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アイドルに疎い自分が欅坂・櫻坂オタクになった理由【シン・カルチャー論】
日本の豊かな文化の中で、ひとつにだけ集中してしまう危機感を近年感じます。
ネット時代は多様性を助長すると思われました。しかし濃い文化にも新規参入が容易になることで強制的に大衆化し、中間層の育成・生存戦略がうまく進まず、結果として社会的価値の低下が起こりつつあります。
今回は「シン・カルチャー論」と題して、日本の濃い4つのカルチャー群を比較検討し、自分だけのリストを組んでいくことで、ご自身の文化的強みや弱みを認識する機会としていただければと思います。
既存の文化論は崩壊している
![旧文化論](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/56712345/picture_pc_ab9ee39097207cb6ca554fcdc92566dc.jpg?width=1200)
一般的に言われる文化というと、大衆としての主流さを表すメインストリームとサブカルチャーという軸と、社会的な価値を表すハイカルチャーとローカルチャーという軸。これらの2軸の分析で全体像が示されています。
これらは特定の文化に対する分析には効力を発揮します。しかしネット化やグローバル化が進み文化形成サイクルの激しい今、実体を見失いやすくなっているのも事実です。
そこでより多次元で文化形成の流れを考えた文化論が必要となります。
文化階層の変化
![画像2](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/56712486/picture_pc_662fa426ce80865a89671a216f14529f.jpg?width=1200)
◆ 社会的成層(Social stratification)
カルチャーというと、かつては政治や民族や人種、もしくは性別や階級によってレイヤーごとに固有のものが形成されました。メインストリームは権威付けがなされることで教養としてある程度の社会的価値が認められ、サブカルチャーがマイノリティのものとして特定の集団のなかに根ざしていました。
◆ 新部族主義(Neotribalism)
そしてそれらの文化階層は、近代化・現代化に伴い変化し、文化の担い手は徐々に混ざっていきました。
![新部族_4](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/56716322/picture_pc_e60e2ce8caedb3cfe0579af6e67e6169.png?width=1200)
2019年に日本のネットの利用率は89.8%に達し、激動の変化はある程度収まってきたように見えます。その結果フィルターバブルがかけられた新部族(Neotribe)ともいうべき集団が無数に登場しました。
政治問題のような完全な孤立や対立ではなく、新部族同士は相互に影響を与えながら文化の形成に貢献しています。
4つのハイカルチャー
![ハイカルチャー](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/56722466/picture_pc_c799aaeb17fed4836577da27d3c92458.png?width=1200)
日本の今現在における文化の発信者としての新部族集団に、エリート、ヲタク、パリピ、ヤンキーというものを代表例として上げたいと思います。
◆ エリート
エリートの特徴は、伝統を重んじているという点です。これは保守的という意味ではなく、歴史的情報へのアクセスがしやすい環境にいるという意味です。
古来日本においては、仏門の僧のように最新の中国やインドの情報を得て勉強する教養の広い理論的な学者たちでした。
書籍や研究資料を豊富に読むだけでなく、インターネットを使い海外など広いコミュニティーの情報へ自由にアクセスをできるなど、情報社会をうまく使える集団でもあります。そのため情報格差(Digital Divide)の恩恵を受けている層ともいえます。
西洋絵画やクラシック音楽が全く国籍の違う日本のエリート層に愛されるのも、やはり多くの理論体系や歴史的背景を知る機会が多いためでしょう。
◆ ヲタク
ヲタクの特徴は、特定の文化醸成に注力している点です。特定分野への情報アクセス権を強くもった学者気質な側面もあるものの、エリートたちが理論や伝統を重んじることとは異なり、思想性や創作意欲が強く、それ自体が目的化することもあります。
コミケやケータイ小説など、二次創作として採算の取れない創作活動に注力するケースも多く、商業的な成功や完全な趣味活動ではない中間領域の創作活動を広く行える土壌を形成されています。
