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赤切れを治す特効薬

「先生、なんでそんな手、傷だらけなん。」
去年の冬、関わった子どもたちに無邪気にそう聞かれたっけ。
空気が最大限に乾燥する、この冬真っ盛り、わたしの指も盛大に水分が失われる。そして悲しきかな出現する赤い線、もとい赤切れたち。

人差し指の関節、中指、小指…ひいふうみい…
。数えてみたら6つはあった。今年は特にひどい気がする。人差し指の腹に出来たものなんて何かに触れるたびに、ひりひり地味に痛いので小さなストレスだ。

そういえば、わたしが小学生の頃、冬場の母の手は痛々しいほど赤切れができており、紙や包丁で切ったわけでもないのに、なんで傷ができるんだろうと不思議に思っていた。

そんなわけだから、赤切れなんて縁のない子どもたちにとって、疑問に思うのは十分わかる。何なら、大人になったわたしも何故赤切れになるのかが分からない。
いや、ぱさぱさに乾燥するまではわかるのよ、なんで紙で切ったように皮膚が切れるのか。肌、脆弱すぎんか?

そして今年特に赤切れがひどいのは、育休中で、家事の水仕事をする時間が増えたからだと考えられる。

トイレに行く
料理をする
お皿を洗う
おむつを替えた後の手洗い
洗濯の下洗い
数えてみたら恐らく1日のうち、20回以上は手を洗っている。

赤切れを防ぐには、乾燥させないこと。
つまりはハンドクリームをこまめに塗って油分を補うこと。それは十分に分かっている。

いつか買ったロクシタンのハンドクリーム、友人にもらったHACCIのハンドクリーム。夜にそれらを塗ってみてもあまり効果はなかった。手の甲はつやつやになったから、効いていないわけではないけれど、赤切れを治すほどのパワーはないのだろう。

そもそも何回も塗るのは面倒で、夜に1回、塗っても日中にあと1回くらいしか塗っていないのも原因なのかもしれない。冬場、しっとり綺麗な手を維持している方々は、一体1日に何度ハンドクリームを塗っているのか…。

わたしがあまりに痛い痛いとぴいぴい言うもんだから、夫が薬局で、医薬品!といったパッケージのハンドクリームを買ってきてくれる。早速寝る前に塗ってみた。

傷口に走る、ピリピリとした痛み。
良薬口に苦しならぬ良薬手に痛し。
ベッドに入ってもしばらく小さくその存在を主張している。きっと効能がある分、痛いのは致し方ないのだろう、そう納得させながら眠りについた。

翌朝、さあこれで赤切れから解放されたか、と確認すると、気持ちましになっている気がしないでもないが、期待したほどの効果はなく、肩を落とす。
やはり、ハンドクリームは赤切れが出来てからどうにかするものではなく、予防的に塗る必要があるのだろう。

いい匂いがしなくていい。可愛いパッケージじゃなくていい。
赤切れを防ぐのではなく、既にできてしまった赤切れにダイレクトにアプローチし、これを塗ったらたちどころに傷が治るというハンドクリームはないものか…。


ある日の夕方、子の頬に自分で引っ掻いたのか小さな線のような傷ができているのを見つけた。あらら、可哀想に…。
そして翌朝、何気なく頬を見てみると昨日あった引っ掻き傷はきれいさっぱり姿を消しているではないか。恐るべし赤子の新陳代謝、皮膚再生能力。
32年という年月の差、圧倒的治癒力の差!

やっぱり、たちどころに傷が治るハンドクリームより、この皮膚再生能力が欲しい。


と、ここまで、書いたのは1週間前。
なんとそれから、赤切れはすっかり治ってしまった。何かに触れるたびに、お皿を洗うたびに僅かに眉根を寄せていたわたしはもういない。

どんな素晴らしい薬やハンドクリームに出会えたのか?
ー否。

何もしなかった。
疲れが溜まっていたのか身体がだるく、とある休日、夫に子の世話を任せ、授乳以外何もせずほぼ1日温かいお布団にくるまっていた。
するとあら不思議、翌朝にはいく筋の赤い線はすっかり消え去っているではないか…!
水に触れる回数が極端に減ったおかげなのか、ゆっくり休んだおかげなのか。

赤切れの特効薬、それは軟膏でもハンドクリームでもなく、何もしないことらしい。

#赤切れ
#冬



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