しわよせで、こんなふうに雑に
そういえば、30歳になった。
アラサーからサーになった。なんだか偉くなった気分である。
朝、テレビをつけると、記録的短時間大雨情報に関するニュースが流れていた。外を見ると、少しだけぱらついていたが、傘は持たなかった。
この雨は、どこからきてどこへ行くのだろう。地球上の水の絶対量が変わらないとするなら、私が生きてきた30年間の間に、もしかしたら同じ雨が、私の髪を濡らしたかもしれない。
いつの間にか晴れていた。
なんというか、28歳あたりからこの誕生日を迎えるまでの間、20代のくくりから追い出されることへの異常な焦燥感に駆られていたのだが、実際に30になってしまったらなんてことはなかった。この諦めにも似た心の落ち着きを、成長(あるいは老化)と呼ぶのだろうか。
そうしてなぜか突然、20代だった自分が他人のように思えてきたのだ。
それは、雨の降る道を振り返って、虹を見ている感覚に似ている。
出先で突然、今度は、大粒の雨が降ってきた。朝のニュースが思い出された。これが一気に降り続いて、ここも海になるかもしれない。車の上に取り残されて、途方に暮れるところまでイメージした。
私は何を求めてどこへ行くのだろう。もしかしたらまた、いつかと同じ雨が、私の頬を濡らすのかもしれない。
また、いつの間にか、晴れていた。