砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない
とんでもなく久しぶりの投稿になりました。
この記事にたどり着いてくださった皆様、おはようございます。
本日は桜庭一樹先生の「砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない」という本についてです。
※ネタバレを含みますのでご注意ください。※
あらすじ
中学2年生の夏休みの終わり。二学期が始まってすぐ。
青白い顔に長い前髪を垂らし、その隙間から大きな黒い瞳を覗かせた美少女。「海野藻屑」はあたしのクラスに転入してきた。
浮つく教室の中で自己紹介を始めた少女は「自分は人魚だ」と言う。
静まり返る教室でひとり、笑みを浮かべる少女。
そんな浮世離れした彼女の秘密を知ったあたしは………。
実体のある弾丸
山田なぎさは、クラスメイトに言わせると「さめたやつ」。田舎町の公営団地に、母と兄となぎさの3人で暮らしています。
母は夜遅くまでスーパーで働き、兄はいわゆる引きこもり。なぎさは高校へは進学せず、地元の自衛隊に入隊するつもりでした。
どこへ進むにも、彼女には実弾が必要だったから。
転入生の海野藻屑は、自分を人魚だと信じる美少女。クラス女子のネットワークによれば、有名俳優の娘だとのこと。
彼女が言うには10月4日に、天気図にない大嵐が発生する。その日は人魚が集まって、卵をプチプチと産むんだそう。
その日までに藻屑は「親友」を作らないと、海の泡となって消えてしまうのです。
紆余曲折あって友だちになった2人。
ですが、その別れはすぐそこまで来ていたのでした。
砂糖菓子の弾丸
藻屑は目立ちたがり。いつも足を引きずりながら、わざと目を引くような行動をするのです。
左に座る友だちの話には耳も傾けません。右側に座るなぎさにはあーだこーだと話しかけてくるのに。
いつも離れた背後から、なぎさに空のペットボトルを投げるのです。普通に話しかけたら良いのに。
そして藻屑いわく、彼女の腿の痣は「汚染」なのだそう。
藻屑はずっと、何も撃ち抜けない弾丸をぽこぽこと打ち続けているのです。
撃ち抜かれる
とっても残酷で、綺麗で切なくて、生臭くて笑えないお話でした。
子どもはみんな、きっとこんな思いをして生きているのだと思っています。
大人に成長できるか、できないか。子どもを大人にするのは、ただそれだけの理由なんだよね。
このお話をよくあるドラマチックなもの、と思える人は幸せだな。わたしが学生時代に出会っていたとしたら、他人事ではないと読む手を止めてしまったかも。
そのくらい残酷で悲しくて胸が痛むお話でした。
ハッピーエンドではないし、しかしバッドエンドでもない。
桜庭一樹さんの文章は、とても綺麗なものですね。
なんだか雨模様の空から、雨上がりの輝いた空を見せられたような。
夏の終わりが良く似合う、透明な甘い炭酸水を飲んだような。
ぱちぱちとちいさく弾けて、甘い残り香を残すとても素敵な文章でした。(しかし足元にはゾンビがいるような感じ。)
桜庭一樹さんはGOSICKという本で知ったのですが
他の作品も読んでみようかな。と思っています。
もしオススメなどがありましたら、ぜひ教えていただけますとさいわいです。
いい本を読んだなあ。
おやすみなさい。良い夢を。