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昨晩はYouTubeで片倉佳史さんと台湾屋台料理、甜不辣(thiăn-pú-lá テンプゥラァッ)について話しました。

 台湾の屋台料理や家庭料理の食材や料理名に「甜不辣(thiăn-pú-lá テンプゥラァッ)」や「黑輪(oo-lián オォレン)」、「壽司(sú-sih スゥシッ)」と呼ばれる物があります。 これらの台湾語読みの発音を聞けば、すぐに、それが日本語の「天婦羅(てんぷら)」や「おでん」、「寿司」の影響で生まれた外来語だと言う事がわかります。

 ただし、「甜不辣(thiăn-pú-lá テンプゥラァッ)」と「黑輪(oo-lián オォレン)」、この二つの名称は一見まったく違う食材を言い表しているかのように見えますが、だいたい同じ料理を指すものです。また、その名称の使い分けに、あまり明確な区別がないというか、ちょっと複雑な関係とも言えます。

 また実は台北の飲食店や屋台では「黑輪(oo-lián:オォレン)」という名称をそれほど見かけません。どうやら中南部でよく使われる名称のようです。そして「甜不辣(thiăn-pú-lá テンプゥラァッ)」も「黑輪(oo-lián オォレン)」 も日本の「おでん」と呼ばれる料理とよく似た料理の総称として使われている場合も多いし、ある特定の形態の食材だけを指して「甜不辣(thiăn-pú-lá テンプゥラァッ)」や「黑輪(oo-lián オォレン)」という名称で呼んでいる場合もあります。

 「甜不辣(thiăn-pú-lá テンプゥラァッ)」や「黑輪(oo-lián オォレン)」という名称で呼ばれる料理や食材がお互いにほぼ共通している場合もあるし、類似料理や食材だけど、それぞれちょっと違う形状を指している場合もあります。もう少し詳しく説明すると、どちらも日本の薩摩揚げ(西日本では「てんぷら」、鹿児島県と沖縄県では「つけ揚げ」と 呼ばれるもの)に類似した、魚肉のすり身を成型し、油で揚げたもの(魚肉練り製品)そのものを指している場合と、 各種魚肉練り製品や菜頭(chhài-thâu ツァイタウ= 大根)、昆布(khòm-bù コムブゥ)、摃丸(kòng-oân コンオアン=つくね)、 豆干糋(tāu-koann-chìnn タウコアチィ=揚げ豆腐)、豬血粿(ti-hoeh-kóe ティホエクエ=豚の血と餅米を固めたもの)などを、日本の「おでん」のように煮た料理の総称として使っている場合もあります。

 また、例えば南部で「黑輪片(oo-lián-phìnn オォレンピィ)」と呼ばれる、薄い円形で濃い茶色の薩摩揚げを油で揚げたり、焼いたりする屋台料理があるようですが、台北では似たような円形の薩摩揚げの類は「甜不辣(thiân-pú-lah テンプゥラァッ)」と呼ばれ、しかも色は薄い色をしていて肉厚なもので、油で揚げると膨らむようなものです。そして、台北では円形状の薩摩揚げを細長く切ったものや、棒状の薩摩揚げを油で揚げたものも「甜不辣(thiăn-pú-lá テンプゥラァッ)」という名称になっています。

 台北で「黑輪(oo-lián オォレン)」という名称で呼ばれるものもありますが、それは串刺しの細長い円筒状の魚肉練り製品を指していたりします。そして、市場などの惣菜売り場で買ってきて、家庭で食される各種の魚肉練り製品も、 総称として「甜不辣(thiăn-pú-lá テンプゥラァッ)」という名称で呼ばれています。

