見出し画像

オーケンの最新書籍「今のことしか書かないで」 を読んだ

「今のことしか書かないで」


今日、待ちに待った大槻ケンヂさんの新書『今のことしか書かないで』が届いた。Amazonの予約機能を使えば、発売日に自宅に本が届く。便利になったものだ。

昔はわざわざ本屋に足を運び、書店の棚に並んだ新刊を手にした瞬間のワクワク感があったものだけど、今ではそんな感覚も薄れつつある。
時代は、便利さと引き換えに、少しずつ僕たちの日常を変えているのだなあと思いながら、めんどくささに負けて結局はAmazonの通販で買った。

そして読み始めてすぐ冒頭の一言にハッとする。
第一話、少女が言う。

「今のことしか書かないで。大人はすぐ昔の話をする。昔はよかったとか大変だったとか。知らんから。私ら今のことしか知らんし、大人にも今のことってあるんでしょ?知らんけど。でも今のことだったら、同じ時代のことだから、ちょっとは私も共感できるかもしれない。だから、今のことだけ書いてよね」

とてもこの文章が気に入った。
というか、気になった。

おじさんも少年だった

僕もかつては少年だった。
12歳の時、初めて買ったCDは筋肉少女帯の『蜘蛛の糸』。
あの頃、僕はオーケンにはまっていた。彼のラジオを聴き、エッセイを読み、言葉に影響され、時には道を踏み外しかけたこともあったが、そんな思い出も含めて、それが僕の青春だった。

気づけば、僕も42歳。
あの頃から30年経っても変わらずオーケンのエッセイを発売日に買っているのだ。

僕にとって、木造の実家の2階で布団にくるまってラジオを聴いていたときからそんなに時間は経っていないのだが、いつの間にか「おじさん」なんて呼ばれる年齢になっていた。

ふと、最近の会話の中で、少しずつ自分と若い世代との間に壁を感じることが増えてきた。特に、新卒の若手との会話では、そのギャップを痛感することが多い。

渾身のおじさんジョーク

こないだのことだ。打ち合わせのついでに、新卒の彼とカレーを食べに行った。食事中、健康の話題になったタイミングで、僕は

「最近、毎晩味噌汁を作ってるんだよ」

と切り出した。これがすでにちょっとした「おじさん感」全開の話題だ。

そして、ここからが渾身のジョークだ。

「味噌汁って何を入れても美味いんだよ。レゴブロック入れたってねうまいよ」

と、渾身のジョークを繰り出したが彼の反応は薄かった。
いや、薄すぎた。口角は微動だにせず、ジョークとして受け取ってもらえているかも怪しい、僕はただの頭のおかしなおじさんになってしまったようだ。

この瞬間、「あぁ、僕ってやっぱりおじさんなんだな」と痛感した。話題に困ると、ついつい昔のエピソードに頼りがちになるし、それがジョークとして伝わらないこともある。

新卒の彼にとって、42歳のおじさんの新卒時代の話をしても、
卑弥呼や長篠の戦い、明治維新と横並び、すべて等しくの「昔のこと」。

「今」を話さなければいけない

そんなことを思いながら、僕はこの本の冒頭で「今のことしか書かないで」という言葉が心に刺さったのだ。
新卒の彼にとって、僕の「今」は一体どれほどのものだろうか。
僕が「昔の話」ばかりしているから、いつの間にか若い世代との距離が広がっているのかもしれない。彼らと会話の糸口を見つけるには、「今」を語らなければならないのだろう。

いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集