
【漫画】小さい女の子の苦難を面白く描く『シノニム』(1巻)。『ミニマム』との関連性は?
こんにちは、ごみくずです。
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最近X(旧Twitter)において、宮崎摩耶さんがかなり前面に出ていたので、最近の連載作品『シノニム』を紹介させていただきます。
井坂氏関連の記事は、紀氏を深堀していたらまとめ切らなかった為、もう少しお待ちください。
宮崎摩耶先生の魅力
宮崎摩耶先生と言えば、ショートアニメ化もされた『ゴクジョッ。』が有名かもしれません。
しかしその前から活動されており、Wikipedia情報によると、漫画賞を貰ったのは16歳のとき、集英社の『週刊少年ジャンプ』で開催された第13回天下一漫画賞と、早熟の天才で、一時期桂正和先生(『ウイングマン』や『電影少女』などの人気作家)のアシスタントを経験。
商業誌デビューは2002年という経歴をお持ちです。
その後、時代はガラケー時代に突入し、「電子書籍」が登場。
「持ち運びにかさばらず、手元で読める」という利便性から、紙の書籍では買い辛い青年漫画や成人漫画が急激に普及されたのは周知の事実ですが、2000年代半ばの電子書籍漫画家としては、春輝先生(『秘書課ドロップ』『センセ。』など有名作多数)と宮崎摩耶先生が特におすすめ作家として全面に出されていました。
どちらも桂正和先生の当時の女性絵柄に影響を受けており、美少女に強い画力が魅力でした。
さて、宮崎先生の「作風」については、
早熟で長いキャリアをお持ちのため「多産」といえるほど作品が多く、忘れているものも含め作品を全部確認できていないのですが、個人的には、後の『ゴクジョッ。』に繋がっていく、初期の『宮崎摩耶大図鑑』に掲載された『Bicycle』や『ちょっきんこ先生』のような下品なバカエロ漫画が一番の強みで、そのうえで人物の隠された気持ちや良心への解像度が高い作家さんだというのを感じています。
あとは何といっても、表情豊かな(可愛らしい美少)女を描かせると並ぶものが無い程の多彩な表現力といいますか。
更に言うと、実は男性キャラも魅力的で、もしかしたら眼鏡男子の大和田みたいなのは女性向けに描かれているのではないかと思え、単に美少女漫画家のような範疇の方ではない、と感じております。
素人がプロに対してこういう表現をするのは失礼というのは承知しておりますが、ご了承いただければ幸甚です。
『シノニム』のあらすじ
舞台は『講談アニメーション学院専門学校』。
その学校を中心に展開される、ボーイミーツガール&SFです。
ちなみにこの専門学校の学科は、
主人公矢野が所属する『漫画学科』。
ヒロインの桜井が所属する『声優科』。
他には、『アニメーション科』、そして『俳優科(演劇部)』の存在も確認できます。
主人公の「矢野ボーイ」こと『矢野』は、先述の通り漫画学科に所属する漫画家志望の19歳。

漫画家と言ってもエロ漫画家志望で、それに加えて童貞。
日ごろ余り周囲を気遣わず没頭してしまう性格のようで、
同じ学校に通う一番の美女『小川』をモデルにしたキャラを自作のエロ漫画に出していますが、彼女と接点はなく、ただ容姿が好みというだけで憧れの存在。
矢野はその心のピュアさと他人への興味の無さ故に周囲からは結構バカにされており、キモヲタの扱いです。
(そういう学校と学科だとおもうのですが、確かに映像と芸能関係の専門学校は学部によって結構地味派手の振れ幅が広いですからね。そういう向きもあるでしょう。)
そんなある日、新作が偶然小川の目に留まります。

