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銀河フェニックス物語Ⅰ【少年編】

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レイターとアーサーが十二歳から十五歳まで乗っていた、戦艦アレキサンドリア号での物語。
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2024年3月の記事一覧

銀河フェニックス物語<少年編> 第十五話(27)量産型ひまわりの七日間

** 「中継地点宙域の管制下に入ります。あと二時間で本艦は着陸します」  艦内放送を聞きながら、俺は左手に着けた通信機の動画再生ボタンを押した。カラフルな短い映像が手首の上の空間に立ち上がる。中継地点に着く前に、こいつをアーサーに見せたほうがいいな。    それにしてもやべぇ。  アリオロンのおっさんが死んで、艦内は大変なことになってる。敵とはいえ捕虜が死んだんだからな。しかも俺のせいだ。俺がおっさんに興味を持ってトウモロコシを持ってい行ったせいだ。しかも、頭殴られて気ぃ失

銀河フェニックス物語<少年編> 第十五話(26)量産型ひまわりの七日間

 棺に入れられたグリロット中尉は眠っているようだった。格納庫脇の断熱されていない空間に天然の冷凍保管庫がある。その一角が霊安所となっていた。この艦には全員分の棺が用意されている。出航以来、最初の利用者が敵兵というのは、我が軍にとって悪いことではないはずだ。   グリロット中尉の冷凍された遺体はこのまま人権委員会に引き渡され、家族のもとへと帰る。  彼は娘のことを「宇宙一可愛いです」と目を細めていた。僕と同じ年の彼女はどうなるのだろう。アリオロンでは子どもの幸せは最大限に尊重

銀河フェニックス物語<少年編> 第十五話(24)量産型ひまわりの七日間

**  緊急の艦内放送に耳を疑った。 「グリロット中尉、逃走中。レイターを人質に取っている」  何が起きた? 考えるよりも早く僕は走りだした。中尉の目的はわかっている。ひまわりだ。 * 「アーサー、あんた、あのひまわり、咲けねぇって知ってたか?」  宇宙船お宅のレイターはV五型機を鋭い観察眼で見ていた。 「咲けない? どういう意味だ」 「機体の先端に、黄色いひまわり型のバリアがでる送出口があるだろ。あそこが改造されてんだよ。カバーの感じからして、多分、コネクトケーブルが

銀河フェニックス物語<少年編> 第十五話(23)量産型ひまわりの七日間

**  料理長のザブの許可をもらって、トウモロコシを食糧庫から持ってきた。皮のままグリルで焼く。香ばしい匂いが漂ってきた。  久しぶりに身体が軽い。きのうはぐっすり眠れた。『赤い夢』も見なかった。  アーサーのことは好きじゃねえが信頼できる。あいつがごちゃごちゃと聞いてきた時にはどうなるかと思ったが、俺のためだったってことだ。  それにしても、アーサーの奴は基本的に嘘が下手だ。あんなんで将軍家が務まるんだろうか。軍師としては優秀だが、軍の組織をまとめる力があるとは思えねぇ