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メタファーは便利だけど、万能じゃない

こんにちは。SmartHRでUXライターをしています、稲葉です。

担当していたプロダクト「文書配付」で承認機能がリリースされました!
書類のWチェックや上長確認など、従業員に配付する書類の承認がSmartHR上で完結できます。

承認機能を開発するなかで、印象的な検討があったので、今回はそのことについてnoteを書いてみようと思います。

「トレイってお盆じゃないんですか?」

承認者用の画面の名前を検討していたときのことです。管理者が承認を依頼すると、承認者の該当画面に承認が必要な書類が表示されます。「この画面をなんと呼ぶべきか」をチームで検討していました。

最初に候補としてあがったのは「承認トレイ」でした。

もしかしたらこの時点で「?」が浮かんでいる人もいるかもしれません。もしくはメールアプリなどで「受信トレイ」という言葉を目にしたことがあって、すっと意味を理解できた人もいるかもしれません。

「トレイ」はメタファー、平たく言うと「例え」のようなものです。では何に例えているのか。物でいうと、以下のようなものを「トレイ」と呼びます。私が新卒のころは、経費精算の領収書など書類を集めるために書類トレイがオフィスに設置されていました。もはや、懐かしい。

私ですら懐かしいと感じる物なので、社会人になって以降ずっとリモートワークだったユーザーから見たときには、「トレイ」がなんのことかわからない可能性があります。

実際に、社会人2〜4年目程度の知人に聞いてみることにしました。

「メールアプリとかで使われてる『受信トレイ』の『トレイ』ってなんのことか、イメージできる?」

前職の同僚に聞いていみたところ、「お盆のことですよね…?」と返ってきました。「これのことだよ」と画像も見せてみましたが、ピンときていない様子。他の人に聞いた結果も同じようなもので、「トレイ」という言葉で正しいイメージが伝わらない層がいることを把握できました。

メタファーは便利だけど、万能じゃない

メタファーは、アイデアやコンセプトを分かりやすく伝えるのに効果的です。トレイも、紙の書類を電子化していくという文脈では、有用な言い回しだったと思います。

しかし、言葉は文脈に依存します。時代や文化によって意味やイメージが変化することがあります。そのため、メタファーを使うときには、広く意図通りに機能するものかどうかを丁寧に検討すべきです。

理解できない人がいる可能性はないか。今回でいうと、自分は理解できるし使ったこともある「トレイ」を、オフィスに出社して仕事をすることが当たり前でない人たちにも理解してもらえるか?と立ち止まったこと。

どれくらいの時間軸でその言葉を使いたいかによっては、そもそもメタファーを用いないという選択をすべき場合もあると思います。

ちなみに、最終的な文言は、実際に伝わらなかったという点や他機能との整合性などを踏まえて「承認タスク」というメタファーを使用しない文言になっています。

自分の言語感覚も万能じゃない

最近、SmartHRのUXライターとしての仕事を紹介するインタビューに取り上げていただき、そこでもこんな話をしました。

私自身にも固有の言語感覚があり、私だけの視点で最適解を考えきることは難しいと思っています。いろんな人からのフィードバックを活かすことで、できるだけ多くの人が懸念や不安なく使えるための言葉選びを心がけています。

「自分は理解できる」ということに満足せず、他者にも話を聞いてみることは、メタファーだけでなくUXライティングでの検討全般に当てはまる大事な点だなあと改めて感じています。

もしご興味があればインタビュー記事の方ものぞいてみてください!

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