閃光ばなし感想③
そんなつもりなかったのに、気づいたらそうなっていた。ってことを経験した人は少なからずいるのではないだろうか。
あと、真実をいっているのは私なのに、相手のほうが間違った主張をしているのに、世の中の相対的信頼度が相手のほうが高いせいで信じてもらえなかったことなんて、経験ないだろうか。
さらに、絶対良いって言わないだろうに、言ってくれればよかったのに―――といわれて、心にくすぶる気持ちが生まれたことはないだろうか。
私はどれも大小あれど、経験した。
是政も経験している。
それは裁判のシーン。
いろんなシーンが集約して成り立つシーンなので、私の説明力でどこまでわかりやすく書けるかわからないので、観劇した人は記憶を用意して読んでもらえたらうれしい。
まず、大前提として、町が人工の川が作られたことによって分断され、その川に橋があればいいのにバスの運行会社がぼろもうけするために橋を架けず、橋がないから地域住民は迂回をしなければならず、バスが運行するルートの中に同グループの商業施設があるから、だんだんと人は『どん詰まり』にはいかなくなって是政たちはにっちもさっちもいかない不便な生活をしている。
そこで自転車屋さんの是政が試行錯誤していろいろあった末、バイクを作ってバイクタクシーの事業を始める。
バスより安くしたり、バスより細い道が使えるからと便利に地域住民が使い始めたことで
バスの売り上げが減って、バス側の人間、
つまり、バス会社の会長の野田中、
バス会社の売り上げで政治活動してる感じの菊田、
その手先っぽい商工会議所の底根さんたちは、
やばいやばいと、バイクの二人乗り禁止条例をつくったり、
是政のタクシー会社のバイクは法定速度ちょっとでもオーバーしたら捕まえてやるとか
そもそも論のバイクが整備ができてなくてアブナイとうわさを流したり、
バスの値下げをしてバイクの優位性をなくしたりして、廃業に追い込んだ。
そして、裁判のシーンとは、佐竹タクシーは違法性があるとしてバス側の人間に訴えられたシーン。
裁判の練習をしたり、裁判を実際にしているシーンなどがあった。
もうひとつ説明したいこととしては、
野田中は自分の足で『未来ある人格者の卵』を見つけては自分の手でその芽をつぶし、自分の立場を危ういものとする人を排除していた。
その網にかかったのが是政。
是政の様子を見にどん詰まりに訪れた際、どん詰まりの人は野田中の身ぐるみをはいでカツアゲをし、カバンの中身を奪い取り、血圧?の薬までのんだ。
そしてちょうど、是政はバイクを作る前の段階で、川を渡るなら船だろう!と船にエンジンをつけ、走らせてみようじゃないか!!となっていたタイミング。
薬を飲まれてしまった野田中は具合が悪くなってしまい、ちょうどいい!船で向こうの病院に運んでやろう!と、是政、政子、政子の旦那(焼肉屋の店主)と船に乗って川を渡ろうとした。
しかし、船は壊れて4人は死にかけた。
まあ助かったけど。
余談だけど、この川から打ち上げられた是政の色っぽさが果てしないし、
目覚めてすぐに「政子?!」ってなるのが、両親亡き後、大事に大事に育ててきた妹は何より大切で大事で好きなんだなっていうのが表れているシーンのひとつに感じたし、
野田中がいない事に気づいて、あの魚が群がってるところは野田中が死んで魚に食べられてるのかも、とかいう兄妹が、きれいに食べてもらってください。ってなむなむ祈っているのがとってもかわいかった。野田中は二人より先に助けてもらってもう自分のところに帰ってたからいないだけなんだけれど。
それと、その前の、船に乗るシーンでは船に乗りたい政子に(のりたいの?)ってオフマイクできいて、自分の膝まげて一段階段作って船に乗りやすくして挙げる是政とか、その時に手を取ってエスコートして居る是政とか、船に乗りたいやんちゃな政子がかわいくてニコニコして政子に微笑みかけてる是政とか、ほんとーーーーーーにリアコすぎていい加減にしてほしい。好き。大好き。結婚式来なくても私だったら待つし追いかけるしどう頑張っても結婚したい。是政~~~~♡
余談が過ぎたけど、その後、野田中はもう一度どん詰まりを訪れて、是政に君はいいやつだから手伝いたい!って是政の会社の経理を担当することを申し出る。そして、軌道に乗ったころに、寺の娘がどん詰まりに現れて、
是政は、野田中の「中小企業は上を目指していかないとつぶれてしまう、今うまくいっているし、その借金も一時は赤字だけど、黒字への近道だ!」というような文句に騙されて寺の娘からの借用書に判を押して莫大な借金をしてしまう。
是政達の合言葉『全速力で迂回しろ』に通じるものを感じる。
経理として一緒に働いたことでその合言葉を知った野田中に、その合言葉をいいように利用された感ある。
回想シーンで是政がお父さんに教えてもらったいい言葉なのに。
汚された気分。
裁判のときに関係してくるから簡単にだけど、佐竹タクシーの実情の話もしたい。
佐竹タクシーで使うバイクは是政をぼっちゃんと呼び、
是政の親の代から佐竹輪業で働いている人が整備している。
名前は加古さん。
佐竹タクシーのみんなの運転は結構荒くて、吹っ飛ばされそうな勢いで運転している印象。
政子が運転しているバイクに男性客が乗り、政子に捕まったら
お兄ちゃん!この人セクハラしてくる!
