薄っぺらい人からの脱却。
今のように読書を始めたのは単なる興味からの側面だけではない。
もともと理解力に乏しいし有名な大学も出ていないので、
「頭がよくなりたい。物わかりのいい人間になりたい。」
という同世代と比べた劣等感からくる自己成長の意味も兼ねている。
きっかけがある。
もう何年も前のこと。
飯田橋の駅で当時遊んでいた友人から帰り際に缶チューハイ片手に立ち話をしていた。
何の話だったか、意見を振られたときに大して興味もなかったのか
「なるほどねーそれでいいんじゃん?」
的な返しをした。
すると、
「お前薄っぺらい!薄っぺらいなマジで。」
と真顔で言われたのを記憶している。
友人にとっては大事な話だったのかもしれない。
散々ハシゴしてほろ酔いで話を聞く集中力もなかったが、今でも覚えているだけあって、よほど強烈な印象だったのだろう。
その頃からか。
疎遠になっていた読書の習慣を再び始めたのは。
先日、彼女と今後同棲することになったらについて話した。
「僕は本を読むのがとっても好きだから、同居してもすぐに自分の部屋にこもってしまうと思う。それでも大丈夫?」
「うん。そこは想定の範囲内よわたし。」
自立心の強い彼女はこれといった抵抗感も示さずに紅茶をすすっていた。
そんな彼女にこちらが浮足立ってしまわぬよう、もし同居するようになったときも平常心を心がけたい。
しばらくして一言。
「…代わりに今使っている家電を廃棄に出す際の費用は少し持ってね。」
と切り返された自分は、苦笑いしかできなかった。