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昨晩の片倉佳史さんとのユーチューブでのライブ対談では台湾麵と中国麵について話しました。

 昨晩の片倉佳史さんとの対談では台湾麵と中国麵について話しました。台湾の食べ物の中で台湾料理と中華料理はどう区別すればいいの?という質問をよく受けます。今回、この対談で身近な麵料理を例に挙げて、台湾料理の系統と中華料理の系統の区別について話しました。僕の場合、元々のルーツが中国にあるにせよ、戦前から台湾に存在した食材や調理法を受け継いでいたり、それをアレンジしたもの、そして台湾語名称で呼ばれることの多いものを台湾料理とし、戦後の中国からの移住者がもたらしたものや中国移民の子孫が創り上げたものやこれらの料理をアレンジしたものを中華料理と考えています。

 台湾を代表する麵、台湾麵とも呼べるのが油麵(iû-mī イウミィ)です。台湾語では大麵(トアミィ)という呼び名もあります。また、中国語では黃麵(ホアンミェン)という言い方もあります。1890年代にはすでに台湾で食べられていた記録が残っています。 油麵は製作過程で菜種油やピーナツ油を使用することから油麵と呼ばれています。油を加えることで香りがつき、麵の仕上がりがつるつるになり、光沢も増します。それに塩も加えてあることから微妙に塩っぱい味もあります。上質の油麵は潤いがあり、また、油と塩のおかげで、台湾のように湿気が多く蒸し暑い気候でも比較的品質が保たれるそうです。中力粉が使われ、かん水(アルカリ塩水溶液)と塩、水を混ぜ、よくこねて麵生地にした後で圧麵機で薄く伸ばされて作られます。生地の中に少量のかん水(アルカリ塩水溶液)が加えられているので、麵に歯ごたえがあり、色も黄色味を帯びています。

 台湾の中華系の麵は白麵(パイミェン)と呼ばれる戦後に広まった麵です。 この「白麵」は湿度のコントロールがとても重要だそうです。薄力粉に少し水を加え、塩と均等に混ぜ合わせますが、この三種の原料を混ぜる比率は各麵製造者の秘密となっているようです。麵製造のもう一つのポイントは麵生地に麵伸ばし棒や機械で何回も繰り返し圧力をかけて、表面に艶が出てくるまで伸ばす行程です。こうすることで食べた時に心地よい歯ごたえを感じることができます。この白麵のことを指して、外省麵 (gōa-séng-mī ゴアシェンミィ) や陽春麵 (ヤンツゥミェン) と呼ぶ (本来は麵料理の名称)場合もあります。白麵は白く平べったい形の麵ですが、さらに幅広にしたものや細麵にしたものも存在します。

 下の写真は切仔麵(油麵)=摵仔麵:チェッガミィで、日本のかけそばのような極めてシンプルな伝統的な台湾麵料理です。この店の場合は特にシンプルで、スープ麵に薬味とモヤシぐらいしか入っていません。

切仔麵(油麵)

 切仔麵(摵仔麵)=チェッガミィの起源は中国福建省、広東省一帯であり、先に東南アジアへ伝わり、その後に台湾へ入ってきたそうです。七分目ぐらいに茹でた油麵 (iû-mī)をニラやモヤシと一緒に、持ち手が付いていて底が少し深いザルに入れ、沸騰したお湯の中で数回上下に振動させます。この時にチェッチェッという心地よい音が出ます。切仔麵(摵仔麵)のチェッ=摵(chhe'k) はこの動作を表していて、切は当て字です。
 
 戦前の台湾北部・蘆洲に住んでいたある人が湧蓮寺の近くで切仔麵 (摵仔麵)を売る屋台を始め、それを引き継いだ弟子が戦後も屋台で売り続けて、生活の糧としていたそうです。その後、中南部から職を求め北上し、北部の蘆洲に流れ込んで来た人達が相次いで真似をして、あちこちに切仔麵の店が林立することになったようです。

 下の写真は乾麵(油麵)です。台湾語ではタァミィ、中国語ではカンミェンと読みます。油麵を使った汁無し和え麵です。皮付きで脂身の多い豚肉細切りの醤油煮込みが加えられています。緑の葉っぱはエンスゥイ(香菜/コリアンダー)です。

乾麵(油麵)

 下の写真は古早油麵(油麵)です。これも油麵を使った汁無し和え麵です。古早(kóo-cháコォツァー)は昔の、とか昔ながらのといった意味です。

古早油麵(油麵)

 下の写真は乾油麺(油麵)です。やはり油麵を使った汁無し和え麵です。

乾油麵(油麵)

 下の写真は戦後に出現した中国式の麵、白麵(パイミェン)で作られた陽春麵(白麵)です。陽春麵(ヤンツゥンミェン)には「光麵 (クアンミェン)」「淨麵 (チンミェン)」という別名もあります。高湯(骨などを煮だして作ったスープ)、塩、少量の刻みネギやニラ、モヤシだけのシンプルな麵料理です。台湾には第二次大戦後、中国からの移住者によって伝えられたので「外省麵(gōa-séng-mī ゴアシェンミィ )」と呼ぶ人たちも多いです。

陽春麵(白麵)

 下の写真は牛肉湯麵(白麵)です。多くの日本人に牛肉が入った麵料理だと誤解させてしまうものです。僕も台湾生活を始めたばかりの頃、店主に牛肉が入っていない!と文句を言って、恥をかいたことがあります。牛肉湯麵(ニョウロウタンミェン)は牛スネ肉やリブ肉を醤油や豆瓣醬などと一緒に煮込んで作るスープに白麵と青菜と薬味を入れただけのシンプルな麵料理です。牛肉は入っていません。

牛肉湯麵(白麵)

 下の写真は牛雜拌麵(白麵)です。牛の第三の胃袋、センマイとアヒルの血、揚げ豆腐の煮込み、小白菜が入った汁なし和え麵です。牛雜(ニョウツァー)は牛の内臓を指します。

牛雜拌麵(白麵)

 下の写真は榨菜肉絲乾拉麵(白麵/拉麵)です。榨菜 (ツァーツァイ)=ザーサイと豚細切り肉が入った汁無し和え麵です。麵は拉麵(ラァミェン)と呼ばれる極太で縮れた麵が使われています。この店のは豚肉が大き目で、僕のお気に入りのものです。

榨菜肉絲乾拉麵(白麵/拉麵)

 下の写真は榨菜 (ツァーツァイ)=ザーサイと豚細切り肉が入ったスープ麵タイプの榨菜肉絲麵(白麵)です。

榨菜肉絲麵(白麵)

 下の写真は油蔥乾拌麵(白麵/細麵)です。揚げたエシャレットがトッピングされたシンプルな汁無し和え麵で、白麵の細麵タイプのものが使われています。

油蔥乾拌麵(白麵/細麵)

 下の写真は擔擔麵(白麵/細麵)です。台湾のタンタン麵は日本のタンタン麵(坦々麺)と違い、必ず汁無し和え麵です。またピーナツ粉がたっぷりかけられているので、辛さだけでなく、甘味もあります。

擔擔麵(白麵/細麵)

 下の写真は炸醬麵(白麵/刀削麵)です。日本でジャージャー麺と呼ばれているものとルーツは同じです。台湾ではツァーチァンミェンと呼ばれています。ここの店のものは白麵の生地を包丁で粗削りして作る刀削麵という麵が使われています。

炸醬麵(白麵/刀削麵)

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