心の中の記憶5 運命 再会
運命の人になりたかった相手が二人いる。
一人はシェームス。コスタリカの語学学校で三週間一緒だった。お互い拙いスペイン語で会話し、毎日出かけた。世界は広く、何がなくてもわかりあえる人がいた。
ゴルフコースについて行ったとき、カサカサの唇がぶつかってきた。乾きすぎていて、キスだと気付かなかった。今の私の唇も、そこまで乾いていない。20代後半だった私より、だいぶ、ずっと年上だった。ダブリン在住の元ドイツ語教師。ヨーロッパの歴史をよく知らないけれども、複雑な過去を背負っていたと思う。
最後、額にキスをして、イエィツの詩集にメッセージを書いてくれた。そのうち、手紙も届かなくなり、どうなっているのかわからない。
昨日、翻訳機能を使ってみた。アイルランド語だった。古い 世界?、、、なんのことだったのか、まったく会話も思い出せない。
もう一人は、中学の時、1学期間だけ同じクラスだった友人。相手が引越しをして、お別れだった。私が自分のことを大嫌いだったせいで、最後に約束していた夏祭りも行けなかった。
大学生、社会人になってからも何度か会ったけれど、いつもタイミングと時間が合わなかった。35年間、どうにかなるはずだったのに、どうにもならなかった。
大人になって、自分を好きになってきて、好きな人に会いに行くことを躊躇しなくなった。
コロナ禍に、会いたい人に会いに行くと決めた。海外渡航が解禁になり、少し迷って、真っ先に会いに行った。たぶん結婚していたら、お互い完璧な道を歩んでいたと思った。できすぎた話で、帰りの機内で「ビフォア・サンライズ 恋人までの距離」「ビフォア・サンセット」を観ながら、家族に隠れて泣いた。
半年が過ぎてもう一度、会った。
会ったところで、どうしていいかわからない。どうしようもない。いつでも一番大事なのは家族だから。
それは、まさにその通り。大事な人には、そうであってもらいたい。一言一句、私もまったく同じ気持ち。
たぶん、うっすらパラレルワールドが存在している気がしていたから、悔しくなった。
ひどく落ち込んだので、「パスト ライブス / 再会」を泣くために観に行った。泣けなかった。
誰かに「ビフォア・ミッドナイト」を一緒に観ようと声をかけてもらいたい。
夢もみながら、愛すべき家族を一番大事に、日々を過ごす。
夫はもうすぐシカゴに出張、映画のことを考えてやるせない気持ちになったので、夏、フランスに行くことにした。10年後、私は誰と、どこで何をしていようか。
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