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本の話をしよう|2023.1②


2023年の12分の1が、今日で終わる。あい変わらず、1月は行ってしまうのが速い。そんな1月後半に読んだ本の話をしよう。



各章のタイトルが二十四節気なのが素敵で、ずっと気になっていた瀧羽麻子さんの『博士の長靴』を読んだ。苦手な生物が(たとえそれが可愛らしいイラストであっても)表紙にいることから買えずにいた本。図書館って素晴らしい。

その苦手な生物に触れない持ち方をしている図

気象学に生涯を捧げた博士とその家族、四世代にわたる物語。些細な日常を切り取り、淡々と進んでいくので「えっ、ここで終わってしまうの?」という章もあるのだけど、それもまた心地よい感じだった。二十四節気を祝う習慣もとても素敵。
各章で視点が変わるので、同じ人なのに好青年に見えたり碌でも無い奴に見えたりするのが面白くも不思議な感じがした。見え方の違い、というもの。



図書館をぐるぐるしていた時に見つけた『透明な夜の香り』は、完全にタイトルだけに惹かれて借りた。

表紙はちょっと怖いよね(正直)

タイトルからもわかるように、香りをテーマにした物語。ドラマもミステリーもファンタジーも感じられてあっというまに読み切ってしまった。
主人公が調香師の声を「紺色」と言い表していたからか、物語全体が深いブルーの中にあって。不穏な展開や抱える過去の話がだいぶ重かったけれど、それでも、海底にいるような静かで深い空気感が読んでいて心地よかった。
千早茜さん、初めて読んだ作家さんだったけれど、他の本も読んでみたい。

「香りは脳の海馬に直接届いて、永遠に記憶されるから」という台詞が印象的で、そういえば漫画の『ハチミツとクローバー』にもそういうシーンがあったなぁと思い出した。文化祭の準備中、好きな人を一目見ようと通りそうな道を何度も通ったのを金木犀の香りで思い出す、というワンシーン。すごく好きだったな〜と思うと同時に、金木犀は記憶をたぐり寄せるような香りをしているよなぁ、とも思った。



辻村深月さんの本を読もう!と思って棚を見たらお目当ては貸出中で、でも同じく気になっていた『琥珀の夏』があったので借りてきた。

500ページ超だけどあっという間だった……

静岡にあったカルト的な団体<ミライの学校>の敷地から白骨が発見され、かつてその夏合宿に参加した経験のある主人公は、それは自分が知る少女のものではないかと胸騒ぎを覚える———いやはや、辻村作品の事件は、実際にあったのでは?と思ってしまうくらいリアリティがありますな。
白骨は誰なのか、というミステリー要素もあるけれど、正解も不正解もない問いにひたすら考え続けるのが真のテーマな気がしてならなかった。
親の意思や思考は、子どもにとってすべてと言っても過言ではない。では、何が子どもにとって一番大切なのか。子どものためを思ってしていること、実は自分のエゴにすぎないのかもしれない。初めての育児で日々悩み続けているわたしには刺さり過ぎて痛かった……保育園問題も出てきて、「どんなに愛しい存在であっても、24時間一緒に居続けることを考えると愕然としてしまう」とか、つらい、けどわかる、みたいな。言葉にできないな。ただひとつ、この本を読んで良かった、とは確かに言える。
あい変わらず、辻村深月さんの作品を読むたび、この方の頭の中を覗いてみたい……と思ってしまう。



鮮やかな水色の表紙に惹かれたのは『その扉をたたく音 』。大好きな瀬尾まいこさんの本で、令和4年度の高校生の課題指定図書だったとか。

この表装のまま文庫化してほしい

ミュージシャンの夢を捨てられず、親の脛を齧って怠惰な日常を送っていた主人公が、ひょんなことから老人ホームの人々と交流することになる、というのがあらすじ。
主人公の、自分のための音楽から人のために鳴らす音楽へ変わっていくのと同時に、人に喜んでもらいたい、人と関わりたい、と気持ちを膨らませていったのがとてもよかった。誰かのために、と言葉では簡単に言えるけれど、なんだかんだで人は自分を中心に置いて物事を考えがち。「俺だけが真ん中にいた世界は、もう終わったんだ。」の言葉がグッと刺さった。
老人ホームが舞台だから、と多少は覚悟していたけれど、終盤は思わず泣いてしまったよね……。水木親子(仮)、いいコンビだったなぁ。

介護士の渡部君の話から、未読の『あと少し、もう少し』にも繋がっているストーリー。そっちを先に読むべきだったな。笑 でもそうなると『君が夏を走らせる』も読みたい、というか読まざるを得ないわけで……いっそ買ってしまおうか。瀬尾作品はぜんぶ手元に置いておきたいし!!!(大声)



少しずつペースが戻ってきた1月後半でした。しかしお分かりいただけただろうか……この4冊すべて、図書館本。つまり、元々の積読は解消されていないわけで、あろうことかさらに2冊(瀬尾作品)積もうとしているのである。

2月は積極的に積読山を登っていこうと思いマス……。

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