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『新書版 性差(ジェンダー)の日本史』

 国立歴史民俗博物館の展示プロジェクトの新書版です。

やっと日本史でも!

 若桑みどり氏の本を片っ端から読んでいます。西洋美術史からみた女性像をたどっていて、実に読み応えがある。戦争のプロパガンダ絵画を扱うときは、日本史にも踏み込んできます。

 とはいえ、隔靴掻痒感はあった。これの日本史版は絶対にいると。細々としたものは追えても、一冊でサクッと追える日本史のジェンダーがないか……という需要にピッタリ合致する一冊として本書があります。

読んでいるだけでありがたい、そんな心地よさ

 本書はあくまで入門だとは思います。それでもここから変わるものはあるし、歓迎すべき変化があると思えました。

 ジェンダーを扱ううえで避けて通れない、遊郭の話などがある。男性目線だと、くどくどとしょうもない言い訳があるんですよね。
 そ、そ、それでも遊女は教育を受けられたし! シンデレラストーリーもあるし!
 そういう少数の幸運な例を持ち出し、相対化しようとするムーブが果てしなく鬱陶しかった。こと明治元勲絡みの本だと、「妾はセーフティネット」「このくらいならセーフ」という鬱陶しい擁護が出てくる。そんなもんいらんから。削れ!
 そういうノイズがないんだな。ありがたい。ああいうしょうもない蛇足がないだけで、こんなにすっきりと歴史の本が読めるのかと安堵しました。
 渋沢栄一絡みはこの手のしょうもねえノイズまみれで、伝記を読むだけでストレスフルよ。あれがお札の顔かぁ。

 もっと早くそうなっているべきだったという恨み言は、この際忘れよう。世の中、よくなっていることはある。そう思える一冊でした。

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