小川さん色っぽいなあ
しかし、小川は作品に描かれた自分を見てソフトに嫌悪感を示します。
実際は裏では酷い言いようなのですが。
その後、周囲からバカにされた矢野は、講談社の漫画賞の賞金を見て応募を決意。名誉と賞金100万円を目指します。
賞金百万円あればソープランドに50回いける!
って、ちょっと夢がズレてきてない?
ともかく心を切り替え、前向きになったところでお手製の「ラーメン二郎系弁当」開くと中には謎の少女が…
二郎系弁当、すごくニンニク臭そうで桜井が不憫になりました
矢野は桜井を嫌々助け、桜井も臭い状態で汚い男の部屋を味わいながらなんとか体の大きさが戻り普段の生活に戻ります。
その後、矢野の応募した漫画が大賞は逃したものの、副賞を受賞。

宮崎先生が審査員でエロ漫画選出か(笑)
その事が周囲に知れ渡り、賞金30万円が入る事で、彼を内心バカにしていた小川から金目当てで接近され、人生が急速に変わっていきます。
主要登場人物(1巻時点)
簡単にこの物語の中心人物を。
基本的にフルネームが出ていたのは桜井と矢野の父親だけかと思います。どこかに見落としがあったら申し訳ない。後ほど修正します。
なお、前提として、1巻時点で桜井さんが小さくなるのを知っているのは矢野のみで、小川さんやハヤトはその事を知りません。
矢野

基本的にバカにされています
昼飯に二郎系弁当食べてるところからなんとなくその理由が分かります
『矢野ボーイ』というのはペンネームで、1巻時点では名前は出てこないため不明です。ジャンルはエロ漫画家。童貞なのにエロ漫画家という方は結構いると思うのですが、そこが性への強い願望を表していると思います。
父は漫画家で、テレビでコメンテーター等も務める矢野卓乙という、漫画家としてはサラブレッド血統ですが、本人は父のコネで成り上がることを善しとしない心意気もあります。
とは言え、基本的にまだ未知の性行為と漫画とアニメの事しか考えていないようです。
見ているととにかく汚いというか、自分を客観視したり人の汚さなどに気付かないタイプで、こういうのはある意味ピュアな性格の表れなのかもしれなませんが、言い換えれば、自分が不潔でだらしないため他人のだらしなさに気が付かない、もしくは、身近な女性に指摘をされなかった。という事になると思います。

これは桜井さんがかわいそうだった。。
こんな汚い矢野の弁当に、小さくなった桜井さんが転送されてくる、というある意味悲劇のような物語です。
このように、男性としては最低の部類に入るピュアボーイですが、彼が桜井さんと出会い、男としてどう成長していくか?が今後の見どころです。
桜井 かりん

声優科所属の地味なメガネっ子。
まだ男性経験のない、所謂処女の方。
とは言え、ムチムチな身体と巨乳を持ち、実はとてもかわいい顔立ちをしており、小川さんのようには目立ちませんが、女性に目ざとい男性たちからは「白豚」や「ミニ豚」などと呼ばれています。
声優としての実力は分かりませんが、デビューしたら上坂すみれさんや竹達彩奈さんのような人気アイドル実力派声優になりそうです。
声優を充てるなら上記どちらかになるのか。
地味で処女、ですが、男性に興味があり、密かに小川さんの彼氏のハヤトに恋焦がれています。接点は無いのですが、遠くで見ている、という淡い恋。
しかしながら、実は結構ムッツリスケベな面があります。
そんな彼女が、汚くて気の利かない矢野の弁当へ強制転送され、小さくなった間の時間を共に過ごし、ごみ屋敷に連れていかれるなど、理不尽な苦難に遭遇します。
なお、現時点で身体が小さくなるのは、今のところ桜井さんのみです。
彼女が何故身体の大きさが変わり、そして矢野の弁当箱に転送されるのか?
そして、矢野との関係はどうなるのか?
が今後の見どころとなるかと思います。
小川

