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【漫画】『名人』徳弘正也先生について

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実は企画としては、『シェイプアップ乱』と『もっこり半兵衛』の実写案を先に描きたかったのですが、徳弘先生の紹介を書いていたら情報量が多くなってしまったので内容を分けました。

今後分散して徳弘正也作品を紹介していきます。


作者の略歴

「漫画の紹介をするからには、徳弘正也作品を全て紹介したい」と以前から思っていたのですが、これだけキャリアが長く、多くの人から高い評価を受けて居る作家さんを取り上げるのは。

とはいえ、今までに出会った作品や漫画家の中で『私を創った漫画家』は徳弘先生の作品の占有率が一番高い為、この機会に紹介して、更に知られるきっかけになれば幸甚です。

まずは、作者の紹介を簡単に。

徳弘正也先生のプロフィールはWIKIに載っているためそちらを確認いただきたいですが、小さいころから手塚治虫に憧れ漫画を描いていて、一浪を経て大学に入学。小学館少年サンデーの漫画賞へ寄稿し、毎回良い所まで選考されていたところに、その内の評価されなかった一作品を集英社のフレッシュジャンプ賞へ送った所入賞。その後1982年の赤塚賞佳作を経て、1983年、週刊少年ジャンプにて『シェイプアップ乱』でデビュー。

赤塚賞の受賞からデビューまで、先輩作家のアシスタントを経験した話が出てこないため、まさにとんとん拍子でデビューを飾ります。

その後『シェイプアップ乱』の連載は1986年まで続き、初連載作品がデビュー作で代表作の一つとなり、人気作家の道を駆け上がっていきました。

しかもその成功は運だけでは無く、『シェイプアップ乱』の1巻から全巻読んでいけば分かると思いますが、元々持っていた作話力をベースに、連載で掴んだ独特のギャグのテンポと、1話完結を利用した幅広い作話と展開を、連載を繰り返して試行錯誤しながら急激に成長させていき、ライバルの中で独特のポジションを築いていった事が見えてきます。そしてこの初連載により身に着けた技や構成や展開が、その後の徳弘先生の作風の土台となっていきました。

週刊初年ジャンプの競争環境として有名な「アンケート至上主義」があるのはご存じかと思いますが、おさらいすると、懸賞が当たるアンケートはがきに『今週の上位3作品』と『そのほか、読んだ作品(当時は今の様に全作品をチェック出来ず、追加で2~5作品くらいだったと思います)』を記入して返送してもらい、そのはがきを集計。
このランキングの最下位が数週間続けば見限られ、最短で8回から10回で連載終了となります。

それは人気作家でも例外ではなく、例えば『風魔の小次郎』で人気上位常連のまま連載を終えた車田正美先生の次回作『男坂』は、連載開始当初は人気上位常連だったものの、途中人気が急落し間もなく連載終了。他にも後の人気作家やその前に人気作を連載していた作者も例外なく、人気が無ければ即終了でした。

既存の人気作でも、以前の人気作家が同じような読者層の新連載を掲載すれば、途端に人気が下がり、上位3作品には選ばれなくなったり、盛り上げ回を仕込んでいるような作品も評価は低くなるので、後年徳弘先生が少年ジャンプに掲載した『Wrestling with もも子』やひらまつつとむ先生の『飛ぶ教室』のような、このままじっくり続けば名作だった筈なのに、という作品も読者層のズレや同系統の読者層をターゲットにした作品に押し出されて連載終了していきました。

特に『シェイプアップ乱』連載当時の週刊少年ジャンプは競争環境が異常な程過酷で、人気常連上位で社会現象を巻き起こした『北斗の拳』や『キン肉マン』や『キャプテン翼』や『Dr.スランプ』、独特な作風でアニメ化までされ現代でも語り継がれる『よろしくメカドック』『ウイングマン』『コブラ』『キャッツ♥アイ』『ストップ!!ひばりくん!』『ハイスクール奇面組』『流れ星銀』、そして連載中人気絶頂で後年実写化もアニメ化もされた『風魔の小次郎』など、名だたる名作が同時連載している、まさしく『針が振り切れる程の競争環境』の中で『シェイプアップ乱』はヒットし、2年以上連載が続きました。しかも自身のアニメ化も無い状況で、漫画の力だけで、です。

