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マイナスの世界で微笑む

カナダのケベック州にある モントリオール 
大きくはない街だけど カナダの中でトロントの次に大きな都市

私がこの街で初めて経験した季節は冬
冬のモントリオールと言えば豪雪、極寒。
いつものように学校へ行こうと家を出ると、私の乗るバスが既にバス停にとまっている。焦った私は、道路を横切ってバスの後ろを駆け足で抜けようと走り、そして転倒。
凍結していた道路に左ひじから落ちたことで骨にひびが入った。
雪歩きに不慣れな私は凍結している道や大量の雪が残る歩道に苦戦の連続だった。

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それでも不思議とそこそこ好きな季節。みんなそれなりに厳ついウィンターブーツを履き、コートを着る、見ていて楽しいなと思うのは彼らが被る帽子やマフラーが個性的な事。奇抜とまではいかないけれど、オシャレをしたい気持ちが小物に表れている感じがする。
冬にマイナスの世界を歩く為の装備をまとえば結構な重量になる。
正直、長い距離を歩いていればコートの中で多少汗をかくこともあるし、 皮膚がピリッと痛むくらいの空気、笑えば頬が凍りついていることがわかる感覚、どれも不快に感じそうな事を私は喜んで受け入れていた。


モントリオールの春は少し遅い
日本の新緑の季節にやっと春の陽気を感じられる。
そしてすぐに夏が来る。観光客が増え、フェスティバルがあちこちで開かれ
いつもどこでも耳に楽しい音楽が聞こえる。
冬の日照時間が極端に短いので、夏は21時過ぎ、22時頃日没になるくらい日が長い。天候の良さと日が長い事で、みんな屋内での予定がなければ外で日光浴をしている。
ある大きなフェスティバルは一つのメインストリート3キロ程を通行止めにして2週間弱行われていた。通り沿いにあるお店が通りに商品を出して並べていたり、タープテントの中では大きな鉄板でお肉を焼いていた。
そして野外ステージではクラブミュージックがかかり、その端っこでは壁面にウォールアートを丁寧に描く人たちがいる。

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また違う場所ではシルクドソレイユ並みのパフォーマンスを披露していた所もあったようで、それぞれのフェスティバルは場所こそ違うものの日にちがほとんど被っている。ゆえにそれらを網羅するのはなかなか難しい。
しかし、こんなにもたくさんのイベントを企画し同時に開催されて、たくさんの人を集めるなんて、この街の一つの才能かなと思う。
私も友人たちも学校が終わっても、まっすぐ足が家に向かなかった。


年ごとに夏の短さが違うこの街。私がいた年は夏がとても短く、早々に秋がやってきた。
この頃には私は二度の引っ越しを経験して、学校も修了していた。
けれど毎日図書館へ行き、モントリオールの観光地でもあるモンロイヤルと呼ばれる小高い丘に登っていた。

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最寄りの地下鉄までの歩道には黄色や赤茶に染まった落ち葉の絨毯、絨毯と言う表現がこれほどしっくりするのは、踏みしめた足元がふわふわして自然の生み出す鮮やかな色調に見惚れてしまったからだと思う。
私がこの街にいて、春や秋のような中間の季節に儚さを感じるのは、この頃いつものようにモンロヤルの頂上の広場から見上げる空には、すでに冬の空気が含まれていたからだ。

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人の優しさに泣き  いじわるさに腹を立てながらまた泣く
24時間営業の公共交通機関
私の感情もまた24時間移ろいながら、私は目を背けてきた私の声に
気づいていく
目の前にあるドアは叩かなければ開かれない

私はこの街で暮らした時間を誇りに思っている。

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