創作の中間領域をいかに広げるかはとても重要です。日本も鎌倉時代以降から一極集中ではなく地方分権があったからこそ、互いに真似事をしながら地方からでも豊かな日本文化が作られました。
仏教学者の鈴木大拙は、文化醸成の必要条件として大地性をあげています。都市部に権力のあった平安時代は観念的であるため文化が育まれず、鎌倉時代の農民にある大地性にこそ真実があると語っています。
◆パリピ
パリピの特徴は、流行への影響力をもっている点です。ヲタクやエリート層ほど特定分野へのアクセス力はないものの、イノベーターやアーリーアダプターとして最新トレンドを発信し続け、どの新部族にも属さない大衆の動向すら操れる現代の貴族のような存在です。
かれらインフルエンサーが流行を大衆化することにより、文化が経済活動へと乗り出します。流行はときに大きなムーブメントとなり、ハロウィンなどのように異国文化すらも日本的解釈で急速に広げます。パリピは新文化を新たに推し出す政治力に溢れています。
パリピのもつ影響力の特性は和の精神とも言うべきで、不特定多数への協調性が強く働きます。
かつては宮中の女性が非常に実用性やデザイン性に優れた、かな文字や、今でも使う女房言葉という流行語を作り出していました。
◆ヤンキー
ヤンキー層の特徴は、反骨精神を宿しているという点です。武士のように誇りや上下関係を重んじ、一方で競争意識が激しく不満があれば反社会的な自己表現を行います。そんな二面性を抱えながら組織を上手く成立させます。
そして一度おこった革命が叶うと、新たな伝統の文脈として認められていきます。つまり彼らの役割はカウンターカルチャーとしてアンチテーゼを発信して、弁証法的に社会が進展させることです。
たとえばかつてのジャズやロックは若者の反骨精神の象徴でした。しかし今は社会的地位が認められ少しずつ伝統化が起こっています。現在ではヒップホップを先頭として受け継がれ、音楽だけでなくファッションから精神性までを担っています。
ローカルチャー化
4つの新部族それぞれが、社会的な意義をもったハイカルチャーと呼ぶべきものです。以前までの文化論的解釈では、教養的価値の認められた作品こそがハイカルチャーでした。しかし文化が作られる過程そのものに着目すると、伝統・醸成・流行・反骨というそれぞれの役目に価値が十分に認められます。
しかし徐々にハイカルチャーは少子化やネット空間の密度低下に従い熱が下がり、ローカルチャー化が現れています。
![ローカルチャー化](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/58986412/picture_pc_2728002fbf1449818562dddc11f28c19.jpg?width=1200)
◆ 意識高い系
エリートから、適度に必要となる教養のみを身に着けた意識高い系(インテリ・知識人)が生まれました。社会的責任感の欠いた利己的な拝金主義の状態になると、文化や伝統に対する意識が見失われた自己中心性に行き着いてしまいます。
◆ エセオタク
ヲタクは社会的に理解し難い存在からカジュアルな存在になり、独自の研究や創作活動を行わずとも消費活動のみで完結できる量産型オタク、さらにはファッションとしてのエセオタクが増加しました。
◆ ウェーイ系
パリピはハイセンスを見抜く審美眼をもったカリスマを生みましたが、ウェーイ系は同期的に生まれてしまう先導者のない一過性の流行を生み出します。
◆ マイルドヤンキー
ヤンキーは反社会的な目的意識があったのに対し、マイルドヤンキーは明確な目的がなく、強力な新たな伝統を生み出す力がありません。
これが一つの文化に固執すると危ないと感じる理由です。強力なサイクルを生んだ4つのハイカルチャーに対し、ローカルチャー化が進むと自分らしい生き方をして文化を作ってるはずが、価値の高い文化形成につながらないという結末になりかねないです。
ニューラルネットワーク思考
ここまでカルチャーを2軸によって見ないで、ある程度独立した4つの軸として捉えた理由は、分析できないほど複雑だからというだけではありません。今後の生存戦略のためにもなるからです。
◆ 文化の生存戦略
世界全体で見ればそれぞれの新部族は相互作用して文化を作っているように見えます。
ドラムンベースという音楽を考察した記事では、各ジャンルを数学的な部分集合のように捉えました。さらに4つのサイクルについて、ジャンルが連続体になって伝統化していく非線形な過程としてみなしました。
一方でミクロに見るとカルチャーは、個人が栄養素のようにバランスよく摂取するものです。塩基配列のように4つのカルチャーが生物個体レベルでひしめきあい、文化情報をアウトプットすることで遺伝し、絶滅と進化を繰り返します。
この個人スケールを起点とした人類種の文化遺伝モデルは、日本伝統芸能における美意識の歴史からも見ることができます。
それらを踏まえ、個人スケールの文化的生存戦略として提案したいのが、「ニューラルネットワーク思考」です。
これは4つのハイカルチャーをニューラルネットワークの入力層にするという考えです。
