見出し画像

子どもの心に届いた意外な言葉

完全不登校になって2ヶ月くらいが経過した中1の男の子がいる。塾にもしばらく来室していない。
最近では、小学生の弟も兄を見習って(?)学校に行かなくなったと、心配した母親から面談の希望があり、
本人と弟とお母さんと会った。

本人は、
学校には行きたくない。
勉強も好きじゃない。
家にいるのが一番安心する。
大人とは会いたくない。

と、言っているそうで、そんなふうに言っている子どもと会い、何を話をした所で、ただのうるさい大人にしかならないのでは?と、保護者の希望とは裏腹に、気が進まない面談だった。

約束の時間ピッタリに現れたその子は、弟の後ろに隠れて、明らかに私とは会いたくなさそうな素振りを示し、お母さんに無理矢理連れて来られた様子がありありと伺えた。

着席して開口一番、本人に
「なにか困ってる?」と尋ねると、
「なにも困っていません。学校に行かないで家にいる方が気が楽なんです」と、即答。

「そっか。君が決めたことで困っていないなら、特に私から言うことは何もないんだけど、ただ、このままずっと家に居て、それが一番いいとすると、君が30歳とか40歳になった時に、子ども部屋おじさんになっちゃうんだけど、それはそれでいい?」と、問い掛けてみた。

「子ども部屋おじさん!? なにそれ? キショい!子ども部屋おじさんだけは絶対にヤダ!」と、半分笑って戯けたような素振りを示しながらも大きく反応した。

側で聞いていた小3の弟は意味が分からなかったかようだが、兄の反応を見て、なにか面白い話に違いないとばかりに、「子ども部屋おじさんってなに?」と母親の首元にまとわりついて「教えて!教えて!」と、尋ねていた。

「だからね。あなた達2人がこのまま30歳とか40歳になっても、今と同じ二段ベッドでお兄ちゃんと2人で寝起きして、ずっとおうちに居るオジサンになるってこと」

「ええー! そんなのキショい! 絶対にイヤだ!」と、弟はオエ、オエ〜と吐く真似をしながら笑ってふざけていた。

「お母さんだって嫌よ。そんな大人になってまで、あなた達2人の面倒を見続けるなんて無理だし」とお母さんも負けじと答えていた。

そんな会話を皮切りに、「なにも困っていない」と言っていた少年が、ぽつりぽつりと、「勉強は嫌いだけれど、ある程度はやっておかなきゃなと思っている」と少しずつ自分語りをし始めてくれた。

何気なく言ったつもりの「子ども部屋おじさん」という言葉が、百の言葉を並べ立てて諭すよりも、子どもにもイメージしやすかったのかもしれない。

その後は、本人の今の気持ちや率直な考えを聞くことができ、前向きな話もすることができた。

後日、弟の方が学校に登校し始めたと報告を受けた。
肝心な兄の方は変わらずの様子だが、塾にはキチンと来室するようになった。来室した際には集中して勉強に取り組めている。
少しずつ前進してくれたら良いと願っている。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?