映画 「ルックバック」感想 (ネタバレあり)
チェンソーマンの作者が描いた読み切り漫画「ルックバック」アニメ映画化作品。2021年にネットで無料公開された作品でもある。
もう3年も前の作品だなんて
当時は2つの理由で大きく話題になったと思っている。
ひとつは作品そのものに関する感想、もう一つは扱ったテーマの一部で軽く炎上した(という認識)。
炎上案件(個人の見解)ともあって、たいがいそっちに引っぱられてネガティブな印象がつきまといそうだけれども、高い評価が低い評価を凌駕したと思っている。それだけ作品を読んだ人を緻密な画力で圧倒し、引き付ける内容だった。
原作のマンガで受けた衝撃を下回ることはない
クレジットロールをみた限りでは、作者は原作以外、映画製作そのものには関わっていなさそう。脚本とか監督はもちろん、キャラデザインにも。
上映前は、感想を残したくなるほど心を打たれるとは思わなかった。
「このマンガが映像化されたらどうなるんだろう」というワクワクドキドキを決して裏切らない声の演技、描写、演出、配色、音楽、そして上映時間。
たのしいだけの映画でなければ、悲しいだけの映画でもない
フィクションの世界だけれども、たしかにそこには藤野と京本が過ごした時間が流れていた。
喜びも、恥ずかしさも、いらだちも、とまどいも、悲しみも、おそらく等身大。私自身も、二度と戻れない時間に思いをはせながら、でも目の前のスクリーンの2人に釘づけになった。
本編の中ではまったく些細なシーンなのに、こみ上げてくるものがあった。
とくに不意を突かれたのは、街なかに遊びに出かけた2人が手を引っ張り引っ張られ走るシーン。
京本の手を引っ張りながら走り、後ろを振り返る藤野。
藤野に引っ張られながら顔を前にあげてついていく京本。
藤野のひねくれ方や感情にあらがえない真っすぐさとか、京本のひたむきさとか
印象的な場面はいくつもあった。
絵を描いているときの藤野のひどい貧乏ゆすりと、集中したときの微動だにしない姿
初めて京本の家に行ったときの帰り際、いつまでも手を振っている京本の姿を藤野もとりおき振り返りながらちゃんと見ていたところ
これから連載というときに、京本に美大に進みたいとおそらく初めて主張をした京本の成長
その言葉に驚きを隠せずイジワルなことをいうけど、悪意ではなく100% とまどいの想いで言い返す藤野
小学生のときに着ていた半纏を、大学生になっても自室に飾っていた京本
別の道を歩み、最後にもういちど交わるけど、はかないまぼろしだったところ
悲しくないわけない場面で流れるうつくしいエンドロール曲
haruka nakamuraという方が手掛けている。
ノルディックな伝統的な宗教音楽ぽい雰囲気をまとう澄んだ音色の主題歌はとてもキレイだった。
京本は殺されてしまい、その余韻は残るのに、似つかわしくないほど美しい。そのギャップがまた良い。
一部だけど原作が読める
途中までだけど。
どこか引っかかるシーンがあったならぜひ映画もオススメ。