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サラバだ!秘めたる者達!
便秘との戦いの話です。お食事中の方はお控えください。
そう。私は頑固な便秘なのだ。学生の頃はお腹が弱かった。お腹がぴーぴーともぎれて痛むから、よく授業を抜け出していた。センター試験の時もお腹を下しちゃって、試験はズタボロだった。試験の結果が思わしくなかったのは、果たして本当にお腹の弱さのせいだったのかどうかは言及しないでほしい。とにかく、若いときは便秘とは無縁だった。
それが一転、便秘にひっくり返ったのは、長男妊娠中からだと記憶している。次男妊娠中~出産後の現在、それは更に悪化の一途を辿っている。便秘薬が欠かせない。
産後に便秘になりやすいのは出産時の出血で腸内の水分が減少してしまうことや、母乳に水分を摂られることでことで体内の水分量が減少してしまうことなどが原因として挙げられます。
との事だ。
第一ラウンド水分摂取。
まったく効果なし。ヨーグルト、乳製品も同様。
「ヨーグルト食べると次の日お腹緩くなって困る」
そう主張する便秘知らずの夫が恨めしい。
第二ラウンド。玄米、オートミールによる食物繊維大作戦を決行。
これは一定の効果があった。数週間、便通はかなり良かった。このまま順調にいくかと思われたが、私の便秘、一筋縄ではいかない。体が慣れたらしく、再び私の体は便をため込み始めた。もはや「便秘」という言葉がゲシュタルト崩壊していた。便を秘める。便秘、べんぴ、ベンピ、BENPI。便とは何なのか。君達は、なぜ私の中に留まり続けるのだ。
ここ数日で急にトイレで排便できるようになった長男。
「ママ、うんち出来なくてかわいしょーねぇ」
だって。どの口が言う。でもうんち成功おめでとうな!
と、ここまでが昨日までの話。
私は今日、第三ラウンドに挑んできた。
育休中、やりたいことリストに挙げていたヨガを、ここぞというタイミングで開始するときが来た。運動が圧倒的に足りていないのは確かだ。個別レッスン、初心者OK、そして子供連れOKとの事で、次男と一緒にスタジオへ行ってきた。
ヨガの先生はスマートで美肌。おおよそ便秘とは無縁そうだ。次男がニコニコしている。心なしかいつもよりも愛想がいい。生後五か月にしてさすが男の子、綺麗な女性には目がないらしい。
「体の具合で気になるところはありますか?」
来た来た。待っていましたと言わんばかりに答えた。
「便秘がひどいんです」
「今日はたくさん出ると思いますよ」
いいぞ、いいぞ。これは期待できる。もう勝ったも当然だ。大船に乗った気持ちでレッスン開始。
便秘解消はもとより、体質改善、リフレッシュ、心の安定といった効果もあるヨガ。初心者体験コースなのだが、なかなかハードで、しっとり汗が滲む。ねじりのポーズは腸を動かして便秘の解消につながると、先生が解説してくれた。
「呼吸を止めないように、体の先まで、呼吸が行き渡るように」
届け、届け、私の呼吸、空気たち。私の腸まで届け。目覚めろ私の腸。
約一時間のヨガのレッスンの最後。亡骸のポーズと呼ばれる“シャヴァーサナ”。仰向けで横たわった状態の静かなポーズは、身体、マインド、精神が調和されるとの事で、ヨガの最後には必ず行われるポーズなのだそう。
「今だけは、未来のことも過去のことも忘れて、ヨガのマットに体を沈めていくような感覚で。」
先生の静かな声と穏やかな音楽が心地いい。
今だけは、便秘の事も便の事も忘れよう。
「ぶぅ~~~~~~ぶりゅぶりゅぶりゅぶりゅ~~~~~」
シャヴァーサナ中止っ!
目を開けると、バンボと呼ばれる乳児用の椅子に腰かけた次男が真っ赤な顔をして息んだ後、晴れやかな顔をしていた。
もはや笑うしかない。
今かい。君かい。
君はいいんだよ、今うんちしなくても。
「うんち出ちゃいましたね」
先生も笑っている。汗をかき、腸をねじって便を押し出そうとしている母の隣で、バンボに座っているだけの次男に先を越された。
「私、元幼稚園の先生なんです。おむつ変えますよ。どうぞ、リラックスしてください」
シャヴァーサナ再開。が、私の頭の中は次男の便の事でいっぱい。
終了の合図とともに目を開けると、すっきり顔の次男が愛想よく先生に抱かれていた。
先生、ありがとうございます。
帰りの車中、お腹の中で蠕動運動を感じた。このところ、便秘薬に頼りっぱなしだったから久しい感覚だ。家に到着し、次のレッスンの予約をした。
三度目の正直。
今度こそ、便秘ときっぱり縁を切る!