第24回: 2017年ハラールニュースの総括

2018年1月30日掲載

本連載では独自のデータを用いて、今や訪日客の大きな一角を占めるに至ったムスリム(イスラム教徒)客の動向をご紹介しています。ハラールメディアジャパンはこれまで4年間で1,330本、2017年だけでも348本のニュースを報じました。今月はそれらデータを用いて、2017年の総括と2018年の展望について考察したいと思います。

食の次は宿に商機

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まず、ご紹介するデータは「カテゴリー別ニュースの内訳と推移」です。これは過去4年間ハラールメディアジャパンが報じたニュースがどのカテゴリー(全10種)に属するかを示したもので、サービス提供者の属性と市場の推移を俯瞰できます。今年は1位のレストランが全体の3分の1を占め、2位の「トラベル」と3位の「フード」と合わせると全体の3分の2を占めるに至りました。訪日ムスリム客にとって食がキーワードになっていることが改めて確認できます。

その他で、ぐっと存在感を増したのが「ライフスタイル」です。16年に開催された「Tokyo Modest Fashion Show」以降はファッションやビューティー関連のニュースが増え、全体に占める割合が拡大しました。中でも有名デパートのプロデュースによるモディストファッションや藍染のヒジャブ(ヘッドスカーフ)に関するニュースが好評で、新たなお土産として注目されました。

一方で、宿泊施設は17年に全体の3.7%とまだ低水準ではあるものの、16年の1.8%よりもシェアが拡大しました。栃木県の鬼怒川、群馬県の伊香保、滋賀県の雄琴といった各温泉地がムスリムホスピタリティー(ムスリム対応)を始めたのが話題になりました。ほかでも朝食をビュッフェ形式としたり、空き部屋を祈祷用のスペースにしたり、部屋からアルコール類を撤去したりなど、できることからムスリムの受け入れ体制を整える宿泊施設が増えており、今年はさらなる拡大が期待できそうです。
では次に、実際にどういったニュースが読まれたのかを見てみましょう。

情報とサービスの質が集客に影響

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「アクセスランキング・トップ10」には、大阪に関するニュースが3本、上位を占めています。ハラールメディアジャパン監修のムスリム観光マップは現在10エリア(北海道、旭川、帯広、札幌、佐野、千葉市、台東区、新宿、京都、大阪)分が発行され版を重ねていますが、ニュースリリースの際には毎回アクセスが集中します。中でも大阪関連のニュースへのアクセスは多く、「和食レストラン『祭』がOPEN」は16年5月のニュースでしたが、17年の3位にランクインしています。同店に関する口コミを通じて、新規客がニュースをチェックしていると推測されます。

続く4位にランクインした「札幌でおすすめのムスリム・フレンドリーレストラン4選」は、いずれもハラール認証を取得している店舗ではない点にご注目いただきたいと思います。本連載の第1回から述べているように、訪日ムスリム客はハラール認証店舗しか選ばないわけではありません。認証は情報伝達手段の一つと位置づけ、できることから対応し、それを英語で情報伝達する事が重要です。このニュースの4軒はいずれもムスリム客が求める情報を開示することで、来店客による口コミで集客に成功しているのです。

ただ店舗としてはハラール認証を取得していなくてもいいのですが、食材、特に食肉と加工品はハラール認証取得品が求められる傾向があります。こうしたニーズからか、あるいは市場調査の一環からか、「ハラール認証取得企業一覧」が5位にランクインしました。ジェトロ(日本貿易振興機構)は、海外企業から日本のハラール認証品の問い合わせを受けた際にはこのリストを紹介されているそうです。ただ多くの企業のホームページは英語非対応のため商機を逸している場合が多く、改善が求められます。

日本のおもてなしは世界レベルか?

17年は海外においても、日本のムスリムホスピタリティーがこれまで以上に注目された年でした。ムスリムツーリズムの権威であるクレセントレーティング社(シンガポール)が「日本はイスラム協力機構(OIC)非加盟国の中でムスリムフレンドリーな旅行先として第6位」「日本はミレニアル世代(80〜00年ごろ生まれ)のムスリム旅行客にとって人気の旅行先第3位」「日本の47都道府県のムスリムフレンドリーランキングという重要な3つの調査結果を発表したのです。

これらから認識すべきは、ムスリム旅行客にとって日本は今では有効な選択肢となっており、さまざまな視点から評価を受けているという事実です。前述したように食への不安は薄れてきていますが、宿泊施設はまだまだ改善の余地があります。また東京、大阪、北海道といった人気の旅行先ではムスリムホスピタリティーが高まっていますが、大半の地方都市ではまだ対応に着手さえしていません。その多くがホストタウンとして名乗りを上げているにもかかわらず、です。

ラグビーワールドカップ(W杯)日本大会まであと1年8ヵ月、オリンピック・パラリンピック東京大会までは2年7ヵ月です。本大会だけでなく合宿地での準備も考えると、時間に余裕があるわけではありません。食の禁忌は?慣習は?喜ばれるものは?――ムスリムホスピタリティーが求められる中、知らなかったでは済まされず、日本のおもてなしが試されることになります。

掲載紙面PDF版のダウンロードは以下から。
https://fooddiversity.today/wp-content/uploads/2018/01/NNA_SG_180130.pdf



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