といわれ、
ド級のシスコン是政は黙っているわけなくて、殴る蹴るバイクから落とす。
などといったことをしていた。
さて、前段階の説明で2100字を超えたところで、やっと本題。
裁判のシーンで勝つために是政たちは裁判の練習をする。
こんな主張が来るかもしれない、こんな質問されたらどう答えたらいいか、
そんなことをどん詰まりに生活する人たちで考えていた。野田中たちが裁判に登場する前提で。
裁判の焦点は悪質な企業であることを証明すること。そして賠償金を払わせる。しかしのその賠償金はどん詰まりをそれぞれが離れ、土地を売れば払いきる額。そう。どん詰まりをごみ焼却所にしたい野田中に仕組まれたもの。
その時に、
・追い剥ぎされた(野田中)
・船で川に落とされて死にかけた(野田中)
・結婚式ドタキャンされた(よしの)
・バイクで轢かれかけた(誰だろう。。)
・むやみやたらと借金を繰り返した(野田中)
・ボクシングで殴られた(よしの)
・バイクは自転車整備工がしているから安全性は担保されていない
など、そんな奴らが利益を求めて企業を運営していたら、
人の命を何とも思っていない奴らなんだからあぶない!
そんな感じ。
追いはぎしたのはちょっと弁解できないけど、
電柱も政治がきちんとどん詰まりにも行き届いて自分たちで直さなくていいようにしていたら是政は電柱を直すために結婚式のドタキャンはしなかっただろう。
バイクだって自分たちが乗っているから死にたくないし、安全運転すると舞台のセリフにあった。
むやみやたらに借金したんじゃなくて、経理担当してた野田中がだまして借金させたんじゃん。
ボクシングしたのは事実だけど、吹っ掛けてきたのよしのだし、殴られたの是政だし、是政のパンチは悲しいことに一つも当たってないし。
バイクの整備は、実は警察が使っていたバイクより強かった。(のちに証明される。)(これはこれでまたnoteにしたい。)
別に、是政たちは自分たちの生活をどうにかしたいと画策してバイク運営をしていた。そのほかも誠実に、いろいろと、その時目の前の問題を解決するための最善策を取ってきただけ。
むしろ、正しくない主張を野田中も、菊田も、よしのもしている。
だけど、野田中会長、政治家の菊田。寺の娘よしの。
どん詰まりに生きる、自転車屋の是政。
世の中は、どちらの意見に耳を傾けるだろう。
悔しい思いを私も一緒に是政たちと味わった。
実際の裁判には代理人が来て簡単に向こうのいいように進んでいく。
裁判長も買収されていそうな感じ。
むなくそわりーー。って気分。
それは是政もきっとそう。
普段よりきれいめな格好をした是政が気だるげに裁判所の椅子に座っていた。
是政リアコとしてはたまらん。
でも、一観劇者としてみるなら、一緒に悔しく、歯がゆい思いをした。
もうどうでもいいわ。
って気持ちにもなる。
でも一生懸命どん詰まりは売らない。って戦う是政は本当に根性があって格好良かった。
閃光ばなしは、人間が生きている中できっと多くの人が体験する気持ちや出来事がちりばめられていて、
それを打破しようとする舞台だから、
ただ騒いでいるだけ、ただアクションが多いだけ、ではない、
もっと深いところから浅いところまで、
この生きていくことに希望が見いだせない世の中で頑張っている人たちをケアして元気づけてくれる舞台だった。