガン、アレルギー、グルテンフリー対応などにも広がることが期待されています。フードテックの進化は訪日客だけでなく、多様な食文化をもつ日本人客の利便性も高めることにつながるでしょう。
掲載紙面PDF版のダウンロードは以下から。
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