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健全な中二病患者

仕事から帰宅した私の顔の前に、「これ、意味わかる?」と娘が自分のスマホ画面を突き付けた。

Can you alive without weapon?

「…まあ、分かるよ。」

「…」の数秒で、私が呑み込んだ言葉は「物騒な」「なんでこんな言葉を」「何かあった?」etc.

「じゃあこれは?わかる?」

Why I kill a lot forever.

「???」

娘は中学に入って程なく学校に行かなくなったので、英語の授業をほとんど受けていない。にしてもだ。一体なに、なに??

「うーん。お母さんの英語力では理解できんなぁ。ネイティブの言葉?あんたが考えたの?」

「あたしが考えた。意味わからん?どう書けばいい?」

「言いたいことは何?誰かを殺したくないの?殺したいの?a lot of ~で、たくさんの~っていう慣用句だよ。そんなにたくさん殺したい相手がいるってこと?」

「なんで殺せないんだ~!って感じ。誰か特定の人をというんじゃなくて」

よくよく話を聞くと、ネットで二次創作用に公開されている音楽に自分で作った歌詞の字幕をつけて、自作の絵と一緒に動画に仕上げたいのだそう。色々気になる事はありつつも、親に尋ねる時点でひとまず心配無いと判断するとして、翻訳アプリを使いながら一緒に考える。

Why I can't kill the enemy?

出来上がった文章をアプリでチェックし「なぜ敵を殺せないのだろう」となると、「すごーい!お母さん、すごいね!」と、娘から尊敬の眼差しを向けられた。なんとも複雑な気分で「いや、それほどでも」などと言っていると、「これでどう?」スマホに打ち出した文章をまたしても顔の前に突き出された。

Why I can't kill the enemy forever?

「ちょっと待ったっ。foreverとは何ぞや。それ意味不明です」「えーっ。foreverは無いとダメなんだよね」「いやいやいや、それ動画にくっつけてアップしたら絶対笑われるよ。まあ、あんたが恥ずかしいだけだからお母さんは別にいいけどさ」

翌日、仕上がった動画を見せてくれた。すでにSNSにアップしてぼちぼち「リプを貰ってる」そうだ。アップテンポの曲に合わせて、変わっていく字幕を目で追うのは一苦労だったが、”forever”はめでたく削除されていた。

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