【書評】キャロライン・クリアド=ペレス『存在しない女たち』
最近、データ重視しろという本を読んでいる気がします。偶然よりも必然なのでしょう。『FACTFULNESS(ファクトフルネス)10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣』、『生と死を分ける数字』、それに『21世紀の啓蒙』などなど……。
そしてこれだ。キャロライン・クリアド=ペレス『存在しない女たち』。
理詰めで語るには、まずデータを集めなければいけない。けれどもデータ集めの段階で、女性を排除したらまっとうな理論なんか出るわけないだろ。そう丁寧に検証してゆきます。
クォータ制が必要な理由はまさしくこれです。
この本はとても素晴らしい。筆者がイギリスに暮らしているためか、英語圏の事例が多く取り上げられている点は指摘しておきます。
本書の誤読は想像つくので、先回りして言っておくことがあるのです。冷笑には先回りして対処しましょうか。
「海外ガーっていうけどこんなにひどいじゃんw」系
そういう英語圏と比較して、データ解析した上で、日本はさらに低いことを考えましょうか。
性犯罪データを持ってきて、「欧米ガーw」という人もいますけどね。性犯罪は申告制ゆえに、通報しやすさは当然関係あるのです。「性暴行を訴えるなら目撃者を規定人数集めてこい」という規定がある国では、当然のことながら性犯罪は“少ない”数になります。
「この学問研究にジェンダーは関係ないじゃん」
そこのあなた。『麒麟がくる』で駒をせっせと叩いていませんでしたか?
考古学の発展で、バイキングにせよ、ハンターにせよ、女性の比率がかつて思われていたよりも高いことは証明されつつあります。けれども今まで「そんなわけないじゃんw 骨盤が女っぽいけど混ざっちゃたんだよw(墓のど真ん中に、丁寧に埋葬されているのに?)」みたいなことがまかり通っていたわけです。
お気持ちで歴史踏んづけてるのはむしろそっちじゃないか……と散々突っ込みたいのですが、歴史研究者をプロフィールに書きながら、「歴史にジェンダーとかいらねえしw」とツイートし、せっせと「フェミガー」とRTしていたりする人もいるわけですよね。
それっていいかげん、もう古くないですか?
思い込みはいかに考えを曲げるか直視しよう
冒頭に挙げたような本は、思い込み、データ不足がどれだけ有害で、偏見を撒き散らし、危険であるか証明します。
女性差別なんて古今東西、程度の差はあれどの文化文明人種にもある。だから人類普遍の真理……とか寝言はやめましょうね。
それをいうのであれば、斬首系は古今東西多くの文化文明でありますけどね。
「つまり、人間は斬首しなければいけない生き物なんだ!」
みたいな理屈は成立しないんですよ。正すべきことをそうすることが人間の歴史であり進化です。
それにいいかげん、これだけ女性差別が燃え上がって有害である以上(本書にみっちり書かれています!)、そこを無視してSNSでエコーチェンバーにこもって「フェミガー」ということって、アップデートできていない生き方なのでしょうか。
そこが疑問で仕方ない。
「ともあれカルタゴ滅ぶべし」のような調子で「ともあれフェミガー」と連呼しておりますが。一体あれは何なのでしょうか?
こういう女性差別をデータでぶん殴る本が出たのは紛れもなく朗報です。
「フェミはお気持ちガー」
とかなんとかいうけど、それも結局、お気持ちですからね。お気持ちでなく、データでガンガン殴りましょうか。そのためにこの一冊は役立ちます。
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