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ひとりとふたり

理由もなく涙が流れる時、すぐに月の満ち欠けを調べてしまう。そして必ず月のせいにする。明日は満月だから。新月が近いから。なんて、勝手に押し付けられて月も迷惑しているだろうか。それともあたたかく見守ってくれているのだろうか。

理由もなく涙が流れるなんてこと、本当にあるのかな。自分で言っといてだけど、どこかにちいさな理由が埋まっているのではないか。それに気付かないふりをして、月が月がと喚いているんだ。きっとそう、理由はたくさんある。君に会えない寂しさ、行き詰まる現実、何もできない無力感、いつかひとりになる恐怖。

いつかひとりになる恐怖。

会えない時間が重なると、本当に君がとなりにいてくれたのかさえ思い出せなくなる。夢だったんじゃないかと疑えてしまう。本当に君はいる?まるで実感がなくなってしまう。たとえ、あれほど濃厚な時間を過ごしていても。

いつかひとりになる恐怖とはいつもとなり合わせだ。今までずっとひとりだったくせに、いざひとりじゃないことを知ると途端に怖くなってしまう。ひとりでなんでもできて、ひとりでいることに慣れて、ひとりでい続ける覚悟だってしていたのに。ひとりぼっちで何が悪い!とかなんとか言って、楽しんでたはずなのに。いつかひとりになってしまうことが、いつだって怖くなってしまった。

君が ふたり の世界を教えてくれたから。だからいつだって、ひとりになるのが怖い。

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