アニメのEDテーマを作詞してみた話
作詞した。すなわち、歌詞を書いた。
私は物心ついたころからずっとアニメが大好き。アニメになってみたいしアニメを作ってみたいと思っていたので、少し前にアニメの外側だけつくっていた(存在しないアニメのHP)。キャラクターや各話のあらすじを想像して形にしていくうち、存在していないのにあたかも放送を見たことがあるかのような錯覚に襲われた。そんな愉快な感覚を覚えつつ、理想の「女子高校生の日常アニメ」の外側をつくってきたここ一年。そして今回、そんな「存在しないアニメ」の締めくくりとして「EDテーマソング」をつくってみることにしたのだった。
元々、文章を書くことは嫌いではないし、語りすぎることを極度に気にしている私は詩を読むのが好きである。詩には余白がある。それが詩のよいところ。なので、今回「作詞」というものを通して「詩を書く」という行為に向き合えたのは正直とてもたのしい経験であった。作詞の仕事をたくさん下さい。誠心誠意作品づくりに寄り添わせていただきます故……
できあがった曲を私はもう何度も何度も聴いている。ほんとうに大好きな曲がこの地球にうまれた。これはなによりもうれしいことだ。戯曲でも、写真でも、音楽でも、自分で生み出したものを自分で大好きだと思えることこそがものをつくるうえでの最上のたのしみだと私は思っている。そしてそれがどこかの誰かの大好きにもなってくれたら、もっとうれしいね。って感じだ。
この曲も、もちろん私ひとりでつくられたわけではない。
まず、イラストを描いてくれた方。この方は「存在しないアニメ」のキャラクターデザインやタイトルロゴ、各話あらすじカットのイラストも描いてくれた方で、イラストに込める小ネタの案出しにもたくさん協力してもらった。「小ネタを仕込む」も私の大好きな行動で、「気づけるとちょっとうれしい」ネタを一緒に考えてもらった。
今回、歌詞の中に「風が吹けば桶屋が儲かり……」というフレーズが出てくるのだが、何度も何度も風に舞う桶のデザインを修正してもらったのがよい思い出。是非、桶をよーく見てみていただきたい。とってもチャーミングに仕上がっている。神は細部に、いや桶に宿るのだ。
続いて、書いた詩に素敵な旋律をつけてくれた方。
「存在しないアニメ」という意味の分からない怪しい企画に快く協力してくれ、音楽に明るくない私の意見までも丁寧に聞き入れてくださり、感謝しかない。今回の曲作りではじめてご一緒させていただいた方なのだが、素晴らしい才能との出会いに勝手にひとりでわくわくしている。シンプルに幸せになってほしい。おいしいシュークリームなぞ食べてほしい。
直接お会いしたことはないけれど、こうして才能をわけてくれる存在に出会えるSNS時代のすごさを感じる。
そして、まどろむ少女のような歌声をわけてくれた方。
あの歌声で完全に「日常アニメのED」になった。アニメのキャストがテーマ曲を歌うケースも多くなってきたが、やっぱりOPとEDはそれぞれ別の人が歌ってくれているほうが好きだな、と私は思っている。なぜなら、アニメの主題歌とはアニメを見ている子どもが知らぬ間に未知のアーティストを摂取する機会だからである。実際、私がそうだった。あのアニメの歌、あの人だったんだ! と大人になってから気づく面白さよ。作品にぴったりな歌声だと、それこそキャラクターが歌っているのではと錯覚することもある。それもまたをかし。
アニメ主題歌はアニメ本編を見返さずとも曲を聴くだけで懐かしさと当時の楽しさを思い出させてくれる非常に重要なピースだ。だからアニメの外側をつくる上で、どうしても主題歌までつくりたかった。そんな私の野望のためにたくさんの方が力を貸してくれ、最高の一曲がうまれたのである。
ものづくりはひとりでは済まないことが多く、それがなかなかやりづらさに繋がることも多い。けれども、今回久しぶりに誰かと一緒にものづくりをして、出会いがあって、私は非常に満足している。
面倒くささの先にあるオーダーメイドの「大好き」を得る、そんな幸せを知っている私はもう一生ものづくりから逃れられない。大なり小なり何かしらつくっていることだろう。
そして、今回のように素敵な出会いがあるのも、ものづくりのたのしみのひとつ。今後もすてきな出会いがありますように。