 台北の夜市仔(iā-chhī-á イァチィアァ=夜間の屋台街)や路邊擔仔(lōo-pinn-tànn-á ロォピィタアァ=屋台)では、 日本の「おでん」のような料理の総称も「甜不辣(thiăn-pú-lá テンプゥラァッ)」ですが、煮汁が入ったタイプのものと煮汁が入っていなくて、甘辛いタレがかけられているタイプがありますし、少数ですが、「黑輪(oo-lián オォレン)」という名称で商売をしている人達もいます。そして、「黑輪(oo-lián オォレン)」という名称の場合、魚肉練 り製品などの食材を串に刺して煮ていて、お客さんに渡す時には串を抜いて、皿に乗せた状態にするところもあります。 中南部の「黑輪(oo-lián オォレン)」の屋台は食材を串刺しにして煮るのが一般的なようです。しかし、台北で「甜不辣(thiăn-pú-lá テンプゥラァッ)」という総称を使っている店は食材を串には刺さないで煮ます。この「おでん」風の料理としての「甜不辣(thiăn-pú-lá テンプゥラァッ)」や「黑輪(oo-lián オォレン)」であっても、油で揚げた「甜不辣(thiăn-pú-lá テンプゥラァッ)」であっても、煮汁が入れらていない場合は海山醬や甜辣醬と呼ばれる赤いドロっとしたソースをかけて食べられています。

 台湾の屋台料理に欠かせない海山醬は、豆瓣醬(豆板醤)や味噌、辣椒(唐辛子)、胡椒、甘草(カンゾウ)、梅などをキメ細かくすりおろしたり、練ったりしたものを、水で溶いたインディカ米の粉と混ぜ合わせて、とろみを付けた ソースです。そして、甜辣醬のほうは、海山醬から変化してできた、台湾版チリソースです。海山醬にさらに辛味を加えたものです。主な原料はキメの細かい辣椒醬(唐辛子ソース)です。

 台北の「おでん」風の料理としての「甜不辣(thiăn-pú-lá テンプゥラァッ)」は、お椀の中の具を食べ終わった後、 お椀に具(魚肉練り製品や大根など)を煮込む時に使った汁(スープ)を無料で提供してくれる店が多く、締めのスープとして飲むお客さんも多いです。お店によっては、太い米粉(bí-hún ビィフン)や豚の内臓も同じスープで煮ているので、いろいろなダシが効いています。

煮汁の入れられていない甜不辣(thiăn-pú-lá テンプゥラァッ)。タレは店オリジナルの甜辣醬(甘辛いソース)と沙茶醬(サテソース)。食べ終わったら、無料で煮汁を入れてもらえる。
煮汁入りの甜不辣(thiăn-pú-lá テンプゥラァッ)。煮汁は無料でおかわりができる。
細切りの「甜不辣(thiăn-pú-lá テンプゥラァッ)」を揚げたもの。
「甜不辣(thiăn-pú-lá テンプゥラァッ)」を売る店
「黑輪(oo-lián オォレン)」の屋台

 台北では「甜不辣(thiăn-pú-lá テンプゥラァッ)」を売る店で、「壽司(sú-sih スゥシッ)」と呼ばれる巻き寿司やいなり寿司も売る店が割と多いです。巻き寿司の中身には肉酥(bah-soo バァソォ=豚肉のでんぶ)が入れられてい ることが多いです。素食(sòo-si't ソォシッ=ベジタリアン、ビーガン用食品)にするために牛蒡(goo-bóo ゴォボォ=ごぼう)が入れられているものもあります。

 「壽司(sú-sih スゥシッ)」は朝食として食べる人もいるので、朝から開いている壽司(sú-sih スゥシッ)や味噌湯(mí-sooh-thng ミィソォトゥン=味噌汁)の専門店や屋台もあります。

台湾式いなり寿司「壽司(sú-sih スゥシッ)」

 このように台湾では日本の植民地時代の日本の食文化、日本語の影響が数多く見られます。例えば「おでん」の類似料理としての「甜不辣(thiăn-pú-lá テンプゥラァッ)」や「黑輪(oo-lián オォレン)」の具の一種に日本と同じよう に竹輪も使われることがありますが、台北よりさらに北部にある港町、基隆では、竹輪の日本語発音「ちくわ」 の影響をうけた吉古拉(chi-kú-lā チィクゥラァ)という台湾語表現が竹輪に対して使われています。


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