所属不明。
憶測ですが、声優科の桜井と接点が無いようだったので、俳優科な気がします。
学校でも有名な美女で、スタイルも悩ましいものをお持ちです。
しかし本性はお金にしか興味がないという、所謂『ド屑女』です。
矢野が大金を手に入れた事が分かると恋人のハヤトを巻き込んで美人局になり、そのためなら身体を許そうとするなど結構節操がありません。
この辺りの描写がとても現代的な女性に通じるのですが、それを可愛らしく面白おかしく戯画化しているなと思いました。
そんな彼女も、実は女性には優しいため、もしかしたらバイセクシャルでは?と思える描写もあるのですが、小さい桜井さんを見て、金に換えようと捕獲を試みるなど、やはりお金のためなら人間を捨てられるタイプで、こういう笑顔で相手を搾取しようとする人、仕事しているとよく会うよなというのを可愛らしく描いています。
今後の展開として、物語の王道としては、矢野が本気で好きになってしまう、となる流れなようにも見えますが、どうなるでしょうか?
加えて、他人の不幸より金を優先する彼女が、友達になった桜井さんが小さくなるという困った状態で、彼女がその事を共有を受けるのか?その時、彼女は変われるのか?という点が今後の気になるところです。
ハヤト

所属不明。
恐らく声優科か俳優科かと思われます。
実家が金持ちで容姿もそこそこ美形。
桜井さんが恋焦がれる相手でありますが、実は小川さんの彼氏。
ただ小川さんも、彼の実家が金持ちで見栄えがいいから打算的に付き合っている、とみていいでしょう。
本人も性格が良いとは言えず、学生なので金も無く、どこか小物感が漂います。
矢野の近くにいますが、矢野を見下しており、矢野に対してバカにした発言をしてきます。矢野を思いやった友人という立場では無さそうです。
現在添え物みたいな立ち位置ですが、『ミニマム』の斉藤のように、物語に於いて重要な立場になるのか?が気になります。
タイトル『シノニム』の意味
タイトルの『シノニム』の語源は英語の『synonym』であり、元来の意味は『同義語』。つまり、異なる言葉が同じまたは類似した意味を持つことを指します。
このタイトルの指す意味は、以前宮崎先生の作品で、小さい女の子とのボーイミーツガール&SFという同様の基本設計の『ミニマム』という作品があった為、その作品を指して『シノニム』としたのだと思いますが、同じような作品でいて、違う人物が物語を作っていくこと以外についても『ミニマム』とは異なる、という事でしょう。
では次は、『ミニマム』とは具体的にどのような違いがあるか見ていきたいと思います。
過去作品『ミニマム』との違いは?
2010年から2015年まで、月刊ヤングマガジンで同様の基本設計を持った
『ミニマム』という作品を連載していました。
同じ基本設計というのは
① 童貞が小さい女の子に出会い
② 不規則に大きさが変わる女の子の身体に翻弄されながら恋愛を深め互いに成長していく
③ SF作品
という点です。