ではどうやって独自のポジションを築いたのか?
この辺りの解説は後の『シェイプアップ乱』で深く掘り下げたいので今回は軽く触れるのみに留めますが、当時『筋肉!努力!バトル!硬派!友情!主人公は男!』という作風が人気で、まだまだ70年代のスポ根の空気感が残る時代に、

①当時としては革新的な女性主人公像を提示(岡田斗司夫さんやクリムゾン先生も指摘する特異性)
②日常話1話完結路線(定期的に2話構成の回もある)
③「1ページ半から2ページに1回ギャグを刻む」独特の様式
④ドリフを意識した小学生受けする下ネタから、ジャンプらしい友情話、そして人情噺まで、幅広いバリエーションの作話を発表
⑤『生々しさ』を意識的に盛り込んだオリジナリティの強い絵柄

これらを基本1話完結の中で毎週試していき、人気回を分析しながら巧くバリエーションを持たせて回す事で、他の連載作品とは独特のポジションを築いていったように思います。

しかもこれは一定の勝ちパターンとして徳弘作品に定着し、後の冷酷なシリアス路線に突入しても、読者が苦しくならないように合間にギャグを入れたり、ギャグの間の人情噺で感情の揺らぎをより大きくする効果を発揮する等、効果的に作用していき、徳弘先生の強みとなりました。

シェイプアップ乱は連載期間が2年半くらいですが、週刊ペースでネタを出し切って戦いながら毎回お笑いのネタを仕込んでいくのですから、毎回苦しんでいたのではないでしょうか?それ故、2ページに1回のボケや、『もっこり』は有効的だったのだろうと思います。

その後は、『ジャングルの王者ターちゃん♡』『狂四郎2030』などの数々の連載作品を発表しながら、人気作家として根強いファンを持ち現在電子書籍で『もっこり半兵衛』を連載。人情噺に円熟味が出て、当に『名人』というべき域に到達しているなと感じます。

連載作品一覧

作品の歩みを一覧化しました(Wikiのコピペですが)。

ターちゃん』はアニメ化しましたし、『狂四郎2030』はカレーのコマがネットミームになる程知られています

現在連載中の『もっこり半兵衛』は電子のみの販売ですが、口コミで広がった名作として芸能界や著名人のファンも多い作品です。

その他にも、
初の成人雑誌連載作でホモネタとシリアスの揺らぎの幅が心に深く突き刺さる名作『ふんどし刑事ケンちゃんとチャコちゃん』や、

ブラック企業と金持ち老害と武士の理不尽を時代劇の中で描いた『黄門さま〜助さんの憂鬱〜』

独裁者や不老不死に深く突っ込んだ『バンパイア 』シリーズ

心の美しい女性が兄の犯罪歴のせいで社会の理不尽に晒されながらも、自分の居場所を見つける『亭主元気で犬がいい』など、全てが名作揃いです。

短命だった、『タ―ヘルアナ富子』『カッパーマン』『Wrestling with もも子』も読者層があっていたら名作になっていたかもしれない作品です。
特に『カッパーマン』のラストはハリウッド映画の影響が強く見られ感動的でした。
『もも子』についても、地味な少年たちが地味な基礎練習を繰り返しながらふと実力が体現される瞬間と、マイナースポーツの悲哀を描くのは苦労を重ねた大人好みの作風だったため、スーパージャンプだったら人気だったかもしれません。

徳弘風トラジコメディの『ふぐマン』も単行本の売れ行きが不調の打切りという事でしたが、誌面の読者アンケートでは上位常連で、軽妙な名作故に泣いた作品と言えます。

このほかにも短編集があるのですが、現在電子化も増版もされておらず、手に入れるのが難しい状況となっています。

なお、徳弘作品のポジショニングのイメージを作ってみました。
作風として、他の作家より横の幅、つまり感情に作用する幅が広いため、時代の流行り廃りにも強く、作品が古くならないのが特徴かと思います。

