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『らんまん』第125回 大事業はまだだ終わらない
関東大震災から一ヶ月後。渋谷は一変していました。
渋谷は発展してゆく
市内から市外へ人が押し寄せてきた渋谷。相島が寿恵子に対し、われわれの勝利だと語りかけてきます。こんなことになる前から目をつけてきた渋谷。御一新前の江戸が消えてなくなり、世界的な都市に変わると相島はうれしそうに語ります。
このドラマで描いてきた江戸の風情を思い出すと、なんで邪悪なことを言っているのかと思ってしまいます。しかし、これが当時の考え方かもしれない。ともかく徳川時代のものを破壊し尽くしてこそ文明的だと言わんばかりの国づくりを進めてきたわけですから。こういう被災者への冷たい態度を当時の人は持っていたのか、それこそ牧野富太郎は揺れを味わっていたと書き残すし。渋沢栄一は「天譴論」(民衆の言動ゆえにバチが当たったという理論。本来の点検論は“為政者の”言動ゆえに天罰がくだるというものだが、それを渋沢はねじまげた)だの。どうかと思うようなことが残っていますよね。大坂はここぞとばかりに東京でやっていけない人を受け入れているというといいけど、そのぶんこっちで繁栄したろという意識も感じなくはないし。何よりもあの震災に乗じて低賃金で働く朝鮮人やら中国人をやっつけちまえと考えた日本人は大勢いた。移民へのヘイトをこれみよがしにぶつけたと。
相島はそういう当時の日本人感を凝縮しているのかも。それがあまりに損な役回りだからか、小林一三とちがって名前が変わっているのでしょう。
のみならず、震災と戦争を重ねているともいえる。軍部と結託する。植民地から資源や労働力を選ぶ。そういうことで儲けた財界人は多い。第一次世界大戦からアジア・太平洋戦争までずっとそうだ。そういう浅ましい商人代表にしているわけですね。
寿恵子はそういう人物との対比として存在する、庶民代表なのでしょう。いや、庶民も好景気に踊っていたからそれもちがうかな。
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