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令和版学園ドラマ復活??

その昔々、大河ドラマの向こうを張った学園ドラマが高視聴率を誇っていた時代があった。学園ドラマ・・・・そんな言葉も聞かなくなった昨今、学園を舞台にした爽やかな青春ドラマに出会った。

『この夏の星を見る』by辻村深月

  
ISBN:9784041132166
発行:株式会社KADOKAWA

残念ながらテレビのレギュラー番組ではない。が、映画化の話はあるようだ。

コロナ禍で部活動も修学旅行も制約を受けたばかりかマスク越しの素顔さえ見たことのない中高生たち。そんな境遇にあっても夢や希望に向かっていく姿が清々しい。
物語は茨城、土浦と東京都心の中高生、それに長崎・五島の天文台に集う高校生たちを軸に展開してゆく。手作りの天体望遠鏡でくっきりと星が見えるらしい、そんな話が広まって生徒たちの輪が広がり、それならば同じ望遠鏡を使って時間内に誰がたくさん星を観測できるか競い合うコンテストを!と言う話に発展してゆく。

もちろん物語の裏の主役はzoom会議。コロナ禍と同じくして世に広まったこの武器を味方に、高校生たち、それに中学生も巻き込んでスターウォッチングコンテストが開催に向けて動き出す。離れ離れの場所にいた生徒たちが、共有画面を通じて様々なつながりや共通項を見出してゆく。それはともすれば自身の進路や将来にも関わってくる、重要な画技すら握っていたのだ。たとえ違う場所にいても、見つめる星空は一つの同じもの・・・・・それはまさしくズームの共有画面のことではないだろうか?

架空のドラマではあるものの実在するモデルも存在し、土浦第3高校も加盟で登場する。リアリティーのあるストーリー展開も説得力があるのはもちろん、高校生たちの細かな気遣いやディテールも描かれているところがこのさくひんの魅力。

作者の辻村深月さんはミステリーものが得意らしいが、こうした爽やかな青春モノも得意分野のようだ。当初新聞連載として書かれた作品は500ページ近い長編だが、周到に配された伏線も見事に回収されている。

天文マニアや理系好きでも十分楽しめる内容になっており、理系は苦手という読者にも分け隔てなく魅力を伝えてくれるところに作者の懐の深さを感じた次第。

さて、映画化にあたってこの膨大なストーリーをどうやって2時間ほどの脚本に落とし込むのか?・・・・・こちらも興味津々。映画公開が待たれる日々になりそうです。

書籍版のPVはこちら・・・


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