通常の作家はタテの円形になる事が多いですが、徳弘先生はヨコに広くなります。
ちなみに、ケンチャコ・助さんは18歳以上、亭主犬は25歳以上な気がしました。

作風と個性

1ページ半から2ページに1つギャグを挿入して話を回す

前出の『シェイプアップ乱』連載時に編み出した「1ページ半から2ページに1つギャグを挿入して話を回す」展開をベースに、シリアスものから軽妙なギャグ漫画まで、幅広く描けるのが特徴です。

過激な下ネタ・もっこり

また、挿入するのは過激な下ネタやエロネタであり、『もっこり』を漫画表現として初めに使い始めたのも徳弘先生です。
『シェイプアップ乱』や『ターちゃん』のころはあれでもライトだったのですが、低年齢向けの『カッパーマン』あたりからは容赦なく自慰ネタを挿入しており、この辺りが良くも悪くも強めに作用しているように思います。私には良いほうに作用していますが(笑)。

生への執着や生々しさの表現

ただ下ネタの部分については結構シャイだなと思う所もあり、特に『性行為』の描写については知性を感じてしまう事も多くあります。

例えば性交のシーンを挙げても、所謂エロ漫画のような性的興奮を狙ったものというより、作品のシリアスさによって描き分けていて、『狂四郎2030』や『バンパイアシリーズ』では性行為自体が『生への渇望』や『現実逃避』や『愛情と感情の昂り』などの、性行為が持つ『生々しさ』を表現し、時には鬼気迫り恐ろしさを感じる時さえありました。

その一方で、軽妙なトラジコメディ『ふぐマン』では、テーマ上性行為が多かったものの、殆どが日常の中の出会いと併せた淡泊な描写になっており、「何故これを描くのか?」を強く意識しているのが伺えます。

性行為のシーンで性的興奮を覚えることはなく、『シェイプアップ乱』のように、汗を感じるちょっとした露出の方がエロチシズムを感じるというのも、やはり名人だなと思います。

鼻水と汗

性行為で表現する『生々しさ』ですが、これは体液の表現にも出ていて、特に鼻水については非常に拘りがあります。

全作品で徹底しているのが『本気で泣いたら鼻水が出る』というのを当然のように表現しています。これは、人間としてのリアリティを徳弘先生が追及した結果でしょう。

徳弘作品の前にも後にも、この泣いた時の鼻水を引き継いでいるのは尾田先生以外は殆どおらず、或る人はこれを「照れ」や「泣き顔をギャグとして見せているから鼻水が出ている」と表現しましたが、やはりその解釈には違和感があります。

感情が噴き出すのが涙ならば、生活の中で抑えれている涙や鼻水は自然と出て来て抑えようが無いし、感情が噴き出すような状況では鼻水を拭いている場合じゃないだろう、という事だと思います。

我々の経験から思い起こせば、涙は我慢するもので、その涙があふれるときは必ず鼻水が出ています。例えば映画を見ていて涙が出た時にすることは、涙をふくことと咄嗟に鼻をすすうことです。それが「泣く」という事のリアルです。

その表現があってか、他の作家が号泣している場面を描いても鼻水が描かれない事から、徳弘先生のファンにとっては余りリアリティを感じないというか、綺麗すぎて嘘くさく、徳弘先生ほど印象に残らないという事に気付くと思います。

それに対して本心を隠す人物や悪人は涙どころか汗すらかかず、視線もどこか定まらず、表情も歪まず、作り物のような表現を意図的にします。
どこかしらロボットや化物の様に描かれます。

他にも、『汗』については、主に性表現の時に力を発揮していて、特に『シェイプアップ乱』のような、筋トレの中でセクシーを表現するのに、画面から匂い出しそうな汗の表現が非常に巧みで、こういう「モワっ」とした表現が出来る漫画家は希少なのが分かります。

綺麗な身体や直接的な性表現でエロいアングルを描く漫画家は五万と居ると思いますが、温度感や匂いを絵で表現できるのは徳弘正也先生以外で何人いるのか?というのは非常に感じるところです。