終始このふたりのやり取りがたのしい作品
当作品『シノニム』も同様の設計ですが、現時点での『ミニマム』との違いを大まかに言い表すと、
【ミニマム】
・切ない路線で、王道の恋愛要素がある
・二人は高校生だが、同じ学校の生徒では無かった
・お互いに惹かれ、すれ違いはあっても歩み寄る
・小さくなる場合、その場で小さくなる(トリガーは大まかにはあるのですが、ここでは伏せます。気になる人は読んでください(笑))
【シノニム】※2024年12月1日時点
・ギャグ要素が全面に出ており、童貞オタク男の汚らしさや金にガメツイ女等、人間の浅ましい我欲を面白おかしく見せる
・二人は専門学校生で、校内で互いに見たことがある
・お互い惹かれてもいないし、歩み寄らない
・体格の変化については、現時点での明確なトリガーは不明だが、小さくなった時刻と場所はお昼時の学校のトイレで、何故か矢野の弁当の中にいる。大きくなった時刻と場所は24時の矢野の家。
で区別できるかと思います。
なお、『シノニム』はまだ1巻が出版されたばかりのため、今後大きな転換があるかもしれませんが、『ミニマム』の遥と『シノニム』のかりんは生い立ちが違うので、体格の変化の原因に関連性は無さそうです。
ちなみに『ミニマム』も非常におすすめなのでぜひ読んでみてください。
今後紹介文を書くと思うのですが、こちらのSFは何処となく奥裕哉先生を感じます。
今後の焦点
先述の通り、周囲を気遣えない男の臭い弁当の中に転送されてしまう桜井かりんの不憫さと恋心の変化、登場人物のそれぞれが我欲に走り余り寄り添わない点が面白い本作ですが、第11話の①が発表された2024年11月26日時点での今後の焦点(見どころ)を整理すると、
① SF要素の部分である「何故桜井かりんは矢野の弁当に転送されてしまうのか?」。そして、体格の変化のトリガーは何なのか?
② 誰のどの様な目的と理由で桜井かりんは小さくなってしまうのか?
そしてこれが最も気になりますが
③ 同じ基本設計の両作品、『シノニム』は『ミニマム』と世界観まで共有しリンクしているか?
もしくは、『ミニマム』とは言わずとも、他の作品とリンクしているのか?
上記の3点が現時点で謎のままであり、今後の展開の重要事項になると思います。
まず、①については、現時点では昼間12時頃と夜中24時頃に体格の変化が見られるため、体格変化のトリガーは『時間』ではないか?という推測が出来ます。
ただ、何故矢野の弁当に飛ばされてしまうのか?という肝心の理由は今のところ全く見えてきておりません。
②については、誰が桜井かりんを小さくするようにしたのか?が全く見えてきてはおりません。桜井かりんの生い立ちは分かりませんが、実家もあり過去が不明というわけでもなさそうです。
この辺りが一番最後まで残る謎かと思います。
そして③については、1巻時点では明確なことは提示されません。
しかしながら、2巻収録予定の第11話には『ミニマム』に登場する『キャサリン』らしい女性が登場します。
生きとったんかいワレ!!!
ちなみにこちらが『ミニマム』のキャサリンさん。

あいむきゃさるぅぃん
無表情
第11話の①の時点では、表題が『転生失敗!』なので、ファンとしてはなんとなくキャサリンの事を言っているような気もして期待感マシマシだったのですが、2024年12月10日更新の最新話の②を確認したところ、「おお!」となる展開が待っており、その上でもうひと味ついていました。
キャサリンと共に再構成された人物は誰なのか?
そして桜井さんは何故あのゲームに影響を受けているのか?が今後解明されていく筈です。おお~楽しみだぞこれは。
なおヤンマガWebで最新話が更新されているので気になる方は読んでみてください。一部無料です。
上記とは少し話がズレますが、第6話には『ゴクジョッ。』内でマスコットとして扱われる『(交尾するイヌみたいな)ネコ』が登場します。
単なる宮崎摩耶ワールドの記号的なマスコットキャラとしての扱いで、ギャグ路線が強い作品ではどこにでも差し込まれるキャラとみていいと思うのですが、もしかしたら松本零士作品のように、他の作品のキャラが登場したりするかもしれません。
というか、宮崎先生の作品は日本を舞台にする場合、実名駅を使う作品が多いので、『ミニマム』は池袋、『シノニム』は亀有周辺が登場し、『/Blush-DC ~秘・蜜~』は大宮、『ゴクジョッ。』は栃木駅周辺の話ですしなんとなく大人になった『ゴクジョッ。』のキャラも登場してしまうかもしれません(しないか。出版社違うし)。

いぬ
何れにしても、『ミニマム』という作品があるせいで、内容の相違が知りたくなるという知的好奇心を煽られ、更に登場人物が皆我欲しかない上に、挿入された『ミニマム』のキャラにより展開が読みにくい、という面白さがあります。
ゆっくりペースでの連載ですが、今後も楽しみな作品です。
この機会にお目に留まった方は是非読んでみてください。
皆さんにも『自転車の精』のご加護があらんことを。
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