非常にまどろっこしい言い方ですが、4つの独立した情報を扱うのにすんなり理解しやすいのが、個人的にDNA構造などよりもニューラルネットワークなので、やや正確性には欠けますがこの例で一度進めてみます。
◆ パーセプトロン(ニューロン)
![パーセプトロン](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/56725609/picture_pc_5b5c292fd3f5506d7cae513868e4debc.jpg?width=1200)
一つのカルチャーからの入力を脳のニューロンのようなもので考えてみましょう。
情報の値が入力されて、係数をそれぞれかけたあとで合計をとり、もし0を超えたら値を返します。エクセルでもできるような単純な計算ですね。
◆ 多層パーセプトロン(ニューラルネットワーク)
![ニューラルネットワーク思考](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/56725623/picture_pc_e6376fbe5b2ccef362ab609a05dd20ed.jpg?width=1200)
今度は複数のカルチャーからの入力をネットワークできるように多層化させたものを考えます。
この中間層が3つ以上の深くなったものがAIで今流行っている深層学習(ディープラーニング)です。
これを見てわかるように、手間はかかるものの驚くほど単純な仕組みで計算が行われます。
またこれは理論的な分析を間に挟まない直感的思考とも言えます。
このときニューロンの最適化が重要です。そのため多くの情報に触れたり、自身の強固な哲学を築いていくことが必要になります。
ニューラルネットワーク思考を用いた、思想体系の最適化については下記の活字アレルギー克服の記事でも書いています。
デジタル的な解釈に抵抗がある場合は、臓器や体幹を整え、食事と運動をしやすくするという、より身近な解釈にしても良いかもしれません。
さらにより一般的な例で分かりやすく言うと、個人の趣味時間で投資できる領域をポートフォリオとしてそれぞれのカルチャーから選び、バランス良く並べることで、リスク分散ができ、多様なインプットからより新しいものがアウトプットできるのではないかということです。
アイドルとの出会い
以上のことを踏まえた上で、例として私が影響を今現在受けれているカルチャーのポートフォリオを考えてみます。
◆ クラシックとジャズ
私はピアニストの家で生まれたのでクラシックが幼少期の人格形成に強く影響しました。また現在はジャズをもっぱらやっていますが、やはり情報を調べるときは海外のサイトを漁るほうが効率が良くなるため、ギャップがまだ生まれていると感じます。
◆ アイドル
アイドルはオタクと共にストーリーを作る過程を楽しみます。「踊ってみた」などオタクだけの創作的なコミュニティも様々に作られており、一つのグループを追いかけるだけでも豊富なコンテンツに出会うことができます。
◆ クラブカルチャー
クラブは最先端の流行を取り入れて変化し洗練された空間を提供し続けます。もちろん歴史的に重要な固定化された作品を漁ることもできますが、楽しみ方の本質はその一瞬一瞬の流行の広がりにこそあります。
◆ 欅坂46 (現・櫻坂46)
自分にとっての弱点が最後のヤンキー領域です。以前にロシアのヤンキーについての記事で伝統的コミカルヤンキーと現代的クールヤンキーについて書きましたが、残念ながら自分に直接影響を与えるものでは決してありません。なのでなんとか今回はアイドルと被せて話します。
現代的なヤンキー像として、反社会的な動的表現の果に見られるギャングスタイルと、もう一つ重要なのが理不尽な現実への静かな反抗の果に見られる中二病ではないでしょうか。
そんな中二病キャラクターを持ったのが欅坂46でした。欅坂は社会や大人との対立を大人に歌わされるという中々の矛盾があり、それがすごく魅力的です。
秋元康の恋愛禁止を強いながら恋愛ソングを歌わせる学園的理不尽さが、中二病的で説得力のある反骨精神にまで到達したのは私にとってかなり衝撃的で、アイドルに大して興味のなかった自分がどっぷりハマった理由です。
今ではすっかり大人になって、平手友梨奈さんをはじめ卒業メンバーの活躍や、改名した櫻坂46としてのコンセプトを広げた活動を見れます。
ですが時折見せる鋭い視線が、アイドルらしからぬ野性的な色気、粋になっており、今でもなお惹きつけられます。
まとめ
ひとつの文化に固執すると、少子化やネットの均質化に伴って、これから先に熱が下がるリスクを背負っています。
それを4つのカルチャーからインプットを常時行うことで、つまり個人が流動化することで、今後の文化発展を少しでも支えられるのではないでしょうか。
よむよむ。
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