学校は捨てる勇気を持とう!
教育は、過去から現在までのさまざまな知識を学び、新たなものを生み出していく営みです。時代とともに学ばなければならない知識が増えていくことは必然です。パソコンがなかった頃、プログラミングも存在しておらず、学ぶ必要もなかったわけです。
学ぶべき知識の量は飛躍的に増えてきましたが、学校の授業時間も、多少の変化はあるもののそれほど変わっていません。一方、社会や時代の要請に伴う○○教育なるものが、知識を伝える授業と同じように増えてきました。
現在、文科省が知識を伝える授業以外で社会の要請として必要な考え方は~学び続ける教職員のみなさんに~として、今回の学習指導要領改訂に合わせて、教師の研修用にまとめた冊子に示されています。21ページですが、概要の説明で、さらに詳しく内容を知るための資料の紹介の冊子です。
文部科学省発!
教職員研修資料のまとめ
~学び続ける教職員のみなさんに~
文部科学省総合教育政策局教育人材政策課
令和2年7月
本資料は主に文部科学省が作成した教職員向けの研修資料や、参考
となる資料をまとめたものです。様々な機会における研修や教職員
自らの学びにおいてご活用いただければ幸いです。
1、もう、これ以上は無理です!
この冊子の目次をみると。
も く じ
・ 新しい学習指導要領のもとでの授業づくりに向けて
・ 地域と学校の連携・協働について
・ 特別支援教育について
・ 幼児教育・学校安全について
・ 生徒指導について
・ 外国語教育について
・ 道徳教育・人権教育について
・ 健康教育・食育について
・ キャリア教育・言語活動について
・ 産業教育について
・ 独立行政法人教職員支援機構ホームぺージについて
・ ご参考
以前から教科学習の他に 交通安全教育、防災教育、平和教育等の○○教育の多さが指摘されていましたが、今回の学習指導要領では、(正確に数えていませんが)およそ20くらいの○○教育の推進が示されています。
よく目にする○○教育を以下に示してみました。
・情報教育(プログラミング教育 ICT教育)、生活安全教育(不審者などから身を守るため)、環境教育、食育、キャリア教育、性教育、オリ・パラ教育、消費者教育、国際理解教育、消費者教育、税教育、法教育、納税教育、福祉教育、人権教育、郷土教育、伝統文化教育、自然体験教育、男女平等教育、起業家教育、著作権教育、ガン教育、動物愛護教育、環境教育、安全教育、交通安全教育、図書館教育、防災教育……などなどです。
さらに最近は特別支援教育、ユニバーサルデザイン教育、NIE教育、キャリア教育、ボランティア教育、多文化共生教育、インクルーシブ教育、LGBT教育、持続可能な開発のための教育(ESD)、主権者教育……。
さて、どのようなことがねらいの教育活動なのかが分かりますか?現場の教師でもよく分からないものも多くあります。そのためそれぞれの解説書なるものが存在しています。これらの○○教育を1年間の教育活動の中に継続的あるいは適切な時期に実施しなければなりません。
戦後、学校の中でなくなったものは、マッチとアルコールランプ等があります。理由は、誰でも分かりますね。マッチを使うことがなくなり、アルコールランプを使うのが危険となったからです。また、学校保健安全法施行規則改正による健康診断の際の座高の測定と蟯虫卵検査。他にも法改正によって学校でのインフルエンザ予防接種、ツベルクリン検査もなくなりました。
しかし、小学校では算数の時間に「そろばん」の授業が、いまだに行われています。昔のように家庭に「そろばん」はなく、わざわざ学校にその授業のためだけに教材として「そろばん」が用意されています。学校のグラウンドに定番のようにある「鉄棒」も体育の重要な活動として残っています。意味がないとは言いませんが、大人になるために今必要であるかは疑問だと思います。学校という場所では、「スクラップ&ビルド」という考え方は存在していないのです。
2.新たなものが増え続ける「ビルド&ビルド」
これが学校です。
○○教育は、その典型なのです。これだけ○○教育を行っていくためには、○○教育ごとに担当者が決められ年間計画が作成され、実施し、報告を行っています。
ここまで数が増えてくると複数の○○教育の担当者も出てきます。毎年同じような計画書や報告書を作成し、提出しているものもいくつもあります。提出先でも内容を確認している時間はなく、提出されているかどうかを確認しているだけです。
確かに全てが意味のないものとは言いません。しかし、年間の授業時数は限られています。社会的な課題を学校教育に担わせるのは、成果は別として表面上を繕っているだけです。
学校は授業時数の確保のために、6時間授業の日を増やしたり、卒業式を遅らせたり、運動会等の行事に時間をかけないように工夫しました。勤務時間内の教師の授業準備の時間、打ち合わせの時間は、ますます減ってしまいました。その結果、予想通り勤務時間外で行う授業準備が増えました。これまで以上に余裕が無くなってしましました。最初から分かっていたことです。校長も見てみないふりをするしかありません。そうしないと学校の教育活動が滞ってしまうためです。
今、教師を辞めた人たちのYouTube動画がたくさんアップされています。辞めた理由の多くが、部活や生徒指導、保護者対応などによる長時間勤務のことや職場の人間関係によるもののようです。職場に時間的、人的な余裕がないのが原因です。
このようにブラック化している組織が、さらに業務を増やすとどうなるでしょう。答えは、①辞める人がさらに増える。②優秀な人が集まってこない。③業績低下が続いていく。④組織が倒れる。となるはずです。
学校は今、②の段階です。教員採用試験の倍率が下がり続け、非常勤教員を募集しても人は集まらず、挙句の果てには管理職である教頭希望者の減少という状況です。賃金を含め魅力のない仕事に人は集まってきません。
3、まとめ
我が国の学校教育は、聖職という名の下で献身的な教師によって成り立っていました。さすがの文科省も学校教育への危機感をもち、35人学級法案を成立させるなど、改革を始めました。教師のバトンなるもののプロジェクトも立ち上げました。これまで無言で献身的に子どもの前に立ち続けてきた教師からの多数の声に耳を傾けざるを得ないことを感じ始めたようです。
学校は「ビルド&ビルド」をやめましょう。子どもが学校でなければ学べない必要なものを、しっかりと見定め時間をかけて学び育てていきましょう。必要のないものを捨てましょう。学校は捨てる勇気を持ちましょう。