自立した女と人情の男、マッチョ

マッチョかどうかは作品により様々ですが、男性キャラは人情に篤く人助けをするキャラが多いです。ターちゃん、宗一郎、河太郎、チャコちゃん、連太郎、虎之助、半兵衛。あと、基本的に女性の誘惑に弱い。

女性は意志が強く、時には男を尻に敷きます。乱子、富子、ヂェーン、舞、もも子、マリ、マリア、そして最近のお駒。

そして誰かしら物理的に強い。
『ふぐマン』は作風上戦闘が無い為武闘派は出てきませんでしたが、そのほかの作品では誰かしら圧倒的な武闘派が登場します。


『タ―ヘルアナ富子』(徳弘正也/集英社)第1巻より引用
空也かっこよすぎる

これは徳弘先生自体が空手の経験があるからだと思いますが、少年漫画では欠かせない要素であり、特に『ターちゃん』では、少年ジャンプで売れ線として当たり前のように量産された格闘漫画と、その作品群の殆どに登場する『かめはめ波』の亜流の中で、その源流の中国拳法から真面目に取り組んだり、サブミッションやヒジなど細かい事に言及しながらリアリティを追及してオリジナリティを出していったのは着目すべき点です。

『人情』と『ゆらぎ』

やはり徳弘作品の一番の強みである『人情』。
『シェイプアップ乱』から時折掲載された人情噺は、人気だったにも関わらず毎度は載せずに、1巻に1話くらいのペースで登場しました。

その後の『ふんどし刑事ケンちゃんとチャコちゃん(略して『ケンチャコ』)』や『カッパーマン』、『亭主元気で犬がいい』そして『もっこり半兵衛』など、とにかく人情噺を描かせれば右に出る者はおらず、人情を描くまでの息抜きとなるギャグも効果的に作用して、クライマックスはより感情を揺さぶられます。

そして、人の情に強く訴えかけられる作品が描けるからこそ、『狂四郎2030』や『バンパイア』のような、人間の尊厳や理不尽までも苦しくなるほどリアルに表現できるのだというのが分かります。

最近の『もっこり半兵衛』でも、感情の揺らぎを作品で表現するのが名人の域に達しております。全体的に淡々としている筈なのに、例えばお玉が吉原へ売られる話でも、理不尽の中希望を持たせつつも、最期の一コマで泣かされてしまうという、思わず唸ってしまう程の巧さがあります。

作品のベースとなっているもの

影響を受けた漫画家は『手塚治虫』であり、1973年に連載開始した『ブラックジャック』など、年代的には社会派漫画に移行した頃の手塚作品を読んでおられたのではないかと思われます。

その作風に漫画家としての指標としつつ、徳弘作品の世界観のベースになっているのは、少年時代から連載開始前までの生活の中にあるように思います。

キーワードとしては主に下記であり、『シェイプアップ乱』をはじめ、後の作品にも随所に盛り込まれています。

・山奥の村の生活
・大学受験浪人
・下宿生活
・大学生活
・少林寺拳法(黒帯)
・ボディビル
・女性シンガー、アイドル
・映画
・芸能ネタ・時事ネタ

その他、徳弘先生のトレードマークともいうべき、小学生並みの下ネタや胸や尻の露出中心の淡泊なお色気は、どちらかというとドリフのコントから影響を受けているのではないかと思います。

また、少年期の体験から山や自然に愛着があり結婚後は奥様と山奥の温泉に行くことが多くなったようで、その時の風景や体験を作品に盛り込むことが増えたように思います。

例えば『ターちゃん♡』や『カッパーマン』あたりから徐々に、作中に自然保護がテーマの話が登場し、『バンパイア』ではマリアが篤彦を育てたのは田舎の山の中で、『亭主元気で犬がいい』や『ふぐマン』ではよく山深い村が舞台となります。

そして、恐らくコミックの間の描き下ろしのどこかに描いている可能性があるのですが、いつの頃からか時代劇に嵌った時期があり、『狂四郎2030』あたりからはその影響が色濃く反映され、現在では江戸の文化や理不尽を作品に良く盛り込むようになっています。

