【元実習生との再会で涙腺崩壊】2023年6月ハノイ⑦3日目最終日part2
2泊3日のハノイ訪問を終えた私は空港へ向かうタクシーの中で止めることのできない涙を流していた。嬉しい涙であり寂しい涙を。
登場人物
私(キク):技能実習生の日本での生活指導員。そして採用面接でハノイへ6回出張を重ねるうちにすっかりハノイのことが好きになった
ダオ:元技能実習生。現在は違う日本企業に転職をして特定技能ビザで就労中、私のハノイ訪問と偶然にも同じ時期にハノイへ一時帰国中であった
チャン:元技能実習生。現在は帰国して日本へ行くことを希望するベトナム人相手の日本語学校の先生
トゥアン:元技能実習生。寮の同部屋の先輩実習生からいじめを受けていた
※文中に出てくる「元技能実習生」とは全員が過去に私が採用したベトナムの若者のこと
ダオが皆を呼んでくれた
私のハノイ行きが決まってfacebookにアップするとすぐにダオから連絡があった。
ハノイ最終日、元実習生と再会の約束をしていた私はビアホイで軽く飲んでいた。その場所は旧市街、ホアンキエム湖近くのバイク駐輪場の真横だった。そしてダオが最初に到着した。
日本で一緒に働いていた頃の実習生は皆が自転車で移動をしていた。その子たちが立派なバイクに乗って私に会いに来たのだ。日本で過ごしていた当時と違うことは当たり前ではあるが、私には急に成長した自分の子供に会えたようで嬉しい気持ちだった。
警察に逮捕されて解雇されたトゥアン
実習生との再会で私が本当に嬉しかったことは、トゥアンが会いに来てくれたことだ。
彼は日本で実習生だった時、会社の寮の先輩実習生から陰湿ないじめを受けていた。約1年、その先輩との寮生活に我慢を重ね仕事を頑張っていたが、最終的に怒りが爆発してしまった。いじめた側の先輩を殴ってしまったのだ。
普通であれば殴られた実習生も日本の生活指導員である私に第一報の連絡を入れるはず。しかしその殴られた方が一枚上手だった。私に連絡をすることなく直接交番に駆け込み被害を訴え、駆けつけた刑事によりトゥアンが逮捕されてしまったのだ。
会社も傷害事件で逮捕された加害者を在籍させるわけにはいかず、彼は解雇になった。そして技能実習生からビザを変え、コロナ明けの飛行機が再開されるまでは帰国することもできず、関東地方で暮らしていたらしい。
私は上司失格だった
その当時の私はトゥアンがいじめられていることをもちろん知っていた。だからこそ解決できるように努力もした。しかしそれは解決しようと頑張っていただけで何ら解決していなかった。
解決の結果を出せないこと、それは私は頑張ってる【フリ】だけのダメ上司、私はトゥアンを助けることができなかったのだ。日本に住んでいた時のトゥアンにとって私の存在は【口先だけで何もしてくれない日本人】だったはず。
私もトゥアンが会いに来ると連絡を受けてはいたが、会いたい気持ちと同じくらい、彼を救えなかった後ろめたさを持っていた。トゥアンに合わせる顔がない、と感じていた。
その彼が屈託のない、本当に曇りのないニコニコとした笑顔で「キクさーん、お久しぶりです」とバイクに乗って会いに来てくれたのだ。
その時の私は先に到着したダオとビアホイに座っていたが、バイクに乗るトゥアンを見た瞬間に思わず道路(ハノイの道路にもかかわらず)に飛び出して駆け寄ってしまった。もちろん私の涙腺が崩壊しなくてどうする。
「トゥアン、あの時は本当にごめんなさい、あなたに苦しい思いをさせてしまって本当にごめんなさい」と伝えた。
そしてトゥアンはニコニコ笑ったまま。私に伝える日本語が分からないのだろう、それが私をさらに苦しめた。
技能実習生で3年間を過ごせば、日本人と同じ仕事をする以上、日本語は自然と話せるようになる。彼が日本語があまり上手ではないこと、それは会社を解雇された後の彼の暮らしが恵まれた環境下でなかったこと、私にはそのように思えて仕方がなかった。
本当は来たくなかったチャン
チャンも私のハノイ訪問を知ってすぐに連絡をくれた。ただハノイからバイクで1時間以上離れている所に自宅があり、当日は雨だったため私に会いに来るのを迷っていたようだ。それでも来てくれた。ずぶ濡れになって。
※ちなみにチャンは私のnoteでも最多登場回数【やらかしまくり】の思い出に残る子だ。
嬉しい質問攻め
皆で美味しく食事をしようと考えていた私は空腹だった。数年前に取引先の人に案内されたレストランが気に入っていたのでそこで昼食にしようと考えていた。
そのレストランはBay Mau Lake(ベイマウ湖)の畔にあり、テラス席のランタンがとても美しいレストランだ。
そしてレストランへの移動中のタクシーの車内の騒々しいこと。
「キクさん、会社の〇〇さんは元気ですか?」
「キクさん、会社の〇〇さんはガールフレンドができましたか?」
「キクさん、今も実習生はベトナム人ですか?他の国の人ですか?」
私は3人からの質問攻めに嬉しい悲鳴を上げていた。
全員がかつて在籍した会社のことを懐かしんでいた。仕事である以上、楽しいことばかりではなかったはず。それでも次々に質問をしてきた。それは実習生にとって会社で過ごした3年間は、良い人に出会ってきたからだと私には思えた。
次回へ続く
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