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木下龍也「あなたのための短歌集」

 ちょっと仕事が忙しくなって、いろんなことが疎かになってきた。ヘトヘトな日もたまでてきた。倒れるのはなぜか4月と決まっているので警戒しているけれど、今年は1〜3月をなんとかヘトヘトのボロボロにならずに過ごせているので今年は大丈夫だと思う。

 そんな日々の中、木下龍也さんの「みんなのための短歌集」がどうしても頭を離れず、疲れた時に「ああ、あれ読みたいな」とふと思ったりしたので、思い切って買ってみた。

 短歌集を買うのは人生初。別に短歌を作ろうとかは思っていないし、短歌が好きなんです、というわけでもない。
 たまに足を運ぶ好きな本屋でやっていた「木下龍也書店」をのぞいてみて、展示の一部として壁に貼られていたこの短歌集の抜粋のいくつかをみて、どうしようもなく、心惹かれてしまった。
 そんな自分をちょっとナイーブだろうか、と恥ずかしくなってそこでは買わずにおいた。その代わりに、前から装丁がとても素敵で気になっていた「天才による凡人のための短歌教室」を購入して帰った。
 この本はとても実践的で、なんというか、ふんわりした入門の書というより、手取り足取り具体的なもので、物事を1から学ぶとは、みたいなことを再確認させてくれた感じだった。とても具体的。それでいて、読み終わるのがもったいないような不思議な面白さがある。

 そんな紆余曲折しつつ、やっぱり仕事で疲れた時読みたい本っていいな、と、今月本買いすぎ、とも思いつつも購入。運良くサイン本。

 この表紙の短歌もとても素敵だと思いませんか?谷川俊太郎さんのお題もなんか良い。
 「言葉がくすぐったいね」とか、体感できるような身体にも頭にも入ってくる、こう云う表現があるんだな。
 その他の短歌も、ハッとしたり、しみじみと深く沁み込んでくるものがあって面白い。言葉が頭だけでなく身体にも入る感覚。
 この本はお題があって、歌があるので、このお題でこういう風に発想できる、表現できるのか、と、よくわかる気がする。私のような歌集初です、みたいな者でも入りやすい歌集だと思う。

 これだけの表現や発想が、かぶるようなものがないって、言葉のストックがどれだけあるんだろう、という感じ。
 著者の言葉の海の広さと深さを少しのぞき見る感じ。他の歌集も欲しくなりそうな。57577の中にすっと収まる過不足ない言葉と感情。

 最近いろんなものを読んだり触れたりするたびに、自分の足りなさばかりが目について途方に暮れることが多い。随分いろんな無駄をしてきた気がして悔しかったり、悲しかったり。そして何よりよく分からなかったり。しょんぼりすることばかりだ。
 そんな時に読んでも、苦しくない一冊になりそうな気がする。どこを開いても、ほんのり明るく優しく照らしてくれるような、そんな一冊。

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