『もっこり半兵衛』も徳弘先生がどうしても描きたかった時代劇ですが、「時代劇はダメ」と出版社から断られても情熱から不定期に連載を開始した思い入れの強い作品です。

読んでみれば納得なのですが、草案を自分で描いていて絶対におもしろいと思ったのでしょうね。先生面白いです。読者としては本当に感謝しかありません。

他にも目立つ要素としては、シリアス回に於いて『聖書』の引用が何度か登場します。
確かに聖書は古くから語り継がれた物語の原点のような内容で、特に信仰と理不尽は特に作話としては基本的な題材なので納得いきます。

『BSマンガ夜話』で岡田斗司夫さんが触れていましたが、

本質的には知的な方で時折その片鱗を見せる事がある。でもシャイなのでそれを隠してしまう

これは私も同感でした。

例えば、華歩ルイ子の父親の名前『華歩セイロガン』
最初なぜ「正露丸(せいろがん)」なのか全くわからず、単に突飛で面白いからだろうと推察していましたが、どうやら元ネタは天文学者兼SF作家の『カール・セーガン』から発想を得たようで、分かったときには「小中学生にこんなのわかるか!(笑)」となったものです。

他にも、『ふんどし刑事ケンちゃんとチャコちゃん』でも、ホモネタや下ネタを随所に持ち込みながらも、人間の本質というか内面の機微、勧善懲悪に終わらない部分を巧みに食い込んで描いていたのが印象的でした。

これらを纏めながら、単にもっこりとか言っているだけの人では無いのを再認識します。とはいえ知的と思われるのは本人は望んでいなそうな所が、本当のプロと言える貫禄があります。

関連する漫画家

徳弘先生に影響を受けた、代表的な作家と作品についてのエピソードについても触れておきます。

まず『作家』から。
これは有名な話ですが、世界的名作の『ONE PIECE』を生んだ尾田 栄一郎先生の師匠であり、尾田先生のあの感情表現の巧さを始めとした、絶対的に誰の絵か分かる程の絵の個性は徳弘先生の影響が感じられます。

世界的な尾田先生が影響を受ける程の泣き顔描写は、つまりは感情の揺らぎの上下の大きさの表現力でもあり、あの泣き顔が徳弘先生譲りだということは、徳弘先生ももっこりなどを挟まなければ世界のスタンダードになっていたかもしれません。

そして『作品』について。
これも歴史的な名作『シティーハンター』のエピソードとして有名な話ですが、当初『シティーハンター』は大人向けの正統派ハードボイルド路線でかなり硬派な作風だったこともあり、コミックスの売り上げと比べ、10歳~15歳の読者が中心となる少年ジャンプ上の人気はあまり振るわなかったという事です。

確かに、初期の槇村兄がパートナーだったころは特に顕著で、子供には少し入り辛いところはあったと思います。

そこを当時担当だった堀江さんがテコ入れとして「『もっこり』とかやっちゃったら?」というのを北条先生が真に受けて作中で採用。それ以降作風自体がコメディー色を色濃くしていき、人気になっていったという事です。

今でも覚えていますが、連載当時、あのハードボイルドな作風の中、いきなり『もっこり』が採用されたときは非常に驚きました。

それ以降、冴羽獠の性格が急にとっつきやすくなり、美女を追いかける冴羽とそれを追う槇村香のコメディー色がテンポを良くし、槇村香との距離感も絶妙に表現できるようになったのではないかと思います。

お陰でアニメも大きな『揺らぎ』が生じて、渋さと緊迫感から一件落着し、お約束の香ハンマーから『ゲットワイルド』に移行するあたりの余韻が増したというか。

先輩の巨匠にも影響を与えるあたりが徳弘先生の名人たる所以かと思います。

今後の期待

ちょっと長かったですが、いかがでしたでしょうか?
ファンとしてはやはりアニメ化、実写化が一番の望みです。

「性表現の映像化が難しい」のは分かるのですが、面白いことは確かなので、ネトフリなど地上波以外で映像化していただけると良いのではないでしょうか?

そんなわけで、今後は個別で作品を紹介していこうと思うのですが、作品によっては実写版のイメージも添えて紹介していく予定でございます。

もっともっと、徳弘作品が広まります様に、そして実写化されますように。

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